もちっとハード、これぞベーグル
娘がキッチンでなにやらゴニョゴニョやっている。
「紅茶ない? アールグレイがいいねんけど」
そのカンカンの中にあるやろ?
「はぁい! あったあった!」
アールグレイの人工的に着けたあの香りがあまり好みではなく、いただきものの紅茶セットもアールグレイが残りがち。
そんなアールグレイをわざわざご指名で、何するん?
僕は仕事のPCに向かいながら、視界の隅っこで娘を追う。
タイマーをピッピッ鳴らしつつ、狭いキッチンを忙しなく動き回る。
いったい何ができあがるのだ?
*
ベーグルだった。
紅茶のベーグル。
なるほど、混ぜ込んで焼くから茶葉に強い香りが必要だったのか。
わぁ、おいしそう!とかみさんがアボカドや生ハム、ワインを用意する。
このところ茶褐色の秋定食を作り続けた僕は、内心ちょっとホッとする。
いくら和食好きの渋い次男がいるとはいえ、毎日ダシでは飽きるよな。
にしても、作ればパスタ、ローストビーフにワインを合わせてばかりだった僕も、気づけばうどん、刺身に日本酒を。
これはなにかい? 枯れたってことかい?
切り込み入れてオリーブオイル垂らし、アボカド、チーズ、生ハムを挟む。
もちっとハード、これぞベーグル。
うまかった…
次男はなんか幼虫みたいといい、僕はいやいやアンモナイトやろといい。
娘よ、ごめん。
ごちそうさま。
(2024/9/11記)
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