見出し画像

the band apart

誰にだって、人生の転機というものは何度か訪れるだろう。
わたしも例外ではなく、幾度とあった転機のうち、強烈に印象に残っているのがこの「the band apart」というバンドだ。

彼らを知ったのは21歳の初夏。
近い将来、夫となる男との初デートのドライブで、彼がBGMに選んだのがバンアパの曲たちだった。
すごく、いいな。選曲がいいな。「この人、いいな」。
チョイスする音楽だけで、女の心は動くのだ。

当時のわたしはジャミロクワイをはじめ、テクノ・ジャズ系が大好きだったが、同時にミクスチャーロック、今でいうプログレ系も好み、さらに言えば、BUMP OF CHICKENなどの邦ロックも好きなものは好きだった。

逆に夫は、一番好んだのがパンクロック。ピザオブデスに所属するアーティスト等、コテコテのパンクを愛し、ライブハウスに通ってはダイブをしてボロボロになって音を全身で楽しんでいたらしい。


そんなわたし達の、「好きな音楽」という円と円を近付けて行った時に、重なってラグビーボールのようになった部分に属したのがバンアパだった。
ロックだけど、なんかちょっとミクスチャーやジャズの要素も入っていないか。
あんなにお洒落で、美しい声で、トリッキーな音の重ね方をするバンドのメンバーが、一人を除いてわりとイカついおじさんなのには、今でも驚かされる。

夫と付き合ってから現在に至るまでの16年間、どれほどの回数、ライブハウスやフェスに足を運んだかわからない。
その中で、何度バンアパのステージを見て、奏でる音を聴いたかもわからない。

コロナ禍になってからも、わたしは足繁くライブに通い続けた。
夫は仕事の関係で難しい時も多くなった。わたしはフリーなので行動制限はなかった。だから、好きなアーティストのライブには躊躇なく参加した。
音楽を失ったら、生きていけないと本気で思う。



わたし達の夫婦関係は、時を重ねるごとに変化していった。
ロックっぽく言うと「リレーションシップ・アナーキー」直訳すると、「関係性の無秩序」である。

法律婚をしているけれど、法律に縛られない関係。お互い、自由。
どちらからともなく、そうなっていった。知り合った当初から、「ロックとパンクが大好き!」な者同士。マジョリティっぽい価値観にとらわれないことは明白だ。

この関係、令和的でとても気に入っているし、理解してくれる人も増えてきた。
雑誌の取材を受け、TVで特集を組まれるほどになった。



そんなある日、取材の過程で出会った青年がいる。彼も音楽が大好きで、プレイヤーでもある。ドラマーだ。

結論から言ってしまうと、「マッチングアプリにハマる若者たち」という、なんとも下世話な特集のルポだった。
なぜ、とうの昔に若者を駆け抜けたわたしが抜擢されたのかはいまだに謎だが、良い出会いがどこに転がっているかはわからない。

BIOにどんな写真を載せたらいいのかもわからないわたしは、とあるジャズバーでバンドマン(紅白にも出ているすごい人!)と友人と3人で撮った写真を載せた。もちろん、自分以外の顔は隠して。
いい歳して、自撮りを載せるのが恥ずかしかった。

そんなわたしのBIOを見て、連絡をくれたのがそのドラマーの青年だった。


自己紹介文に目を通す。「音楽が大好きで、楽器も色々弾きます。特に好きなのは、東京事変、YOASOBI、ポルカドット、髭男……バンアパ、アスパラガス」

!!?

最初の方だけなら、「はあ、そうなんだ。へえ……」で終わっていたと思う。
顔が特別タイプでもなかったので、音楽が好き!と言うわりに、ニワカだったら、冷めるわーと思いながら読んでいたら、まさかの。
わたしよりも7つ年下で、このセンスは、良いんじゃないの!?と思い、返信することにした。

好きなバンドのチョイスだけで、女の心は、動くのだ。


こちらは取材なので、翌日に会えなければごめんなさい!って感じで強引に予定を提示したら、合わせてくれた。会って話していたら、

「BIO写真の背景に、ウッドベースが写っているのを見て、お!って思ったの。コアな箱で音楽聴いてる人?みたいな」
「わたしも、好きなバンドに事変、バンアパ、アスパラってのを見て、お!って思った。ニワカじゃなさそうって」
「なにそれ!でもそうだよね、あんな写真、他に載せてる人いないもん」
「そうそう。その歳で、バンアパ、アスパラ好きって言える人はなかなかいないよ。ちなみに、わたしの世代だと事変より椎名林檎さん」
「そうなんだ!俺の時はもう、事変が流行ってたなあ……」

そんな会話をしたことを覚えている。
取材でサラッと話を聞くだけのつもりが、気付けばもう長い付き合いになった。
今となっては、「いなくなったら寂しくて耐えられないのでは?」と思うほど、大切な友人のひとり。

なので、わたしにとって、バンアパは人生の転機を二度も与えてくれている。
こんなことってある??



ドラマーの青年は、音楽は好きだけどなぜかライブに行くことはなく、高校の頃に出会って、
「なんじゃこりゃ!?カッコよすぎる!!」
と思ったバンアパのライブも未経験と言う。

高校の時点でドラム歴5〜6年、基礎はやり尽くしてそれなりに演奏もできるようになり、もういいかな……と思っていた頃の出会いだったらしい。

確かに、彼らのトリッキーな演奏のアンサンブルは、難易度は高そうだが、
「基礎はできているから、ステップアップしたい!」
と、少年に思わせるのに相応しかったのかもしれない。



それから15年、ドラマーの青年はわたしの後押しでバンアパのワンマンに行くこととなった。
ちなみに、わたしもワンマンで彼らを見るのは初めてだった。

それが、2022年、7月15日の豊洲PIT。


青年は、初めて見る憧れのバンドマンの生演奏に、ガチで泣いていた。

今まで、バンプやゲスの、いわゆる「狂信的な女性ファン」が、号泣している姿を見たことはある。何度もある。
そしてぶっちゃけ、わたし自身もバンプの紅白初出場のCDJや、ゲス・indigoの活動再開一発目では、少しだけ泣いた。

が、40代のバンドの演奏を見て、30代の男性が号泣している姿は初めて見た。
異様だったけど、それほどまでに募らせた想いがあるのだな……と感じ、
「よかったねえ……」
と、背中を撫でた。

「ほんとうに、良かった……ずっとずっと、何度もライブ映像を見ていた人たちが、目の前で演奏してた。なんか凄すぎて、もう……」



わたしとしては、「そんなに好きなのに、なぜライブに行かない?」素で疑問だが、認識は人それぞれ。
プロの音楽は、直ではなく、電子機器を通じて聴くものだと、思い込んでいる人もいるってことか。。

でもそれは、とても勿体無いことだと思うので、この文章を読んでくれた音楽好きの人がいるならば、ぜひ、ライブに足を運んでほしい。
きっと、人生が変わる。本気で好きならば。



そんなわけで、会場でPRしていた、バンアパがタイトル・主題歌に起用されたという、「さよなら、バンドアパート」という映画も見に行くことにした。
チケットの予約も完了!

ひとりで行こうかと思ったが、青年に声をかけたら行きたいと言うので、二人分のチケットを取った。非常に、楽しみでありますっ!!!


あと、会場にいた人しかわからない話題ですが、ウクライナの家の修繕をしている団体がいるというので、ちゃっかり寄付もしてきた。

荒井さんがMCでもおっしゃっていたけど、ほんとうに、寄付する団体によってお金の使われ方が違うので、細かい部分で援助したい!という方は、どの団体がどんなことに寄付金を使っているのか、調べてからするのも良いと思います。


ではでは、最後まで読んでくれた方がいらっしゃれば、ありがとうございます!!
文章めちゃくちゃですみません。どうしても、書き残しておきたかったの。




この記事が参加している募集

まだまだ物書きとして未熟者ですが、サポートいただけたらとても嬉しく、励みになります。