信頼を深める-バイスティックの7原則に基づく8回シリーズで学ぶ関係の築き方
1.バイスティックの7つの原則とは?
通信大学時代、スクーリングや演習、レポートで何度も学んだバイスティックの7つの原則。
これらはケースワークの現場でとても重要で実習中には指導者から「バイスティックの7つの原則とは?」と、突然質問されたこともありました。
当時は、覚えやすいようにごろ合わせで暗記していましたが、最近改めて書籍を読み返す中で「どれ一つ欠けてもならない」という言葉に深く共感しました。
私は実践経験を積みたいと思っていますが、現在の仕事やボランティア活動ではクライエントとワーカーとしての関係を築くことができていません。
それでも、これら7つの原則は人間関係に非常に有用であり、日常生活の中でのさりげない交流でも実践していく価値があると感じています。
バイスティックの7原則
1.個別化
2.意図的な感情の表出
3.統制された情緒的関与
4.受容
5.非審判的態度
6.クライエントの自己決定
7.秘密保持
このシリーズでは、バイスティックの7つの原則を一つずつ詳しく見ていき、それぞれの意味や実践での大切さについて考えていきます。
2.対人援助に役立つ信頼関係の作り方
ケースワークの現場でとても大事なのが「信頼関係」です。
クライエントと、ケースワーカーは、互いに信頼し合うことで、うまく問題を解決していくことができます。
この関係がしっかりしていないと、相談に来た人は自分の気持ちや悩みを話すのが難しくなってしまうのです。
たとえば、クライエントがケースワーカーに「自分のことを本当にわかってくれるだろうか?」とか、「秘密を守ってくれるかな?」という不安を持っていることがあります。
この不安があると、なかなか本音を話せません。
そのため、ケースワーカーはクライエントが安心して話せるように、優しく、そして相手の気持ちを大事にしながら接することが大切です。
3.信頼関係ができるとどうなる?
クライエントが安心して話せるようになると、次は自分で問題を解決しようという気持ちが生まれます。
助けられるだけでなく、自分で選んで決めていくことで、クライエントは自信を持てるようになります。
たとえば、何かを決めるときに「自分で考えたい」という気持ちはとても大事です。
これを尊重することが、良い支援の一部です。
ケースワーカーは「あなたが何を感じているのかをちゃんと理解して、あなたを大事にしたい」と態度で示すことが大切です。
言葉だけではなく、行動や接し方を通してクライエントに伝えることで、信頼は深まっていきます。
4.援助関係が成り立つ3つの流れ
援助関係には、3つの重要な流れがあります。
1. クライエントからケースワーカーへ
クライエントは、自分の問題や気持ちを打ち明けるときに不安を感じます。
その不安に対してケースワーカーは優しく受け止めることが大事です。
そうすることで、クライエントは「この人なら信頼できる」と感じるようになります。
2. ケースワーカーからクライエントへ
次に、ケースワーカーがクライエントの気持ちや問題を理解し、それに応じて支援します。
クライエントに「あなたのことをしっかり考えています」という態度を示すことで、クライエントも安心して支援を受けることができます。
3. クライエントからケースワーカーへ再び
最後に、クライエントはケースワーカーに対して、少しずつ自分の気持ちを表現するようになります。これにより、二人の間にはお互いを尊重し合う信頼関係が築かれます。
この関係は、援助が終わった後も続くことがあります。
このように、信頼関係を築くことが援助をうまく進めるために必要となります。この信頼関係を支えるための7つの重要な原則についてお話しします。
次回は「個別化」についての記事をお届けしますので、ぜひご覧いただけると嬉しいです。
参考引用文献
F.P.バイスティック著 尾崎 新ほか訳 『ケースワークの原則新訳改訂版援助関係を形成する技法』誠信書房 2022年、22~30頁
ここまで読んでいただきありがとうございました。
私が目指しているのは孤立のない共生社会の実現です。