「自然」と「反自然」
この化粧品は「自然」ですか?ときかれたとき「いいえ反自然です」と答えたいところですが、あまりに唐突でびっくりされるため、普段は「もちろんですよ」と答えています。
「自然」を思いつくままに表現してもらうと、多くの人は「山すそに開けた田園風景、小川のせせらぎと土手に生えたつくしやタンポポ、見渡す限りの緑の丘陵、のどかに草をはむ羊の群れ・・・」などを想像されます。
この想像風景、実は本当の自然ではないのです。実は、人間自らが都合の良いように変えてきた「反自然」の風景なのです。自然を変えたのは人間が始まりではありません。38億年前、生命が海の中に誕生して以来、生命は自ら生きていくために自然を変えながら進化してきたのです。
「本当の自然」とは生命誕生以前の「非生命世界」の地球環境です。その頃の大気には酸素はなく、窒素と炭酸ガスだけでした。当然オゾン層はなく、強い紫外線が地球に降り注いでいました。厚い大気の下は宇宙から飛来したマイナスイオンだけで満たされた(プラスイオンは大気を通過できない)、原始の海に金属イオンが溶け込み、アミノ酸や核酸が濃厚なスープのように浮遊していました。その「自然」環境の中で生命は誕生します。
生命体は「自然」そのものを自らの中に取り込んで生まれましたが、せっかく生まれた生命も、そのままだと自然の力に再び飲み込まれて消えてしまいます。生命体を維持するためには、周りに「反自然」の砦(膜)をつくり、過酷な環境あら自らの領域を確立して、自己を主張する必要があったのです。
生命は炭酸ガスと水から炭素と水素を取り込み炭化水素の鎖を合成して糖質と脂質をつくりました。糖質からエネルギーが生まれ、脂質から油膜、つまり水中でも溶けてしまわない「油性細胞膜」ができたのです。このプラスイオン弱酸性皮膜が生命体を覆い、細胞の内と外を分ける境界をつくり、命を守る砦を形成することに成功したのです。原始生命の細胞膜は私たちの皮膚にあたります。皮膚の機能は内なる命を守るために常に過酷な環境に相対しています。皮膚のバリア機能は「反自然」でなければ役に立たないわけです。
皮膚機能をサポートする化粧品は、当然「自然」そのものであってはならないのです。
このようなことから「この化粧品は自然ですか?」という問いに対しては「いいえ、反自然です」というのが私たちにとって正しい答えなのです。