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いやもう、バラバラだけど許して

生まれも育ちも兵庫県だが、ここは日本一変わった県だと思っている。
なぜって? バラバラでまとまりがないからだ。
その証拠に、県公式の「兵庫五国連邦プロジェクト」というのがあるほど。

五国というのは、兵庫県が旧国の摂津・播磨・但馬・丹波・淡路の五ヵ国からなることに由来する。
旧国の境は、山や川が立ちはだかって交流が途絶えていた場所が多い。
たとえば四国は旧国で四ヵ国だから四国なのだが、急峻な山に引かれた旧国境は動かす必要もなく、そのまま今の四県になった。
兵庫県を構成する五国もそもそもバラバラで、今なおバラバラだ。
折しも県知事選が近いが、ある候補が公約として五国の対立をできるだけ生まないようにと掲げているほど。

兵庫県が五国もの寄せ集めなのは、明治時代の国策にその理由がある。
幕末に兵庫津(神戸港)が開港するが、当時の神戸はまだ小さな寒村で、兵庫県もその周辺だけだった。
しかし生糸や茶を輸出して外貨を得たかった明治政府は、神戸港を発展させるために、豊かだった播磨や但馬を兵庫県に組み込んで、その税収を神戸港につぎ込んだのだ。
その後、淡路や丹波も編入され、五国からなる大県が成立した。
本州で海に挟まれているのは、両端の山口、青森以外には兵庫しかない。

そらぁバラバラになるって。
播磨や但馬の人たちからしたら、自分たちの大切な税がことごとく神戸港に使われるなんて許せなかったに違いない。
かくして五国はバラバラのまま歩んだ。

こんな話がある。
JRが発足し、大阪~神戸~姫路の路線愛称が「JR神戸線」と名づけられた。
これに対し、なぜJR姫路線ではないのだと播磨(姫路)が反発した。
雄藩・姫路から見れば、神戸なんてまだまだ赤ん坊みたいなものなのだ。

そしてその神戸、なんと市内に摂津と播磨の国境がある。
高校まで住んでいた塩屋は播磨だが、通った長田高校は摂津で、同じ神戸市内なのに言葉が微妙に違う。
たとえば「べっちょない(問題ない)」「じょうさん(たくさん)」「ごうわく(腹立つ)」は摂津の民には通じないことが多かった。
一つの市が旧国の境をまたいでいる例って他にあるんだろうか。

そしてさらに付け加えるなら、さんざんここまで兵庫は五国と説明してきたが、実は五国ではなく七国だ。
ほぼ現在の兵庫県が固まったあと、美作と備前の一部が編入されたのだ。

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七国が一県に。
いやもう、バラバラだけど許して。

(2021/6/14記)

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へんいち
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