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ビタミンゼミ第26回 【ブランディング】"成長方針"になるサービススローガンの作り方 | 田村 大輔教授

ビタミンゼミ第26回は、PARK Inc.代表取締役の田村大輔さんを講師に迎え、ブランディングをテーマに、サービスを飛躍させる"成長方針"になるようなサービススローガンの作り方について詳しく教えていただきました!

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PRAK Inc. 代表/コピーライター 田村大輔さん

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Skyland Ventures、STRIVE、W venturesなどのベンチャーキャピタルや、SmartHR、LayerX、ZIZAI、ポジウィル、GROWTHなどのスタートアップを中心にブランディングやクリエイティブサポートを行っているPARKの代表取締役/コピーライター 田村大輔さん。

クリエイティブディレクター/コピーライターの廣澤康正氏に師事→面白法人カヤック→オレンジ・アンド・パートナーズを経て2014年PARK創業。クライアントワークに加え、自社事業としてメンズスキンケアブランドを立ち上げるなど、みずからもスタートアップとして事業展開されています。

サービススローガンの前にミッションやバリューを定義するのが理想

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ブランディングに力を入れようと思っても、期間や費用や社内リソースの問題でなかなか外部に頼みづらいということもあると思います。そこで今回は自社内でスローガンを作る場合の方法を、できるだけ体系的にお伝えできればと思います。

ひとくちに、ブランディングと言ってもそのアクションは様々なので今回は特に「ことば」=スローガンにフォーカスしたいと思います。PARKではロゴやサイトのご依頼をいただいた場合でも、まずスローガンから作りましょうとご提案しています。

スローガンがあることで、その後のいろんなアウトプットにおける意思決定がスムーズになると考えてまして。そのあたりは、のちほどご説明してます。

そして、サービススローガンを作るにあたっては、コーポレートのブランディングから着手するのが理想ではあるかなと思っています。流れとしては会社のミッションを決めた後に、スローガンを作ることが多く、そのほうが会社と事業で一貫性を保てるからです。

例えば以前ブランディングのお手伝いをした「POSIWILL」さんの事例で言えば、まず最初にコーポレートミッションから策定し、それをもとに社名やサービス名の検証をして、その後にサービススローガンやロゴマーク制作、さらにはコーポレートバリューの策定を進めていきました。だいたい、10ヵ月くらいのプロジェクトでした。

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ということで、少し脱線しますが、ミッション・ビジョン・バリューの定義を振り返ってみたいと思います。

特にミッションやビジョンは人によって定義がばらばらです。例えば、「マネジメントの権威」や「経営学の父」などと言われるピーター・ドラッカー氏によると、ミッションは果たすべき使命や社会に対して実現したいこと、ビジョンはそのミッションが実現したときの自分たちの状態というように定義されています。

若干ややこしいですよね。。。

「使命」と「実現したときの状態」とは具体的にどのように違うのか?その棲み分けをきちんと整理するのはけっこう難しいなと思っています。そこで、個人的には別の目線の整理として、例えばミッションとビジョンを時間軸をベースに切り分けてみると良いのではないかと思っています。

ミッションは5年〜10年変わらない恒常的な使命、ビジョンは3年後の成長目標というように。とはいえ、それでもやっぱりややこしさはぬぐえないので、僕がお手伝いする場合はミッション+バリューの2本立てでいきませんか、と通常はご提案しています。

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さて、本題のサービススローガンについてですが、このスローガンの露出の場面として、サービスサイトや営業資料などで使っていくケースが多く、ユーザー獲得という目的が先立つと思います。

ただ、実はもう少し寄与する範囲が広く、僕はサービスを飛躍させるうえでの”編集指針”や”成長方針”になるものだと考えています。

特に、プロダクトの改善においてサービススローガンがあることで、スローガンを意識した改善方針をたてることができるようになり、一貫した指揮を取ることができるようになります

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提供したい価値と現実のズレを見極める

サービススローガンを作るステップは、①ヒアリング ②コンセプト策定 ③コピーライティングの大きく3つで通常僕は進めていきます。

まずはじめにヒアリングですが、対象者としては経営層&社内のボードメンバーやユーザー(既存ユーザー、導入を検討したが離脱したユーザー)、投資家やアドバイザーをよく対象にしています。というのも、自社が提供したい価値と、実際にユーザーが感じている価値には乖離があることが多くあります。自社に関連する人全体にヒアリングすることで、自社の提供価値との間にあるズレを見つけることができ、そのズレの中に重要なキーワードがあるような気がします。

実際のヒアリングで、ボードメンバーに聞いている質問の例です。特に重要だと思っているのは、「サービスとして提供したくない/すべきではない価値はなんですか?」という質問です。事業としてできることはたくさんありますが、その中でもやらないことを決めることでサービスとしての方向性がより洗練されるように思います。

・サービスを立ち上げた背景は?なぜこの事業をはじめたんですか?
・どのようなユーザーに利用してほしいですか?
・○○があることで、ユーザー/社会にどんないい変化が訪れますか?
・競合サービスと明確に異なる点はなんですか?
・○○が提供したくない/すべきではない価値はなんですか?
・事業を通じて、最終的に成し遂げたいことはなんですか?

コンセプトでは解釈のズレのないような言葉を選ぶのが重要

次にコンセプト策定です。

コンセプトとはなにか考えてみると、そのまま訳した場合、「基調となる考え方」です。つまりスローガンの「切り口」であると考えています。なぜ、最初にコンセプトを定める必要があるのかというと、ヒアリングからすぐにスローガンをつくろうとするとちょっとブレる可能性があります。

スローガンは最終的に、耳ざわりの良さやリズム感など感覚的なものも作用するのですが、「この言葉はかっこいい/ダサい」といった主観的なモノサシで選ぶと、その裏にある事業の方針や提供したい価値みたいなものとちぐはぐになる可能性もあります。そのため、表層的な表現ドリブンで進めないために、コンセプトを最初に定めることが大事だと思うんです。

コンセプト策定には、4つぐらいポイントがあるかなと思っていて、1つ目は、まずはシンプルに数を出すということです。多いときは20~30案くらい作成し、方向性を絞り込んでいきます。

2つ目のポイントは、サービスの「選ばれ方」を考えることで、それによって切り口が変わると思います。ざっくり大きく分けて「機能を売るのか?」「信念を売るのか?」の2つの選ばれ方で考えていただくと良いでしょう

機能を売る選ばれ方は、どういうペインを解消するのか、どんなメリットがあるのかを中心に押し出していくタイプです。信念を売る選ばれ方は、自分たちの描く未来に一緒に進みませんか?みたいな押し出し方をする、いわゆる共感買いに近いタイプです。
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スタートアップで、機能訴求と信念訴求のどちらも目指したいという場合であれば、あまりおすすめはしませんが2種類のコンセプトを作ることもあります。

LPでは機能を訴求して、カンファレンス等であれば信念を出すなど場合によって使い分けていくというイメージです。ただ、やっぱり機能で選ばれる商品は信念を押し出しても抽象的になりがちでなかなか売れないことが多いです。そういう場合は、機能訴求を優先的に作成することが重要でしょう。顧客とのヒアリングがここでとても効果的になってきます。

3つ目のポイントは、「Who we are」の公式をつくってみると良いかと思います。公式を具体的にしたものがこちらになります。

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・どのドメイン、どんな事業モデルの領域で
・どんなターゲットに対して
・どんなソリューションを通じて
・どんなバリューを提供する事業なのか

実は、先程のヒアリングで挙げた質問は、この公式にある程度呼応するようになっております。これに当てはめることで、少しずつターゲットやドメインや価値が明確になっていき、筋の通ったコンセプトもつくりやすくなる気もしています。

4つ目のポイントは、コンセプトを作るにあたってできるだけ平易な表現におさえることです。特に言葉の「好き嫌い」や「かっこよさ」よりも、「正しさ」や「解釈のブレのなさ」を重視することが大事です。コンセプト自体は正しく伝わる事が大事で、表現を気をつけるのはこの後のスローガン開発(コピーライティング)になります。コンセプトが明確であればあるほど、メンバー全員が同じ目線で善し悪しを判断できるようになるので、意思決定もスムーズになると思います。

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こちらはSkyland Venturesの例で、スローガン(ミッション)は「The Seed Maker.」というコピーですが、もともとのコンセプトは「どこよりも早い段階で投資するポジションを確立。」というものです。コンセプト段階では、このぐらい普通でわかりやすく、認識のズレがないような言葉選びを追求するのが良いんじゃないかと思っています。

おぼえやすいか?オリジナルか?ワクワクするか?の目線で

さて、最後のコピーライティングのステップですが、ここは正直、うまく書く方法を伝えるのはとても難しいと思っています。ただ、わかりやすい構造というものはある気がしていて、例えばサービススローガンの場合は「キャッチコピー+ドメインコピー+ボディコピー」の3つで構成するケースが個人的に多かったりします

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キャッチコピーは最も伝えたいこと。ボディコピーは、キャッチコピーでは伝えきれない、その他の要素を盛り込んでいくなど、情報の強弱をつけていくといいと思います。

キャッチコピーはサービスの価値だったり、サービスの信念を据えると良いですが、それだけだと具体的にどんなサービスなのかがわかりにくかったりします。そのため、サービスをひとことで伝えるためにドメインコピーがあると有効です。ドメインコピーがあるだけで、簡単にサービスについて説明する必要がある取材などでも有効です。

実際、良いコピー、刺さるコピーを作るというテクニック的な話は表層的になってしまうし、再現性のないものです。実際僕も、毎回「このコピーでいいのか?」と悩みながら試行錯誤しています。なので、結局はたくさん作って選ぶ、という繰り返しになるのですが、あえてひとつ挙げるとしたら、「選ぶ基準」は最初に決めておいたほうがいいということです。

その基準もプロジェクトによってケースバイケースではありますが、たとえばこんな感じです。

ポイント1、「それは、おぼえやすいか?」。どうしても、「あれも言いたい、これも言いたい」となりがちなんですが、詰め込むほどに言葉が複雑になって本当に伝えるべきことがぼやけます。それを避けるためには、できるだけ簡潔にまとめることが大事です。

2つ目のポイントは、「それは、オリジナルか?」ということです。できるだけ、「自分たちだからこそ言えること」を追求して、自社の強みや独自性を具体的に深ぼって言語化されているかどうかを見極めることが大切だと思います。

3つ目のポイントは、これは特に信念を売る系のアプローチで重視したいのですが、「それは、ワクワクするか?」ということです。

スローガンの役目が、ステークホルダーに対しての価値訴求だけではなく、事業を作る社内のメンバーの意識統一を図る役目だとしたら、やはり自分達がワクワクできるかどうかは必要で、鼓舞されたり、誇りを持てたりという視点は重視したいです。

こちらはベンチャーキャピタルのSTRIVE株式会社の例です。おぼえやすく、オリジナルで自分たち自身もワクワクするという観点から「その野心を、スケールさせる。」という言葉が選ばれました。

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最後に、コーピーライティングのテクニックを紹介

・単語の耐久年数に気をつけよう
バズワードのような単語は、賞味期限が早く1年後には使われないようなものも多くあります。その単語が半年や1年後にどのような受け取られ方をしているのかを想像してみると良いでしょう。

・サービスの人格を宿そう
熱血的、冷静などの人格が見えると、おのずと「言葉の温度」のようなものも自分達らしくなります。「このサービスを偉人で表すと誰ですか」や「このサービスの色で表すと何色ですか」みたいな質問から深ぼってみるのもおすすめです。

・「未来」「次世代」「進化」「新体験」を掘ろう
「未来を作ります」「〇〇が進化します」など、なんとなく大きなことを言っている印象があるものの具体的に何をいいたいのかが伝わらない場合が多かったりします。「未来」という単語一つとっても、想像される未来が立場によって異なるため具体的にする必要があります。

・5秒で理解させよう
コピーが事業を成長させていくために、事業に関わるみんなが覚えやすいこと、日常の意思決定で空で言えることがかなり重要だと思っています。なので、いいコピーの基準として初見の人が5秒で理解できるかは検証してみると良いと思います。

まとめ

STEP3のコピーライティングについては、どうしても個人の感覚に寄与する割合が多いと思います。なので、STEP2でコンセプトがけっこう重要で、具体的な表現(コピーライティング)に入る前に、しっかりとコンセプトを固めるのをおすすめします。

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質問

Q.自分で作ることと、外部の人が入るメリットってどんなところにありますか?
A.客観性が保たれることかと思います。自分たちで作るとなると思いが先行して、独りよがりなものになってしまうこともあるので、僕が外部の人間としてプロジェクトに入る時には、競合と比較したときにこのメッセージで良いのかなみたいな客観性を持って見るようにしています。
自分たちで進める時の注意点としては、一人でやらないということです。ヒアリングの段階から、きちんとプロジェクトチームを組んで進めることで客観性を保つことが重要です。

Q.プロジェクトチームのメンバーは誰を入れると良いでしょうか?
A.プロジェクトチームは決めるためのチームだと思います。サービスのスローガンを決める場合は、代表の方が中心で広報の方、プロジェクトリーダーの方等の3名で組成することが良いと思います。会社としてのミッションを作る場合は、例えば人事の方や、あえて社歴の浅い方を入れたりとフラットな目線を保てるようにすると良い気がします。

Q.外部に頼む場合、どのタイミングで依頼すると良いのでしょうか。
A.もちろん、ゼロイチのタイミングも多々ありますが、プロダクトをリリースしてから半年くらいだと精度が上がるとは思います。ユーザーからヒアリングをすることもできますし。
まずは自分達でスローガンをつくってみて仮説検証してみて、プロダクトが成長し転換期を迎えるようなタイミングで依頼するとより効果的な気がします。シリーズが変わるタイミングもひとつの目安かもしれません。

Q.スローガンで表現したいことと、サービスの成長とあっていない場合どうしたら良いでしょうか。
A.スローガンを作る際、どうしても大きいことを掲げがちです。それ自体は素晴らしいのですが、顧客が求めることと自分たちが約束できることがちぐはぐになってしまうと、導入してもらったのは良いものの信頼を失う可能性もあると思います。
どういう時間軸でスローガンを定めるのかが重要です。
キャッチコピーって賞味期限があります。自分たちのサイズが大きくなっていくことで変わる賞味期限と、外的な影響で賞味期限が変わる点の両方あるかと思います。
特に機能売りに関しては最終的に提供したい価値と、今提供できる価値がイコールではないことが多くあるかと思います。最終的に提供したい価値をベースにスローガンを掲げてしまうと、実際の機能やプロダクトがそこに伴っていないことが多くあるかと思います。なので、今提供できる価値をベースにスローガンを掲げていくことが大事かと思います。

Q.ブランディングやスローガンを決めるまでの期間はどれくらいが良いでしょうか。
A.ブランディングってやろうと思えば10年でも20年でもできるという点で、サグラダ・ファミリア化してしまいます。なので、プロジェクトリーダーが重要で、いろんな意見をきいたとしても最初に決めた決める人が期限を決めて決めきることが重要でしょう。

Q.作ったものがワークしているかという判断軸はありますでしょうか?
A.言葉を変えたからと言って、数字にすぐ反映されるものではないです。もちろん数字の変化を追うのは重要ですが、数字によって短期でコロコロ言葉を換えるのは意味がないので、長期的にウォッチしたほうがいいと思います。もうひとつの目線として、掲げたスローガンに基づいてプロダクトが改善されているか、冒頭の“成長方針”として現実的に機能しているかどうかを判断するのは重要だと思います。また、掲げたスローガンを軸にプロダクトが改善されているかを見ると良いでしょう。

Q.スローガンやミッションを浸透させるにあたって、セットでやっておいたほうが良い施策とかありますでしょうか。
A.サービスのリブランディングの場合は、それに基づいてプロダクトそのものを見直すこと。さらにロゴマークやサービスサイトのリニューアルなどもその後の流れとしては多いケースです。営業スライドを変えたり、パンフレットをつくったりもよくあります。

Q.コピーを作る際にひらがな、漢字、カタカナの使い分けについて
A.まさに、サービスの人格が現れるポイントだと思います。人格に合わせて、かっちりしたいのであれば漢字を使うと良いでしょう。やわらかさを入れたい場合はひらがなを使うと良いでしょう。ただ、前提として漢字が多用されるとどうしても読みにくくなるので、ひらがなを上手に織り交ぜていったほうがいいと思います。

Q.コンセプトの数出しで良いコンセプトが多数出てくるイメージがない。コンセプトの確度を上げるために、されている質問とかあれば教えて下さい。
A.このコンセプトで行ったときに、競合に勝てるかどうか。次に、そのコンセプトを信じて進みたいかという目線の2軸が重要かと思います。

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