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『正チャンの冒険』読者投稿欄のご紹介(4)

こんにちは!!夏、真っ盛り、という感じですが、いかがお過ごしでしょうか??100年前と比べて夏の気温も上がっていると思うのですが、正チャンの冒険にも影響がないか心配です。少なくとも正チャン帽の着用は控えた方が無難かと!!冒険中も水分を多くとってほしいですね!



さて、まずは、読者層の広がりを感じさせるこちらの投稿を紹介させてください。

朝日新聞1924年1月29日朝刊

ちょっとお伺いいたしますが、先日正チャンが乗っていた、ラクダの歩きかたが、どうもへんだと思いますがいかがでしょう、全て四肢の動物の歩きかたは(足跡にて)
・・・<略>・・・
というふうになると思いますが。

併記された図を見ると、左前&右後、右前&左後、と左右互い違いに出す、とそういったご主張のようです。
確かにおっしゃるとおりの気もします!昔飼っていたネコもそのように歩いていたように記憶していますし、Youtubeで「ネコ 歩く」で検索して出てきた動画でもそうなってました!
バランス面からいっても、右前&右後、左前&左後で出すのは不安定な気がします!

それで問題のラクダを確認してみますと・・・

朝日新聞1924年1月17日朝刊

2コマ目、3コマ目で、右前&右後、左前&左後で出しているので、これが違うのではないかということでしょうか。

念の為、Youtubeでラクダの歩きかたを確認してみます。

あれ??なんか1本づつ出しているように見えますね。そしてその順番も、
左後 → 左前 → 右後 → 右前、と同じ側を前後踏み出してから、逆側を前後踏み出しているように見えました。

なので、この絵は、これはこれであっているような気がします!

ただ、私はYoutubeで簡単に確認できましたが、連載当時の時代(大正時代)を考えると、ラクダの歩きかたについて、それを絵にすることも、それに対して「違うんじゃないか」と指摘することも、ものすごく大変だったのではないかと思います。

いずれにしても投稿者の方はなかなかの知識人と思われ、子供だけではない読者層の広がりを感じさせます。


次は、時代を感じさせる投稿です。

朝日新聞1924年2月1日朝刊

正チャンの冒険の下に書いてある「メモ」は何のわけですか教えてください

一少女さんのかわいい投稿です。「メモ」の意味がわからなかったのですね。

我々の感覚からすると、「メモ」という単語は、英単語の中でもわりに身近なものの一つで、子供でも普段使いするもののように思いますが、この時代、大正デモクラシーとはいえ、お子様たちにとっては、英語はそこまで身近なものではなかったのかもしれませんね。

またこの日の投稿欄は、もう一つ(右側)の投稿にも注目です。

二十八日の午後六時ごろだ、どこかの奥さんが荷物をかかえてちょうど伊東ビルディングの角にさしかかると向こうから来た酔っぱらいのシンシがその前に立ちふさがって実に無礼な言を浴びせかけた。ぼくは通り合わせてカッと腹が立った、そうしてもし正チャンがいたらきっとその●ものの横ツラをなぐり飛ばしたろうと思った

正チャンの正義感あふれるキャラクターが皆に愛されている様子がうかがわれますね!わたしなども「確かになぁ〜」と思いながら読んでいました。

ですが、数日後、こんな投稿が。。

朝日新聞1924年2月7日朝刊

◇僕は反対
二月一日メモ欄の京橋一小僧君の意見には反対だ、正チャンの様な強気をこらし弱きを助ける人は恐らく、いきなり横ツラをなぐりとばさないと思う

こちらも確かに!どちらが正解ということもない問題だと思いますが、こうやって各読者が、誌面での正チャンの活躍から、いろいろな想像を膨らませて個人個人の正チャン像を思い描き、折に触れ「正チャンだったらどうか?」などと思いを馳せていたのでしょうか。

そしてこの誌面で交わされたやりとりのようなものが、各家庭や学校で、お友だちの間で行われていたのかもしれませんね。

そしてこの日のメモ欄も、もう一本の投稿の方も気になってしまいます。作中で正チャンの家が丸焼けになってしまったのを気の毒に思った読者の方が、材木を貨物列車で送ってくれたそうですが。。。その材木どうしたのでしょうか・・・



正チャンが読者の間で広く愛される存在になってきていることを感じさせる投稿もありました。

朝日新聞1924年3月1日朝刊


僕は昨年の十一月四日に生まれました、ところが顔が正チャンに似ているというので皆が正チャン正チャンと呼んでくれます。お母チャマがいつまでもオッパイをくれないと大声を立てて泣きます、するとお父チャマが可哀そうだと、だっこをしてお母チャマに渡しますがその時はオッパイをいっぱい頂きます。私は大きくなったらきっと正チャンの様に大いに活躍します

ずいぶん愛くるしい読者からの投稿ですね!!

本気の話をしてしまうと、当然赤ちゃんには文字も書けませんし、正チャンを読むこともできないので、お父様かどなたかの代筆でしょうし、実際に代筆の旨が記載されているのですが、この当時の親御さん世代にとっても、正チャンは愛すべきキャラクターで、自分達の子供に正チャンのような子供になってほしいと思われるような存在だったのだな、と感じます!

あと全然関係ないですが、メモ欄のキャラが、リスから雪だるまにチェンジしました。この日の日付は3月1日。投稿の1本目のタイトルも「春が近づいた」なのになぜ・・



また、帽子がトレードマークとして広く認知され、正チャン帽がブームになっている様子を感じさせる投稿がこちらです。

朝日新聞1924年3月5日朝刊

◇帽子がちがう
「けしの花」のおしまいにいくと正チャンの帽子がいつものと違う、元のはどうしたの、こわれたので買ったの?正チャン元の方がいいよ

「けしの花」のお話では、当初、お決まりの正チャン帽で登場して冒険をしているのですが、潜水艦で探検中に見つけた島に上陸した途端、幼稚園児が被るような帽子に被り変えます。服装も長袖のトックリから半袖に着替えているので、おそらく島の気候(暖かい)に合わせた変更かと思われるのですが、読者の子供たちとしては、いつもの正チャン帽を被ってくれないと気分が盛り上がってこないということでしょうか。

正チャンとしては、TPOに合わせた、良かれと思っての衣替えだったのですが、「元の方が良い」と一刀両断されてしまっています。



また、以前に「正チャンの両親は朝日新聞社員」ということで公式発表がなされていた家族問題ですが、引き続き気になる読者が後を絶ちません(新しい読者でしょうか??)。

朝日新聞1924年3月7日朝刊

正チャン、君のお父さまは誰ですか、もしや活●の松之助ではないでしょうか、顔にどこか似たところがありますよ。それから正チャンとリスの歳を教えて下さい

「松之助」というのは、日本の映画草創期に活躍した時代劇のスターで、日本初の映画スタートいわれている、尾上松之助さんですね!!1000本以上の映画に出演し、大きく目をむいて見得を切る演技で「目玉の松ちゃん」の愛称で親しまれていたそうです!

そんな大スター中の大スターの息子が正チャン。。。??!!大きく目をむいて見得を切る「目玉の正チャン」見てみたいですね!!



最後にこちらの投稿を紹介します。

朝日新聞1924年3月11日朝刊

正チャンとジグス君はこんどバーを開業して大人気だと29日の夕刊で知りました、おめでとうございます、こんど行きますからご案内を願います。

えっ!正チャンがバーを??ジグス君は『親爺教育』の主人公のジグス君!?実際に本人たちが開業することはないと思うのですが、当時朝日新聞の方でそういった企画があったのでしょうか??

詳細はよくわかりませんが、もしそのような企画があったとしたら、これは最近多くなってきている「コラボカフェ」のようなもののハシリということになるかもしれません・・!!!