【第1部】むし歯予防から広がる地域活動-歯科衛生士が支える子育て支援
歯科衛生士としての視点から、地域で行われる歯科保健活動の一環として、子育て中の親子向けのサークル活動を行いました。
以前に行った活動を何回かに分けて紹介いたします。
以前こちらの記事で一部をご紹介しております。
はじめに
1歳6か月児健診や3歳児健診の会場では、主に歯科疾患があるかないか、治療が必要か否か、要観察かどうかの判定を行います。
その際、集団指導や個別指導の形で歯科保健指導が行いますが、小さなお子さんを眠い時間に連れてきてもらい、ぐずるお子さんを相手にしているお母さんに話をしても、10人中2人が聞いてくれる状況に疑問を感じていました。
「もしかして、私は一方的でつまらない一般的な話をしているのではないか?」
「泣いている子どもを相手に限られた時間で指導することに意味があるのか?」
そう考える中で、歯科の問題が生活習慣や社会的背景と密接に関係していることに気づきました。ただ「歯みがきをしてください」と言うだけでは響きません。むし歯予防が生活に取り入れられるかどうかは、実は「お母さん」やその周囲の人々次第なのです。
また、むし歯予防の指導が母親の罪悪感や反感を生む場合があることも分かりました。それが母親の行動を阻むだけでなく、むし歯予防への嫌悪感を抱かせる可能性もあるのです。
むし歯を減らすことだけに重点を置いた指導では限界があり、母親への支援は、むしろ子育て全般に視点を広げるべきではないかと考えるようになりました。
そのような思いから、私は家庭訪問を通じて子育て中の親子に仕上げみがきの方法を伝え、一人ひとりのニーズを丁寧に聞き取ることを始めました。
幼児の生活は保護者の価値観や家庭環境などの背景によって成り立っており、母親の育児に対する不安とむし歯との関連性も見えてきました。
むし歯を減らすためには、さまざまな保護者に対応する必要があり、単に知識や情報を提供するだけでは限界があると実感しました。
そこで、私は指導によってコントロールするのではなく、母親の子育てに寄り添い、受容と共感をもって成長を共に歩むことの重要性を強く感じました。
母親自身が気づきを得て、自らの選択でより良い行動に変化できるように支援することが望ましいのです。
母親が自信を持って子育てに取り組めるきっかけを作り、「こころ」と「からだ」を大切に育む過程を支援することが、結果としてむし歯予防にもつながります。
母親が自分自身を大切にし、周囲と共に育ち合い、認め合い、支え合う――そうしたプログラムを計画することが必要だと考えました。
そこで、地域の歯科保健活動の一環として、子育て中の親子を対象としたサークル活動を企画しました。
この活動は、多職種が連携して進める形で実施することになりました。
事業目標
この取り組みでは、次の7つの目標を掲げました。これらを通じて、親子が健やかに成長できる環境づくりを目指しました。
親がむし歯のない子育てを実践できること
親が認められ尊重されていると感じ、自信を持てること
親の不安が解決・緩和されること
子育てに家族の理解と協力を得られること
親が子どもを尊重し、かつ自立を目指して子育てができること
コミュニティや相談場所の確保
ボランティア活動(地域活動)への参加と啓発
これらを達成することで、親子だけでなく地域全体が育ち合える温かな環境をつくりたいと考えました。
次回に続きます
なお、この事業は以前行ったものです。現在は行っていませんが、私の記録を基にこのnoteで共有しています。地域で活動される方のお役に立てれば幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
私が目指しているのは孤立のない共生社会の実現です。