見出し画像

『正チャンの冒険』読者投稿欄のご紹介(8)

みなさまご機嫌いかがでしょうか。我々編集部の人間は毎日正チャン帽をかぶって勤務しているのですが、この頃すっかり涼しくなって正チャン帽でもきつくなくなってきたので助かります。

夏場における正チャンの帽子事情については、やはり読者の皆様思うところがあるようで、かなり多数の心配のお声が寄せられていました。

朝日新聞 1924年5月7日朝刊

正チャンにいつまでも冬帽子をかぶらせておくのは可哀そうだ、軽快なストローハットを飛行便で送る

朝日新聞 1924年5月4日朝刊

正チャン、だんだん新緑の初夏が来ましたわね、私ね、正チャンの帽子が暑すぎはしないかと案じていますのよ、それでね、今度初夏にふさわしいのをお贈りしますわ どうぞかぶって頂戴ね

ほんとにすみません、この頃パパが買ってくれないのです

朝日新聞 1924年5月27日朝刊

正チャン、まだ夏の帽子をかぶらないの?頭が熱いでしょう、僕は今日ムギワラ帽子をおくったからぜひかぶって下さいそうして、しっかり冒険を続けてね、たのみます

初期の頃は、けっこういろんな種類の帽子をかぶり分けていた正チャンですが、この頃はいわゆる「正チャン帽」一辺倒だったので、夏を迎えるにあたって「暑すぎるのではないか」との声が噴出しております。

ただ、その暑さ辛さを耐え忍んだからこそ、ボンボン付ニット帽=正チャン帽たりえたわけですし、ひいては明確なキャラ設定の確立に至ったわけなので、作者側にそのような明確な意図があったのかは別としても、がんばった甲斐があったのではないでしょうか。

ですがそんな正チャンにも転機が訪れます。

朝日新聞 1924年6月15日朝刊

記者様正チャンが涼しそうな帽子をかぶりましたね、ずっと前からこのメモ欄に正チャンの帽子ばかり気にしていた人がありましたがあれはその誰かが贈ったのでしょうか?

あんまり心配してくださるのでパパも黙っていられず苦しい中から買ったのがあれ

この投稿者の方も安堵のようすです。それまで心配して帽子を贈って下すっていた過去の投稿者の方もご安心のことでしょう。気になる新帽子はこちらの画像でご確認ください。

涼しそうな帽子をかぶる正チャン

これはなんというタイプの帽子でしょうか?画像が荒く、テクスチャまでは判然としないのですが、確かにニットのものよりは涼しそうです。心なしか正チャンの表情も生気に溢れている気がします。口角も上がり気味ですし。

いずれにしてもこれまでの正チャン帽からは大きくイメージが変わらないデザインとなっているので、見ている方も安心感を感じました。ニューエラのキャップやジャミロクワイのような帽子で登場したら全国の子供たちが不安がったことでしょう。



朝日新聞 1924年6月6日朝刊

記者君、メモに正チャンでない事が出る、あんなのはやめさせろ

ここへは皆が何なりと感じたままを投書していただきたいので、正チャンと限りませんのです(記者)

のっけから過激な意見です。メモ欄は正チャンの冒険の直下に配置されていますし、これまでその大部分が正チャンに関するものだったので、正チャンへのファンレターが掲載されるコーナーのように見えていましたが、本来はなんでも良いコーナーだったのですね。確かに初期のころには読者自作の詩や短編小説が掲載されたりもしていました。一番最初の読者からのお手紙は、ご自身が酉の市に行かれた話でしたね。

朝日新聞1923年12月4日

メモ欄開設当初の募集要項にも「何なりと」投書を募る旨、明記されておりました(右の投書は作話である小星先生からのものですね)。

朝日新聞1923年12月1日朝刊

◇少年少女の投書をつのる◇
何なりと皆さんが心のまゝの投書をつのります
一、十五字づめ二十行以内
一、匿名を用ふる時も住所、氏名を書きそふること
一、朝日新聞社正チャン係宛

それから半年経ってこのような投書がくるということは、その間正チャン関連の投稿が本欄をジャックし続けていたということで、それはそれで正チャン人気のすごさを感じさせるエピではないでしょうか。担当としてまことに誇らしい限りでございます。

確かにこの前後数週間くらいは正チャン関連の投書が少なく、アメリカの話だったり、読者自作の物語等が掲載される割合が多いように感じました。ただ、その後、だからというわけではないでしょうが正チャン関連の投書が盛り返してきますね。念の為編集方針を確認しておきましょう。

朝日新聞1924年6月13日朝刊

記者さん、投書は必ず新聞に出ますか、そして、どのような形式で、投書すればよいのですか

掲載は記者の自由に任せて頂きます、形式はありません、正チャン係宛でどしどしお願いします

掲載するかどうかは記者さんの自由のようですね。まぁきてる投書との相談ってところもあるとは思うので、そうとしか言いようがないって部分はあると思います。というかこの投書自体は掲載を希望して投稿されたものというよりも、投稿するための下準備として単に問い合わせのために手紙を認めたにすぎないように感じるのですが、まさかそれが掲載に至るとは投稿者も期待してなかったに違いないでしょう。これに味をしめて、ハガキ職人への道をひた進んだかもしれません。知るよしもないですが・・・。


朝日新聞1924年6月14日朝刊

正チャン僕の先生は毎日正チャンの新聞を見せてくれますから、色々のことがわかります、これからもっとおもしろい所を、見せてください、それから例の蚊のブンちゃんたちと、あんまりあそぶと、蚊にさされるかもしれませんよ、気をつけなさいね。蚊のブンちゃんや、リス君たちにもよろしく

蚊のブンちゃんって誰やねん?リスに続くオトモの新キャラ??と、そう思われた方も多いかと思いますが、ブンちゃんは、この時に連載されていた話に登場するキャラです。

朝日新聞1924年6月14日朝刊

まだデフォルメという手法がそこまで一般的ではなかったのでしょうか?妙にリアルに描かれています。こうして読者からの投稿でも言及されるほどなので、一定の人気があったことが窺われます。

ですが残念ながらオトモとして次回以降の冒険にも・・・とはいきませんでした。正チャン以降のまんがにおいても、一定の人気があったものの、そのシリーズ限りで物語から退場してしまうキャラは結構いると思いますが(重ちーとか)、ブンちゃんはそのハシリかもしれません。というかリスには名前がないのにブンちゃんには名前があるのですね・・・

また、これは完全に余談なのですが、この記事を書いている最中に、誤って上掲のブンちゃんの画像をデスクトップ画像に設定してしまい、変え方がわからず今もブンちゃんに見守られながら勤務を続けております。

そのようなところで今回は失礼したいと思います。みなさまお元気でお過ごしくださいませ。