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もちっとハード、これぞベーグル

娘がキッチンでなにやらゴニョゴニョやっている。
「紅茶ない? アールグレイがいいねんけど」
そのカンカンの中にあるやろ?

「カンカン」が変換できないことにまず驚いた。
そして「カンカン」が全国の言葉でないと知って二度驚く。
とはいえ「缶々」と書くのが適当とも思えず「カンカン」でいっか。

「はぁい! あったあった!」

アールグレイの人工的に着けたあの香りがあまり好みではなく、いただきものの紅茶セットもアールグレイが残りがち。
そんなアールグレイをわざわざご指名で、何するん?

僕は仕事のPCに向かいながら、視界の隅っこで娘を追う。
タイマーをピッピッ鳴らしつつ、狭いキッチンを忙しなく動き回る。
いったい何ができあがるのだ?

ベーグルだった。

紅茶のベーグル。
なるほど、混ぜ込んで焼くから茶葉に強い香りが必要だったのか。

わぁ、おいしそう!とかみさんがアボカドや生ハム、ワインを用意する。
このところ茶褐色の秋定食を作り続けた僕は、内心ちょっとホッとする。
いくら和食好きの渋い次男がいるとはいえ、毎日ダシでは飽きるよな。

にしても、作ればパスタ、ローストビーフにワインを合わせてばかりだった僕も、気づけばうどん、刺身に日本酒を。
これはなにかい? 枯れたってことかい?

切り込み入れてオリーブオイル垂らし、アボカド、チーズ、生ハムを挟む。
もちっとハード、これぞベーグル。

うまかった…

次男はなんか幼虫みたいといい、僕はいやいやアンモナイトやろといい。
娘よ、ごめん。

ごちそうさま。

(2024/9/11記)

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