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煮汁三段活用の話だったはずなのに

先日、手羽元煮を作ったと書いた。

そのときの煮汁はそのまま冷蔵庫に残していた。
数日前、思い立って半熟トロトロのゆで卵を作り、煮汁に漬け込んだ。
いわゆる煮卵というやつだ。

煮卵といえばなぜかラーメンが連想される。
卵に十分に味が染みた頃合いを見計らい、ラーメンを作ることに。
ラーメンはあまり好きでないけど、こういうことならぜひ。

ラーメンスープはこれまた煮卵を取り出したあとの煮汁を伸ばした。
手羽元、卵、ラーメンと煮汁三段活用。
むふふ。

エビチリはあっという間に作れるのにこの満足度の高さはなんだろう。
即席のエビチリソースも売られているが、そんな必要もないほど手軽だ。

エビは最寄りのスーパーが最近力を入れている店内冷凍食品。
肉魚の冷凍品は見慣れたものだが、丼、弁当など米飯類もそのまま冷凍になっていて時代の進化に唸らざるを得ない。
きっとCASフリーザーという最新の冷凍設備を導入したのだろう。

CASフリーザーとは、食品を微振動で小さく揺らしながら急速冷凍をかける、夢の冷凍機と謳われる什器だ。
揺らしながら冷凍すると、食品中の水分が凍りにくくなり、通常なら凍結するはずの氷点下になっても水分はまだ液体のまま。
十分に食品が冷えたところで、ガン!と大きな衝撃を加えると一瞬で水分が凍るという仕組みだ。

家庭でも製氷皿で氷を作る際、あとちょっとで凍るけどまだだなぁというときに、製氷皿ごと数センチの高さからドンと落として衝撃を加えると、一気に凍るのでどうぞお試しあれ。

食品内の水分は凍るときに体積が大きくなって周囲の細胞を破壊する。
これが解凍したときに出るドリップの正体、まずさの元凶だ。
となると周囲の細胞がガチガチに固まるまで、水分に凍結を待ってもらえればいいということになる。
それを実現したのがCASフリーザーなのだ。

以前、愛媛の村おこしをしていた頃、機能を聞けば聞くほど喉から手が出るほどほしくなったが、当時は会社が傾きかけないほどの高額だったこともあって断念した。

細胞を破壊しないから、レタスやトマトなどふつう冷凍できないとされているものでも冷凍可。
それを解凍したものは料理人でも冷凍野菜とは気づかないという。
豊作の年、値崩れを防ぐためにキャベツを畑に捨ててトラクターで踏み潰す映像を見たことないだろうか。
このCASフリーザーがあれば、豊作の年にはせっせと冷凍し、凶作の年に解凍して売ればいい。
食品廃棄を劇的に減らすことができるから、夢の冷凍機。

最寄りのスーパーがあらゆる食品を冷凍しはじめたのはそうした社会的時代的要請があるからだろう。
でもそんな背景や最新技術のことを知らないお年寄りは、店内の冷凍食品オンパレードに眉をひそめる。
こんなのまずいに決まっている、といったところだろう。

いやいや、いいから一回食べてみて。
エビチリのエビはプリプリのエビだった。

あれ? 煮汁三段活用の話だったはずなのに。

(2024/9/18記)

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