また久しぶりに店頭に立ってみたくなった
前職で愛媛の村おこしを手伝ったというのはこのnoteでも何度か書いた。
ご当地のお茶と、そのお茶を加工して作った抹茶大福がその主力商品。
発売時には鳴かず飛ばずだったその大福が、数年の後に破竹の進撃を見せ、通販では100倍を超す抽選でないと買えなくなる。
全国の百貨店に出かけての販売では、用意した100箱は数分で完売した。
そこに至るまでの話はまた稿を改めよう。
山村での20年は、そう簡単には書きあらわせない。
***
その仕事を離れて2年が経つが、久々に百貨店の店頭に立つ夢を見た。
夢なのに開店前は武者震い。
実際、開店前にはいつも心臓が高鳴っていたのを、まるで昨日のことのように思い出す。
ついに開店し、怒濤の開店ダッシュがこちらをめがけてやってくる。
あぁ、そういえばこんなだった。
久しぶりにアドレナリンが身体中を駆け巡る。
「さぁ、いらっしゃ…
ダッシュのすべての足が、手前の店で止まる。
我先にと皆が手に取るのが、その店の看板商品・塩大福。
商品が消えていく勢いはまさに暴動か、はたまた掠奪か。
でもなぜ? 抹茶大福はもう見向きもされなくなった?
そう思って自分のショーケースを見ると、置いてあるのは干物や佃煮。
え? なんで海のもの? 抹茶大福は?
新人の担当が答える。
――最近、百貨店には大福持ってきてないんです。
なんやとぉ?
すでに引退した身、今日は単なるお手伝いと分かってはいたが、無関係な商品をすぐ引っ込めるよう指示したところで目が覚めた。
どっちが夢か現実か分からないほど輪郭のくっきりとした夢。
しばらくはふとんに座ったままボーッと頭のクールダウンを待った。
今このタイミングでこの夢を見る理由って何だ?
誰かが僕を呼んでいる?
多くのお客様との出逢いがあった百貨店の出張販売。
差入をいただいたり、意気投合して飲みに行ったり。
ありがたいことに、当時足繁く百貨店にお越しいただいた常連のお客様にも僕のこのnoteをお読みいただけている。
夢のおかげか、また久しぶりに店頭に立ってみたくなった。
(2022/4/23記)