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【スタートアップ向け】自社プロダクト・サービスを軌道に乗せるブランディングの考え方

筆者:鄭

プロダクトやサービスをローンチしたのに何故か軌道に乗らない。競合他社は選ばれているのに、何故自社は選ばれていないのか。と悩んでいるスタートアップは多いのではないだろうか。

パブリシティが少ないからだ、適切な広告チャネルを選んでいないからだ、という声も多く、それらが原因だと仮定した上での相談もとても多い。パブリシティや広告チャネルの問題は、言い換えると認知度と集客数に課題があるとも言い換えられる。確かにパブリシティや広告戦略は認知度と顧客獲得には重要な戦略だが、「根本的なこと」が欠けていると一過性のものに終わり、持続性がない単発的な施策となる場合が多い。

ここで言う「根本的なこと」とは何か。それは、商品・サービスのブランディングであり、ブランディングは商品・サービスが選ばれる確率を上げる、というのが筆者の考えだ。

パブリシティは商品・サービスの認知度を高めることに役立つかもしれないが、その商品・サービスが実際消費者に選ばれるかは別の話だ。

以上を踏まえて、今回はスタートアップ向けのブランディングの基本を解説する。

一方でここで強調したいのだが、市場規模が小さいマーケットのプロダクトやサービスは広告の費用対効果やパブリシティが非常に得られにくい。また、市場規模が小さいことはニーズの少なさとも相関性があるため、”自社のプロダクト・サービスが狙っている市場規模はどれくらいか、どれくらいのシェアなら狙えそうか、そこに果たしてビジネスが成立するほどのニーズはあるのか”という見直しは非常に重要である。それらはブランディング以前に企業が真摯に向き合わないといけない事案であり、それらの問いに関して自信をもって回答できない間はブランディングに着手すべきではなく、プロダクトとサービスの見直しが必要なのではないだろうか。(※ローンチした手前引き返せないというケースも多いため、一筋縄では行かないだろうが…)

ブランドとは何か

ブランドは”識別記号”と”知覚価値”の2つに分けることが出来る。

識別記号:ロゴ、商品の色、形など
知覚価値:商品・サービスのカテゴリー、便益、エビデンス、開発ストーリー、使用感など

Nintendo Switchに当てはめて考えてみよう

識別記号:コントローラーの形、黒・赤・青のコンビネーション、小型スクリーンに角がないコントローラーが左右についている
知覚価値:ゲーム機器、室内でも外出先でも、一人でも友達とも遊べる、楽しい、老舗ゲーム会社による幅広いターゲットに向けて開発

強いブランドはこの識別記号が幅広く認識されており、その記号から知覚価値が想起されるように創意工夫が施されている。

貴社のロゴ、商品の色や形、ウェブサイトはどのようにデザインされているだろうか。それぞれに一貫性はあるだろうか。走り出しのスタートアップにおいてはこの識別記号のコントロール・調整がとても重要になる。どれだけ優れた知覚価値があろうとも、まず手に取って貰わない限りその価値は伝わらない。一方で、クリエイティブ面でのブランディングが昨今焦点を当てられがちだが、識別記号はブランドの一部であり、それだけではブランディングは出来ないというのが筆者の考えだ。

クリエイティブだけではブランディングはできない。重要な顧客体験の積み重ね

あなたは好きだったレストラン、ディーラー、小売店で嫌な思いをしたことはないだろうか。店舗でなくてもいい。例えば今までAmazonで購入していた商品がある日液漏れをしていた、返品交換依頼をしようと思ったが返信が遅かった、という経験はないだろうか。その時、もしかしたらAmazonの使い勝手に不満を覚えるかもしれないし、セラーのタイムリーではない対応に不満を抱えるかもしれない。例え第一印象のロゴやサイト、商品のデザインがよくても、こういった顧客体験はブランドの印象を毀損する。そしてそのブランドの選択率は下がる。

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前述の通り、ブランドは識別記号と知覚価値の組み合わせだ。この組み合わせが提供するのは商品・サービスの利用前・利用時の顧客体験であり、この顧客体験が顧客の中でのブランドの存在感を増大してくれる。しかし、以下のようなケースに陥っているスタートアップは多い。

・シンプルで現代的かつ高級感がある商品、ロゴ
・値引き、低価格で勝負する広告、接客
・導線がまばらなサイト

これらの何が問題なのか?それはそれぞれの体験に一貫性がないということだ。商品やロゴは高級感があるのに、広告や接客は低価格推し、シンプルなデザインの商品に反してサイトのUI/UXが複雑では顧客体験に一貫性がない。

自社は一体何が売りなのか、どういったブランドなのか、誰がターゲットで、何に着目して欲しいのかが整理されておらず、それらをベースに顧客体験の一貫性構築をしていないとこのようなことが起きる。そして、これらの陥穽にスタートアップのみならず多くの会社が陥っているように見える。

では一体どのようにブランディングをすればいいか

では一体どのようにブランディングをすればいいのかを大まかに3つのレイヤーに分けて解説する。

・識別記号
・知覚価値
・ブランドとの接点

※これらは重複している部分もあるが、分かりやすく3つに分けることにした

①識別記号

ブランドのロゴ
商品のデザイン
サイトデザイン

など、これらに一貫性はあるだろうか。そもそもどういったターゲットを想定し、そのデザインに仕上がったのだろうか。まずはそこの検証からはじめることをオススメする。ターゲットの嗜好に合っていないデザインやロゴや商品のデザインに一貫性・統一性はあっても、サイトのデザインが伴っていないケースもある。それらを今一度見直すことには十分に意味があるというのが筆者の意見だ。

②知覚価値

商品・サービスのカテゴリー
便益
差別化されたエビデンス
開発ストーリー
使用感など

が知覚価値にあたると説明した。ここで重要なのは、”そのブランドは何を武器にし、競合他社・業界で戦っていくのか”ということだ。スタートアップ企業は各フェーズによって抱えている課題が違う。メインプロダクト・サービスローンチ時は、自社の強みや武器を言語化・把握していたかもしれないが、トレンドの波に押され、次々にプロダクト・サービスを追加ローンチしていく間に、”自社の強みは何なのか”という原点を失念しているケースも見受けられる。もしくは、業界で戦ううちに、胸を張って”自社の強みはこれだ”と言えるほどの自信が喪失されているケースだ。

まずは自社は何を武器にしているのか、そしてそのエビデンスは何なのかを整理することをオススメする。しかし、ここで陥穽がある。企業が自分達の武器、強み、そして差別化要因と認識・自負しているものが、ターゲットから見るとそうでない場合があるということだ。

iPhoneと敗北してきたスマホ達

ここでiPhoneと同時期に参入してはシェアを獲得できなかったスマホの話をする。このような話はとても多いため、シェアを獲得できなかったスマホの機種に関しては出さないでおくが、以下の話は多くの方が耳にしたことがあるのではないだろうか。

今はそれこそ1,200万画素を誇るiPhoneだが、同業他社から見るとカメラの画質はそれほど高いわけではない。5年ほど前に2,000万画素を叩き出すスマホの機種はあった。それこそ4K・HDRのディスプレイや光学式手ブレ補正付きなど、スペックもiPhoneよりいいものがあった。しかし悉くiPhoneに破れていったのだ。

Instagramや今はなくなったvineが人気で、カメラの性能が差別化要因であると判断するのは決しておかしくないように見えた。デザインは好き好みもあるが、決して見劣りするデザインではなく、何ならより近代的なデザインのものもあった。

競合他社はiPhoneが選ばれている理由として掲げていた、スペック・デザイン・カメラの画質などを潰しにかかったが、結局iPhoneの人気は今も健在だ。もちろんこれにはiPhoneからの機種変更による弊害や、使用できるアプリの数といった要因もあるのだが、ここで重要なのは、”差別化要因となると思ったもの”が差別化要因にならなかった、自分達の武器ではなかったという点だ。

便益や使用感も同じような陥穽がある。以下は実際10年以上前にあった話だ。

アウトドアや避難時用に水で洗い流す必要がない泡石鹸というものが開発された。水がなくても手を清潔に保てるという便益と特定の使用用途を想定した中での差別化だったのだが、そもそもキャンプ場でもBBQエリアでも水へのアクセスがあるため、”水を使う必要がない”という便益にモニターが何一つ魅力を感じなかった。災害時などの緊急事態下でも、ウェットティッシュなどで代替可能であること、そちらの方が使用感がいいことが上げられ、この商品は結局開発段階で発売中止になった。

※ちなみに筆者の親戚の会社で実際に起きた話である。

このケースは冒頭で話した需要を反映していない商品だったため発売中止になったが、似たケースは非常に多く、消費者感覚でその便益・エビデンス・差別要素は魅力的かを企業は真摯に向き合わねばいけない。

③ブランドとの接点

ここまでくると、ではどうやって差別化するのだという悩む方も多いかもしれない。実際、今はプロダクト単体で差別化するのが困難になってきている。だからこそ、ブランドとの接点を把握し、そこでの顧客体験に着目することが重要になる。

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顧客のブランド接点はいわゆる”カスタマージャーニー”に基づいて各フェーズに着目するといい。通常は上の画像の通りになる。

その広告、集客イベントはどのような印象を顧客に与えるだろうか。顧客が関心を持ち購入を検討する際に十分な情報はあるだろうか。問い合わせにはどのように対応しているだろうか。購入の際の営業のやり取り、その後のフォローアップやサービスデリバリーはどうだろうか。

そして一番重要なのは、認知から購入後までの顧客体験に一貫性があるということだ。例えば、近代的なデザイン、斬新な広告を打ち出した後に問い合わせ対応がスローだったり、担当の営業の対応がデザインからイメージしていた印象と違った場合、顧客の期待と企業が提供する顧客体験に”乖離”が生まれる。この乖離がブランドイメージの毀損、そして他社が選ばれる理由になる。

しかし言い換えれば、各フェーズの顧客体験を設定・見直しを行い、一貫性を持たせることでブランドは構築され、エンドユーザーから選ばれる理由になる。

まとめ

・そもそもブランドとは何か
・どのようにブランディングをするといいのか

を説明した。ブランドは識別記号と知覚価値、顧客体験の積み重ねであり、それらに一貫性を持たせることがブランディングである。しかし、それぞれの見直しや設定は容易なことではなく、時にはユーザーインタビューなどが必要な場合もある。専門家による意見なども聞きたい場合もきっとあるだろう。

その際は是非弊社サイトのお問い合わせフォームから、”ブランドの見直しをしたい”とご連絡いただければ幸いだ。


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