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34年越しの再会という名の導き
今日、文京シビックホールの一階展示スペース前で偶然目にした「朔日会」の文字。横には小さく「選抜展」とある。
![](https://assets.st-note.com/img/1736333506-ojIrsnubN0fyTxl6XE8vPRpa.jpg?width=1200)
黒い背景に鮮やかな赤の文字がドーンと、はみだして配置されていて、インパクトが半端ない。一度見たら忘れられない独特な配色と大胆なレイアウトのポスターを目にした瞬間、記憶の扉が開いた。私は吸い込まれるように展示スペースへ足を踏み入れた。
ここで私は、思いがけない作品との再会を果たすことになる。
朔日会は、1937年に創立された歴史ある美術団体だ。具象絵画を中心に、会員や公募参加者の作品を発表する場を提供している。毎年、東京都美術館での「朔日会展」をはじめ、全国での巡回展を行っている。30数年前、私もその一員として、油絵を学んでいた。
展示スペースには30枚ほど、0号から50号ぐらいの小さめな油絵が整然と飾られていた。風景画や人物画、静物画から抽象画、立体モチーフが組み合わさった画などバラエティ豊かだ。
そして、その中にあったのだ。
今から30年以上前に、私が油絵を習っていた先生の絵が。
30年以上の歳月を越えても、そのタッチは変わらずエネルギーに満ちあふれていた。セザンヌを崇拝していた先生らしい力強い構図と圧倒的な重厚な色彩。まるで絵そのものが先生の存在感を放ち続けているようだった。
当時、私は朔日会では数少ない高校生だったと記憶している。毎週末に先生の谷中のアトリエに通い、3時間ほど絵を描いた後に大人たちに混じり、お茶をする。
思春期特有の恥ずかしさからほとんど自分からは話せず、周りの会話に耳を傾けるだけではあったが、先生が語る言葉や、他の大人たちとのやり取りには心を動かされることが多かった。
でも、今振り返ると、もっと積極的に話に入っていけばよかったと思う。先生の考えや絵への思いを、もっと深く知ることができたはずだ。
受付の方に伺うと、先生は昨年お亡くなりになったとのことだった。その事実に胸が少し締め付けられる思いがしたけれど、先生の絵がこうして私を導いてくれた気がした。「また油絵をやりなさい」と。
朔日会で過ごした日々は、居心地の不安定さを感じていた高校時代の私にとって、好きなことに夢中になれたかけがえのない時間だった。そして今日、あの頃の自分を思い出すことで、先生が残してくれたエネルギーに背中を押された気がする。
今年やるリストに、「油絵を描く」を入れた。先生に教わりたかったことを、今度は自分の中で探してみようと思う。