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旧東海道一人旅: 箱根湯本駅〜箱根関所まで④

箱根湯本駅➔箱根関所

小田原で箱根登山鉄道に乗り換えて箱根湯本駅に到着したのが8:30分。期待した駅構内のカフェは開店前。空腹を抱えて一号線の高架を渡ります。早川から湯本グランドホテルを迂回して東海道旧道へ。静かなたたずまいの旅館が続きます。

20分ほど歩いて「正眼寺」へ到着。大澤坂碑(登り三町余り)より石畳が始まります。道幅は約2m弱、摩耗した直径30cmほどの石が乱雑に敷き詰められています。雨上がりのせいでしょう、濡れた石畳は本当によく滑る。こんなに狭い道を、しかもわらじ履きで、蹄鉄を付けた馬が行き交ったとは信じられません。一歩一歩、足下を確認しながら畑宿へ向かいます。更にここからが正念場の橿木坂、「どんぐりほどの涙を流す」と言われる東坂一番の難所の始まりです。当時の旅人はこの急斜面、歯を食いしばって這い上がったのでしょうが、今は年期物の階段が整備されています。しかしこれがまた曲者。誰にも同じ歩幅を求める山頂付近の石段は、思った以上に体力を消耗させます。近年では「月の御岳山」、「熱海の伊豆神社」がそれにあたるか。必死こいてたどり着いたのが見晴らし茶屋。シソジュースが名物だそうですが先を急ぎます。


ここからは下二子山の等高線に沿って次第に高度を上げ、県道を何度か横切って歩き続けます。なんとかしているうちに箱根旧街道の最高地点に到達。展望は全く望めませんが、箱根馬子唄の碑がしっかりと鎮座しています。「箱根八里は馬でも越すが、こすに越されぬ大井川」。ここで注釈を一つ。もともと箱根峠は笹を敷いて路面の安全を確保していましたが、動員する労力が多大なものになったため、徳川家茂が上洛する際に石畳を整えたのが始まりだとか。時計はもう正午をかなり回っています。思ったよりかなり時間がかかりました。滑る敷石を一歩一歩確認しながら歩かねばならなかったこと。うっかり道案内を見落として、奥湯元温泉街をぐるぐるうろつきまわったこと。数々の苦労がありました。峠の頂上から見下ろす芦ノ湖はすぐ下です。

湖畔に降りれば「江戸日本橋より24里目」の一里塚。そして歴史的景観の杉並木を通って本日の最終目的地箱根の関所前へ。ここから箱根登山鉄道のバスに乗って箱根湯本駅まで一気に800メートルの高度差を下ります。元箱根港の一つ前のバス停でバスに乗ったのは正解でした。元箱根でもうバスはすし詰め状態。しかも宮ノ下を過ぎると遅々として進みません。休日の国道一号線の渋滞を甘く見ていたのは大失敗。結局1時間30分と1100円を費やして、ほうほうの体で湯元駅に到着。休日に箱根に行くなら、自家用車の場合、絶対に国道一号線を避けること。バスで下山の場合は強羅か宮ノ下で降りて電車に切り替えることが必要です。

全行程人里離れた旅路でありながら、心は俗な関心に流れ、内面の私との対話がなかったことは大いに反省すべき旅路となりました。



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