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『正チャンの冒険』読者投稿欄のご紹介(9)

おはようございます!正チャン100 周年で沸く2023年もついに11月!今月22日には連載版全話を収録した書籍「正チャンの冒険 -ザ・コンプリート-」が発売の運びとなります・・・!!!

私どものXアカウント上にてもご紹介をさせていただいております!投稿の内容をご確認になるとともに、是非ともフォローのほどよろしくお願いします!!!

グッズ!?荒木飛呂彦氏推薦!?おっさん正チャンが「こんにちわ」!?など興味は尽きませんが、早速読者投稿欄を見て行きましょう。


朝日新聞 1924年7月9日朝刊

記者様、正チャンの冒険の単行本実にステキですね!しかし正チャンの頭は大きくなると小さい時より可愛くなりますね、正チャン怒らない●●。記者様早く早くニの巻を出してください

怒りやしません、続いて二三四…おなじみの冒険をお目にかけます

ついにあちらの世界でも単行本が刊行されたようです!!!記念すべき発売日は1924年7月6日!こちらの投稿が掲載されたのが同7月の9日ですから、当時の郵便事情も勘案すると、もう発売日に買ってすぐ投書されたような感じだったことでしょう!

結局こちらのシリーズは7巻まで刊行されることとなるのですが、実は全話は収録されていないんですよね。そこが!!!今回悠久の時(100年)を経て、今回連載全話収録された完全版として出版されるのです!

また、それとは関係ないのですが、この方気になることをおっしゃってますね。

正チャンの頭は大きくなると小さい時より可愛くなりますね

頭が小さい正チャンより頭が大きい正チャンの方が推せるとのことで、おそらく等身デフォルメのことをおっしゃられていると思います。当時の漫画黎明期にあって、そのような手法が明確に確立していたのかわからないのですが、いずれにしても世の中がSDキャラの愛くるしさに気づいていく様子が伺われてとても興味深いです。

こちらの単行本1巻の発売に関しては次のような投書も寄せられております。

朝日新聞 1924年7月18日朝刊

僕は「正チャンの冒険」第一巻を買って頂きましたがお馴染みの元気な正チャンの顔を見て嬉しく思います ところで31頁から33頁までの正チャンは、どうも顔が少し違います正チャンの従弟か何かではないのですか?

あそこの絵は去年の二月日刊アサヒグラフに出た原書を用いましたので正チャンの若い時の姿です(記者)

朝日新聞 1924年7月27日朝刊

正ちゃん、僕は君の冒険第一巻をお母さまに買っていただきました ところが31頁から33頁までの正ちゃんの顔が違って居ます、きっとあんな人をひこうきにのせたからでしょう、こんどはあんな人をのせないように気を付けて冒険をして下さい

嫌な予感がしますが、こちら確認しましたところ、例のおっさん正チャンのことでした。初期の作画と後期の作画が全然違ってくるというのは、こんにちの漫画業界では、ある種常識ともなっていますが、当時は漫画黎明期でもありますし、また、正チャンが実在の人物かのように錯覚されている方も散見されましたので、余計に諸々の混乱があったのではないでしょうか。

ご自身で確認されたいという方がいらっしゃいましたら、こちらの川崎市市民ミュージアムさんのサイトにて公開されて居ますので、ご確認ください。


公式に朝日新聞社から刊行された単行本も大好評のようですが、この頃、非公式のメディアミックスもかなり進んでいて、そちらについての投稿も増えてきております。

朝日新聞 1924年6月10日朝刊

正チャンレコードのネドシノクニを有難う、素敵にうまいね、チュー子姫からリスさんすっかりお気に入り「オオ勇ましきリスの君、此の花を貴方にあげましょう」て言うあたり、その後お便りはあなりませんか

レコードというのは歌ではなくて、朗読劇のようなものですかね??「素敵にうまいね」という表現からすると歌のようにも思えたりもするのですが・・気になります・・!

朝日新聞 1924年5月31日朝刊

正チャンの人気は大変ですよ、私の所は呉服屋ですがメリンスに正チャンの冒険が染め出されて来たのを店先に掛けて置きましたらお客様が「オヤ、メリンスに正チャン!」とお陰様で人気を引きました、終りに正チャンのご健康を祈ります

メリンスっていうのは毛織物のことのようです。正チャン柄の生地で作った服を着た子供たちがたくさん居たのでしょうか。

朝日新聞 1924年6月15日朝刊

正チャン、この間ね、お父様が関西から正チャンあめと正チャン豆を持って来て下さったの、ずいぶんおいしかったわ、どうもありがとう

食品業界にも進出が進んでおります。キャラクター付きのものって、やっぱり買ってしまいますよね。わたしも幼少時分、戦隊モノの魚肉ソーセージ等をずいぶん強請ったものです(買ってもらえる確率は低かったです)。

朝日新聞 1924年6月19日朝刊

正チャン僕は花月園のアサヒグラフデーに行ったよ、グラウンドの入口に君とリス君が案内役をしていたね、夫々みんな面白く見せて貰った、君の活動写真は又素敵に良くできていた●、僕は嬉しかった、君もあの日は小父様たちと一緒だったろうね

以前こちらのコーナーでも少しご紹介した花月園で「アサヒグラフデー」なる期間限定イベントが開催されたようですね!入口に正チャン(とリス)の看板が出ていただけでなく、なんと映画の公開もあったようで、すごく内容とクオリティが気になります!!!これはおそらく公式ですかね。

朝日新聞 1924年8月5日朝刊

おい正チャンが大変だ、僕が渋谷へ行ったら正チャンとリスとそれからジグスとマギイの四人が看板にはりつけになっていた、僕は真っ赤になって怒った

渋谷で看板になっていたようですね。ジグスとマギイの二人も一緒だったようです。こちらの方はかなり憤慨されてますが、それは看板にはりつけという仕打ちにお怒りなのか、それとも権利関係を無視して使用している点についてお怒りなのか、どうなんでしょうね??

こちらの投稿に関しては、4日後にアンサー投稿がなされています。

朝日新聞 1924年8月9日朝刊

正ちゃんとリス、ジグスとマギイが看板になったとて君は憤慨していられるようだが、僕は正ちゃんを人形にして売っているのを見た 僕は正ちゃんがそれほど人気ものになったのを喜ぶよ

権利関係に問題があっても、それは正チャンの人気のバロメーターなので、むしろ喜ばしいとのご意見ですね。

当の朝日新聞もこうしてそのような投稿を掲載し、それに対して特に苦言も呈していないので、100年前は今ほど権利関係に厳しくなく、よく言えばおおらかな時代だったのだと思います。

いずれにしても、さまざまなものに使われてしまうほどすごい人気だったことはすごいと思います!