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柔軟な働き方「プロティアン・キャリア」をインフォグラフィックを使って解説してみた
最近は、情報デザインやインフォグラフィックを制作する機会が増えています。今回はその中から、インフォグラフィックの制作事例をご紹介したいと思います。
(インフォグラフィックとは、文章や数字だけでは伝わりにくい情報を「整理」、「分析」、「編集」し、イラストやチャート、グラフ、マップなどを用いて視覚的に表現する手法です。)
今回ご紹介するのは、ダグラス・T・ホールが提唱した「プロティアン・キャリア」という柔軟なキャリア観をテーマに、Newspicksエキスパートというサービスの魅力を描いたインフォグラフィックです。制作の背景や工夫したポイント、そして成果をお伝えします。
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1. 依頼内容
このプロジェクトでは、株式会社ユーザベースのグループ会社ミーミル様より、「Newspicksエキスパートの魅力を伝えるインフォグラフィックを制作してほしい」という依頼をいただきました。
Newspicksエキスパートとは?
「Newspicksエキスパート」は、個人が持つ専門的な知見を企業とつなぐプラットフォームです。参加するエキスパートは10,000人以上にのぼり、CxO、上場企業の元役員、省庁出身者、教授など、多岐にわたる業界のスペシャリストが集結しています。
詳しくはこちら👉 Newspicksエキスパートについて
2. なぜ「プロティアン・キャリア」をテーマにしたのか
2021年当時は、働き方改革やリモートワークの普及が進み、個々人のキャリア観が急速に変化しつつある時期でした。
その頃、私は『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』(田中 研之輔著)を読み終え、自己主導でキャリアを柔軟に変化させる考え方に深く共感していました。
一方、Newspicksエキスパートは「個人の専門知識を武器にする」という特長を持っています。この特長が「プロティアン・キャリア」の「変化への適応力」や「専門性の活用」という価値観と共通していることに気がついたのです。
これらを結びつけ、「柔軟に変化する力」をテーマにしたインフォグラフィックを制作することで、単なるサービス紹介にとどまらず「これからのキャリアはどうあるべきか?」という問いを読者に提起すれば、より多くの人の目にとまるのではないかと考えました。
(こちらの本を読みました↓)
3. 解決のアプローチ
①情報整理とストーリー設計(企画・構成フェーズ)
インフォグラフィックに含める情報を整理し、読者がストーリーを自然に追えるよう構成を設計しました。以下は最初に提案した企画・構成案の一部です。
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最終的には、以下の4部構成にまとめました。
【プロローグ】柔軟なキャリアの象徴「プロテウス」
冒頭では、変幻自在の神「プロテウス」を取り上げ、神話の要素を取り入れることで読者を物語の世界観に引き込みます。
【チャプター01】日本の雇用環境
この章では、2016年以降の日本における働き方改革の促進や副業解禁、2021年に制定された改正高年齢者雇用安定法に触れます。これらを背景に、終身雇用の崩壊やキャリアの多様化が求められる現実を示し、はたらく日本人が直面する問題を明確化しました。
【チャプター02】プロティアン・キャリアの概要と価値
次に、「プロティアン・キャリア」の概要を3つのポイントにまとめ、さらに従来の日本キャリア像との違いについて比較します。
【チャプター03】Newspicksエキスパートを活用したキャリア構築の可能性
最後の章では、組織に所属しながらもプロティアン・キャリアを構築する方法の一つとして、Newspicksエキスパートの利用を提案しました。このプラットフォームを活用することで、積み上げてきた自分の知識や経験を「所属する企業以外でも活かす」という選択肢を提示しています。活用例も示して、読者が新しいキャリアの可能性をイメージできるようにします。
②冒頭部分の工夫:
古代ギリシャを舞台とした世界観で読者を物語にひきこむ (グラフィック制作フェーズ)
構成が確定した後は、いよいよ「どう見せるか」というグラフィック制作のフェーズに入ります。
冒頭部分では、海に入って獲物を追う海神のビジュアルを採用し、変幻自在の神「プロテウス」を連想させるデザインにしました。古代ギリシャを舞台とした世界観で神話のエッセンスを取り入れつつ、「柔軟性」や「多様性」といったキャリアのテーマを象徴的に表現しています。
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③その他のデザインの工夫 (グラフィック制作フェーズ)
以下の3つのポイントを意識してデザインしています。
【カラー】
メインカラーには、エーゲ海をイメージさせる青と水色を、サブカラーは緑、更にアクセントカラーは黄を用いて、視覚的なメリハリを考慮しています。また、全体の統一感を保つために、色数を適度にしぼることを心がけました。
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【図解】
フロー図やアイコンを駆使し、複雑な概念や情報の関係性を視覚的に分かりやすく整理しています。
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【視線誘導】
上から下へ自然な流れで情報を読み取れるレイアウトにしています。
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④使用ツール (グラフィック制作フェーズ)
デザイン作業では、主にAdobe Illustratorを使用しています。クライアントさまとのやりとりには、実はnoteの下書き機能を活用しました!
下書きURLを共有し、リアルタイムでフォードバックをいただく形で効率的に進行しました。
5. 読者の反響と成果
インフォグラフィックは以下の記事で公開されています。
👉 これからの働き方『プロティアン・キャリア』とは何か
読者の反響
• 「自律型のキャリアモデル 『プロティアン・キャリア』は私自身、ものすごく自分の価値観に合う考え方です。」
• 「自分の専門性を活かすための行動指針として参考になった。」
• 「プロティアンキャリアの考え方がもっと広まれば、おもしろい日本になるのではないでしょうか?」
• 「100年、VUCA時代には、プロティアンな生き方、働き方が必須ですね。」
成果
公開後、804件のPicksをいただき、多くの反響をいただくことができました。
「プロティアン・キャリア」というテーマが読者の価値観やキャリア観に深くひびき、単なる情報提供をこえて、「自分ごと」として考えるきっかけを提供できたのではないかと感じています。
6. 最後に
最後までご覧いただきありがとうございます。
インフォグラフィックは、複雑にからみあう情報の関係性を視覚化し、読者に「一目で理解できる」体験を提供します。その魅力は、見えにくかった本質や背景を浮き彫りにし、情報に新たな価値を生み出す点にあります。
制作プロセスでは、企画・リサーチから構成設計、グラフィック制作にいたるまで、デザイナーが一貫して取り組むことで、情報の伝達力と説得力を最大化します。
もし、インフォグラフィックやビジュアルコンテンツ制作に関するご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。一緒に、メッセージを効果的に伝えるお手伝いができれば幸いです。
この記事を書き進める中で、インフォグラフィック制作をライフワークにしていきたいという気づきがありました。これからも時代の変化に寄り添いながら、社会に役立つコンテンツをつくり続けたいと考えています。
引き続きよろしくお願いいたします。