ソーシャルワーカーは社会統制を志向してもいなければ、公衆衛生の手先でもないぞ
国税庁が主催してサケビバなる催し物をするらしい。若者の飲酒を喚起して酒税収入をUpさせようという試みだろうか。
若者を対象にした「サケビバ!日本産酒類の発展・振興を考えるビジネスコンテスト」の中止を求める緊急要望書
これに対して、日本精神保健福祉士協会がほかの団体と連名で要望書を出したのだけれど、ちょっと賛成も看過もできないことが書かれてたので手短に書く。イベントを中止せよという結論自体はまあしょうがないかな、という感じで反対はしていない。ただ、
ソーシャルワーカーはいつから法的に禁止されていない特定の習慣について「ないことが望ましい」とか言う立場になったのだろうか。いつから法的に禁止されていない私的領域に口出しできるほど偉くなったのだろうか。本文全体を見渡しても人が飲酒をするメリットが考慮されていない。およそデメリットの大きさだけで話が進んでいる。デメリットだけで話をしていいなら、医療費抑制が望ましいなら、およそすべての保険医療はやめるべきだ。ソーシャルワーカーは制度利用を促進することで公費の増大を招くから税金の無駄どころではない。
上の話が暴論であるように、物事にはメリットとデメリットが混在しており、それを比較衡量しなければ政策議論はできない。上の要望書には、人がお酒を楽しんでいるという端的な事実が無視されている。
「ない方が望ましいものをプロモーションするのはけしからん」というのとほとんど同じ理屈で古今東西様々なものが焼かれてきた歴史に、もう少し理解を頂けないものかと思う。それは全体主義への一里塚に他ならない。
また、ソーシャルワーカーが公衆衛生上望ましいからという理由で何かを推し進めることに、もう少し慎重になって頂けないものかと思う。こういうことをやるから、ソーシャルワーカーは行政機構の手先だと言われるのだ。団体がこれではいくら現場が奮闘したとて報われない。
共同提案であるというのは理由にはなるが言い訳で、承服できないなら自前だけで出せばいい。私的領域を統制しようという(おそらくは無自覚な)発想を基に出された要望書に、よりによってソーシャルワーカーの専門職団体が相乗りにしているのには呆れる。
個人的には、若者がお酒について何の知識も飲み方も知らないまま社会人になって、上の世代の乱暴な飲酒習慣になすがまま呑み込まれていく方がよほど危ないと思うけれど。ただ、そういうお酒との付き合い方については厚生労働省が所管だろうから、国税庁のイベントでやる理由はない。そもそも国税庁の目的は税収の最大化でしかないんだから、要望書にあるような総合的な視野というのは難しいかもしれない。その意味で、要望書の結論が「中止を求める」なのに異論はない。でも、こういういい加減なことばかり言ってると社会から置いて行かれるよ。もう手遅れかもしれんけど。