寝覚めが悪すぎる
嫌な夢を見た。
*
廃墟のような雑居ビルにいる。
3階くらいだろうか。
ガラスのない窓から下を見下ろすと、シャチのような形をした大きな車がゆっくりと進んでいる。
リムジンのような大袈裟な車に、さらに胸びれ、尾びれをつけ足したような改造車だ。
色もすっかりシャチ色に塗り上げられている。
同じ部屋に初老の男がいる。
ちらりとシャチ車を見やり、あの車が来たら頭を燃やされるとつぶやく。
男がシャチを下り、鉄の階段をトントン…と上がってくる。
初老の男はヘナヘナとその場にへたり込んだ。
入ってきた男は、出で立ちまでシャチだ。
果たして、シャチ男はライターに火をつけ、初老の男に近寄る。
いくつかの詰問のあと、ライターの火を初老男の頭に移し、丁寧に手で髪をかき混ぜて燃やし、カッパ男を誕生させた。
次は坊やとばかりシャチ男はこちらに向き直る。
僕も恐怖のあまり床にしゃがみ込んでいる。
手にはやはり火をつけたままのライター。
髪を燃やされるって熱いのだろうか…それとも痛いのだろうか…
男は僕に目線を合わせるように腰を下ろす。
観念した僕は、シャチ男にいろいろと近況を報告した。
できるだけにこやかに、楽しげに、さも友だちかのように。
シャチ男はカッパ男にしたように僕にも詰問したそうなそぶりを見せた。
それをさせたら最後、カッパ男2号が誕生すると確信した僕は、シャチ男に喋らせる隙を与えないよう、近況を報告し続けた。
シャチ男はついに立ち上がり、ライターの火を消し、立ち去った。
去り際、ちょっとお腹出てきてるで、と言い残して。
*
寝覚めが悪すぎる。
お腹出てきたことなんて言わんでえぇやん。
(2024/10/21記)
いいなと思ったら応援しよう!
チップなどいただけるとは思っていませんが、万一したくてたまらなくなった場合は遠慮なさらずぜひどうぞ!