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サキミの事例インタビュー⑦『相互理解が本当の問題解決につながる』

サキミ:
今回はハラスメント問題の対応について、一緒に対応したG社の人事Fさんとともに振り返ります。

人事紹介2月

典型的なパワハラ?!

Fさん:
私自身、非常に考えさせられた事例です。当初は、昭和を引きずった体育会系の管理職がやらかした典型的パワハラケースだと思っていました。
Cさんが残業をしているところに、食事から戻ってきた上司が大声でCさんを批判し始め、しまいにはヒートアップして、Cさんが座っているイスを蹴ったんです。本人も認めていますけど、少し酒も入っていたんですよね。

サキミ:
身の危険を感じたCさんが逃げ出したので、そこまでで済んだかもしれません。

Fさん:
その翌日に、Cさんから社内のハラスメント対応窓口である私に通報があり、上司の降格処分と異動を強く求められました。
社内窓口といっても、設置したばかりだったので、どう対応したらいいか戸惑ってしまって…。サキミさんに相談しながら、基本的な対応をしつつ、Cさんの精神的なサポートもサキミさんにお願いしました。

サキミ:
Cさんは、上司が怒鳴りながらイスを蹴った場面が繰り返しフラッシュバックすることで、過呼吸と不眠の症状が起き、心療内科に通院を開始して休職することになりました。
休職当初は起き上がれず、眠れないまま横になっているような状態でした。

Fさん:
それなのに、「上司を降格して、異動させてほしい」ということは事あるごとに言ってきて、そのときはものすごく力が感じられるというか、元気なときのCさんのようで、その様子にも戸惑っていました。
怒鳴る、イスを蹴る、しかも飲酒の上でということで、上司が完全に悪いですが、上司自身も非を認めて謝罪をしたいと言っていたので、社内的には厳重注意でよいのではないかという雰囲気でした。しかしCさんは、降格と異動を譲らない姿勢で…。
被害者の過剰な処罰感情だけに従うわけにはいかないし、行為者にも人権があり、組織としての判断があるので、どうしたものかと困ってしまって…。
それで、サキミさんに「過剰反応だと思わない?もう少し休んだら気持ちは落ち着くもの?」と訊いたんです。

サキミ:
確かに、Cさんが上司の処分についてお話しなさるときのご様子は鬼気迫るものがありました。そこだけ見ると、違和感がありましたよね。

Fさん:
そうなんですよね、こちらは、「具合が悪いというわりに、主張だけは非常に強い」という印象で、あまりに頑なだと、「ちょっと待ってよ」と反論したくなってしまって。
あのとき、サキミさんからCさんの思いを詳しく聴いていなかったら、一方的に要望をつっぱねてしまったかもしれない。

訴えの背景にあるもの

サキミ:
Cさんも、ご自分の思いをどう伝えていいかわからなくなっていました。その上司の元で仕事をしてきた2年以上もの間、つらい思いを我慢してきていたんです。

Fさん:
いや、本当に知らなかったから、驚きました。2人きりの課で、怒鳴られることは日常的だっただけでなく、

・自分の対応が顧客に認められ結果が出るたびに、社内的には上司の仕事として評価されていること
・上司の存在により、この先ずっと自分は評価されないのではないかと不安が大きくなっていること
・そうした中でのあの夜の“行為”だったこと

ハラスメントはもちろんなんだけど、キャリアがつぶされちゃうっていう不安が大きかったんだろうなと、Cさんの異常なまでの鬼気迫る様子が腑に落ちました。

サキミ:
そもそも、あの“行為”はCさんからしたら一職業人として扱っていないという最たる表現だったということでした。

相互理解を深める面談

Fさん:
Cさんがサキミさんを通して思いを伝えてくれて、本当によかった。でも、もう一段勇気を出してもらって、直接話を聴きたいと思いました。それに、この話を聴くのは、ハラスメント窓口に限らないなと。

サキミ:
あのとき、Fさんはすぐに動いてくださいました。ハラスメント対応窓口としてFさんが、そしてキャリアの相談対応として、Cさんの所属部門の部門長が対応くださるよう調整して、「いつでも話を聴ける態勢で、体調が回復するのを待っている」とCさんに伝えてね、と。

Fさん:
Cさんが回復するまでの間、サキミさんに話を聴く際の留意点も相談して、準備は万全でした。

サキミ:
本当に万全でした。FさんのCさんを理解しようとなさる姿勢が私にも伝わってきて、これならCさんも安心してお話しできるだろうと、Cさんの精神面をサポートする担当カウンセラーとしても安心感を覚えました。

Fさん:
面談は、Cさんの意向でサキミさんも同席してくれたけれど、これは私たちとしても心強かったです。
ちょっとクールな印象の部門長も、あのときは頑張って温かい雰囲気を作ってましたよね。

サキミ:
おっしゃる通り、話しやすい穏やかな雰囲気でした。おかげで、Cさんも本音をお話しすることができていました。

Fさん:
部門長も若手が「自分はこうして、会社に貢献していきたいんだ」と語ってくれたことを本当に喜んでいました。だからこそ、本心から「Cさんが今後周りに認められるためにも、“客観的に過剰と思われる“処分を下すのは得策ではない」という言葉が出たと思います。

サキミ:
Cさんのことを思ってのお言葉だったことはCさんにちゃんと伝わって、視野が広がったご様子でしたね。
そして、Cさんのお話をもとに少人数体制の課題を解消するために、まずは2名増員し、ラインや評価体制を見直すなどの職場環境調整もすぐに実施してくださって、Cさんは感動なさっていました。

Fさん:
組織として必要なことだったからね。Cさんも、完全にわだかまりがなくなったわけではないだろうけれど、無事復帰して、これまで以上に精力的に働いてくれていて、本当によかった…。
でも、ハラスメント問題って複雑で奥が深いですね。次にうまく対応できる自信が全然ないです。

サキミ:
ええ、そうですか?面談の設定などの今回のご対応は、すべてFさん方が主導してくださったんですよ。
普段通り、社員を理解しようとする姿勢を持ち続けてくださったことで、自然と適切にご判断なさっていたのではないでしょうか。

Fさん:
確かに。問題に対処しようとするより、互いの理解を深めようとすると、よりよい解決策が自然に見えてくるような気がします。そうですね、うちの良さですね。


Fさんが気づき始めた組織の良さ、サキミは今回の件でさらに確信を深めました。
Fさんたちがこの良さを活かして、組織をより素晴らしいものにしていくことを引き続きサポートしてまいります!


■サキミのプロフィール
ビジョン・クラフティング研究所 シニアコンサルタント
臨床心理士・公認心理師・1級キャリコンサルティング技能士

サキミ2月


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