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【統制された情緒的関与】-バイスティックの7原則に基づくシリーズで学ぶ関係の築き方

このシリーズでは、バイスティックの7つの原則をもとに、信頼関係を築く方法を学びます。
今回は「統制された情緒的関与」について考えていきます。

ケースワーカーが自分の感情を自覚して吟味するとは、まずはクライエントの感情に対する感受性をもち、クライエントの感情を理解することである。そして、ケースワーカーが援助という目的を意識しながら、クライエントの感情に、適切なかたちで反応することである。

引用 F.P.バイスティック著 尾崎 新ほか訳 『ケースワークの原則新訳改訂版援助関係を形成する技法』誠信書房 2022年、77頁

1.コミュニケーションの重要性

コミュニケーションとは、人と人が言葉や行動で気持ちや考えを伝え合うことです。相手が返事をしないと、その話に興味がないのかなと感じることもあります。

【コミュニケーションの3つの種類】

  1. 知識を伝えるやりとり-事実や情報を伝える話し方

  2. 感情を伝えるやりとり-自分の気持ちを伝える話し方

  3. 知識と感情を混ぜたやりとり-両方を組み合わせた話し方

ケースワークでは、「知識と感情を混ぜたやりとり」が最もよく使われます。援助者は相手の気持ちを理解しながら解決方法を一緒に考えます。この過程で、相手や自分の感情にうまく対応することは、特に難しいスキルのひとつです。

ケースワーカーが自分の感情を見直すには、相手の気持ちに気づき(感受性)、その気持ちを理解し、適切に対応する(反応)ことが必要です。


2.感受性(気づき)

ケースワーカーの感受性とは、クライエントの感情に気づき、それを観察し、耳を傾けることです。クライエントが感情を言葉で表現しない場合でも、その感情は行動や態度に現れます。例えば、話し方のスピードやためらい、表情や姿勢、服装、手の動きなどが感情の手がかりとなります。

特に初期面接では、クライエントが言葉ではなく行動で感情を示すことが多いため、注意深く観察することが大切です。また、ケースワーカーは自分の感情やニーズを理解し、それがクライエントの感情に影響しないようにすることが必要です。


3.理解

ケースワーカーは、クライエントの感情をその人や問題の状況に合わせて理解する必要があります。感情を引き出すときは、何をしようとしているのか、援助の目的が何かをよく考えることが大切です。感情の理解は一度で終わるものではなく、面接を重ねるたびに深まり成長していきます。

また、感情を理解するためには心理学や精神医学、社会科学などの知識が必要です。自分の人生経験や実践を振り返ることで、人間がストレス下でどのような反応を示すのかを学ぶことも役立ちます。


4.反応

ケースワーカーがクライエントの感情に適切に反応することは、援助関係において非常に重要です。クライエントの感情に敏感に感じ取り、それに適切に反応することで、感情的なつながりを深め、心理的な支えを得ることができます。

反応の方法は状況によって異なり、ケースワーカーは常に判断を求められます。反応は必ずしも言葉で行う必要はなく、態度や表情、声のトーンなどでも十分に伝わります。重要なのは、クライエントの感情をしっかり受け止め、それを基に適切な対応をすることです。


感想

今回、「統制された情緒的関与」について理解するのに時間がかかりました。この概念を簡単に言い換えると、ワーカーが「自分の感情を上手にコントロールしながらクライエントと関わること」となります。

これらはすべてコミュニケーションに基づいています。
言葉や行動、態度を通して気持ちや考えを伝え合い、援助の目的に合った関係を築くことが大切です。感情や考えにも注意を払い、耳を澄ませて聴き、目を使って観察することがワーカーには求められます。

援助関係を築き、目的を達成するためには、ワーカーの「気づき、理解、反応」というプロセスが非常に重要だと言えます。

例えば、制度利用のために面接に来たクライエントを、「制度が使えるかどうか」を判断することだけを目的にすると、クライエントとの信頼関係を築けず、問題解決が難しくなります。クライエントがどんな気持ちで面接に来たのか、その感情や問題をしっかり理解し、適切に対応することで、信頼関係を築き、問題解決に繋がります。そして、クライエントにとって最も適切な社会資源の使い方を考えることが大切です。もし制度にだけ当てはめて対応すると、再び問題が出て、クライエントが戻ってくる可能性もあります。私は前者のアプローチがより良いと感じています。

援助者として、クライエントの感情に対して共感を持って反応することが重要ですが、その際には自分自身の反応を自覚し、慎重に考慮することが必要です。

このスキルを身につけるためには、スーパービジョンを活用しながら自己研鑽を続けていくことが不可欠だと感じています。自分自身の成長を促進するために、常に学び続ける姿勢を持ち、援助者としての質を高めていくことが重要だと考えています。

参考引用文献
F.P.バイスティック著 尾崎 新ほか訳 『ケースワークの原則新訳改訂版援助関係を形成する技法』誠信書房 2022年、74~104頁

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