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【受容】バイスティックの7原則に基づくシリーズで学ぶ関係の築き方
受容とは、抑圧された感情から解放され、自ら問題を解決しようとする力を育むことです。
このシリーズでは、バイスティックの7つの原則を学び、その内容を記録しています。
今回は内容が多いため、2回に分けてお届けします。
1.受けとめる(受容)
ケースワーカーがクライエントを受けとめる対象は、クライエントのありのままを受け入れることです。
これには、健康面や弱さ、可能性や限界、良い面や悪い面、受け入れられる行動や受け入れがたい行動等が含まれます。
大切なのは、クライエントのマイナス面も現実として受け入れながら、尊敬の気持ちを保ち続けることです。
「受けとめる」とは、まず客観的に見つめて感知し、影響している原因やその意味、ケースワークの目標を理解し、クライエントの現実をいろいろな角度から認識することです。
しかし、「受けとめること」と「許容すること」は同じではありません。
ソーシャルワーカーは、個人や社会の中で起きる悲惨な事態や悪に対して公平な態度を採ることではないし、またそうすべきでもない。ソーシャルワーカーは、つねに価値基準に立つのであるが、クライエントをほめたり、非難したりすべきではない。
クライエントを受けとめる援助の原則は、ケースワーカーがクライエントの尊厳と価値を尊重し、彼の強さや弱さ、態度、感情、行動を含むありのままの姿で感知し、クライエント全体に関わることです。
しかし、クライエントの逸脱した態度や行動をそのまま容認することではありません。
受け入れるべきなのは「真実の姿」(the real)ありのままの現実であり、こうあって欲しいと思う「好ましいもの」(the good)と思う理想や価値観ではありません。
また、人間の尊厳と価値は、どんな状況でも変わることはなく、それが援助原則の基礎となります。
人の価値は、いかなるものからも、どのような他者からも剥奪されることはない。人の人間としての価値は、他人に譲り渡すことのできないものである。このような人間の価値こそ、クライエントを受けとめるという援助原則の基礎であり、ケースワークに異議と方向性を与える基盤である。
「受けとめる」という原則の目的は、援助を目指し、問題やニーズを抱えるクライエントを援助することです。
ケースワーカーがクライエントのありのままの姿で理解し、援助の効果を高め、不健康な防衛から自由になるのを助けることです。
クライエントは、この援助を通じて安全感を得ることで、自分自身を表現し、ありのままの姿を見つめることができるようになります。
また、自分の問題や自身に向き合い、対処できるようになります。
2.クライエントのニード
彼は自分に対して両価的(ambivalent)な感情を持っています。
自分の弱さや失敗に気づきつつ、自分の尊厳や価値も感じています。
援助を求める際、クライエントは不安や恐れ、憤りから防壁を作ります。
これらの感情は隠されていることが多く、漠然とした形で自覚されている場合がありますが、現実の問題よりも厄介な場合もあります。
このような直面したくない感情を隠す必要がないと感じられるような、ケースワーカーの受けとめる雰囲気が重要です。
クライエントは試すために否定的な感情を表現することがありますが、ケースワーカーは安易に許容したり、非難してはいけません。
この感情表現を現実の一部として受けとめることができると、クライエントは防衛から解放されます。
クライエントは、自分のありのままを受けとめてもらえていると感じるまで、ワーカーを試し続けます。
この過程を続ける中で、クライエントは防衛が望ましくないことに気づき、自分を表現することに安全感を感じるようになります。
そして、ありのままの自分に直面し、自分の否定的な感情を整理することで、彼自身の力によって援助の効果を高められるようになります。
また、ケースワーカーがクライエントを受けとめられるようになるにつれて、クライエントは自分自身を受けとめ始めます。
そうすることで、彼は本来の自分を取り戻し、自分の力を育んでいくことができるようになります。
ここでは、彼が安易に許容されたり非難されることのない体験を初めて味わっています。
彼は自分の感情や態度を本物のものとして、また意義のあるものとして認識できるようになります。
クライエントの中で、自ら自分を信頼するという内的変化が生まれます。この内的変化が、不快な状況から生じている恐怖や憤りの感情に打ち負かされないだけの力を自らの中に育てていきます。
感想
受容の原則が大切なことは分かっていても、いざ説明しようとすると「全てをありのまま受けいれる」と漠然とした理解しかしていなかったことに気がつきました。
バイスティックは、援助を求めるクライエントが現実の困難な状況に対して、心の奥底に不安や恐れ、憤り等を隠していることの方が、現実の状況よりもむしろ厄介であると言っています。また、クライエントは失敗したと思っているし、また、自分の尊厳も同時に感じています。
心の奥底に隠している現実に対する恐れや不安、憤りなどの感情は、ケースワーカーの受けとめる関りにより、徐々に自らその感情を認め、その感情に負かされない力を育てていきます。
また、ワーカーの逸脱した行為や行動を許容せず、非難も褒めることもしない関わりは、クライエントの初めての体験となります。クライエントは、そのような関わりを感じとります。
受容とは、人間として持つ価値、ありのままの真実を受けとめ、安易に非難したり許容したりせず、クライエントが心の奥底に隠している感情から自由になる関わりだと学びました。
次回は受容の続きで、ケースワーカーの役割からまとめていきます。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
私が目指しているのは孤立のない共生社会の実現です。
参考引用文献
F.P.バイスティック著 尾崎 新ほか訳 『ケースワークの原則新訳改訂版援助関係を形成する技法』誠信書房 2022年、105~121頁
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