またごいっしょできる日を心より楽しみにしている
気がついたら5,000字を超えている。
ぐるめぐるレポート、すさまじい。
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6回目となる〈ぐるめぐる神戸〉が終わった。
…終わった。
終わってしまった。
今の気持ちを文字にしろと言われたら、そう書くしかない。
自分で企画しておきながら、終わって受けるこのロス感はいったいなんだ?
ただもうとにかく、ボーッとしている。
修学旅行から帰った翌朝、目を覚ましたら周りに友達がいないあの淋しさと同じだ。
今回、まったくの初めましての方、オンラインではお会いしたことのある方、〈アテンド神戸〉でいっしょに神戸を歩いたことのある方、何度か〈ぐるめぐる神戸〉にご参加いただいたことのある方、6度の〈ぐるめぐる神戸〉皆勤賞の方、とおよそこれ以外の区分がないほどバラエティに富んだみなさんが集まった。
近隣の方もおられれば、四国、関東、さらに北の方からのお越しの方も。
こんなワールドワイドな嬉しさって他にあるだろうか。
と同時に、その期待にしっかり応えなければと身震いもした。
今回ご参加いただいたのはこちらの7名のみなさん(申込順)。
どこからどこまで参加するかは自由という、いたって緩いツアーのため、みなさんは思い思いにご自身の都合に合わせて参加された。
初日の最初だけ少しという方や、2日間にまたがるという方も。
といった前置きはそろそろさておき、2日間にわたるぐるめぐるのレポートを書いてみよう。
第6回 ぐるめぐる神戸 in 明石。
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第0部 神戸駅 旧貴賓室
今回のぐるめぐる計画中に、JR神戸駅の旧貴賓室がスタバになってオープンしたというニュースが舞い込んだ。
貴賓室とは天皇の休憩室。
もうずっと前から去就が気になっていた貴賓室が、内装を保存されたまま気軽に入れるように開放されたとあっては行かない手はない。
当初の予定は第1部・第2部だけだったぐるめぐるだけど、急遽第0部として貴賓室をねじ込んだ。
朝イチ、初めましてを交わすこの瞬間は、みなさんやはりぎこちない。
でもそれが夕方には、初めて会った気がしないと言い合ったりするのだから人生とは分からないものだ。
重厚感のあるシャンデリアも、大理石の暖炉も、寄せ木細工のような床板も腰板も、すべてが往時のまま。
神戸駅に貴賓室があった理由。
それは、今でこそ神戸の中心駅の座を三ノ宮駅に譲った神戸駅だが、かつて明治期には、世界の海に門戸を開いた日本を支える重要駅だったからだ。
神戸駅のホーム中心には、ここが東京駅から始まる東海道本線589.34kmの終点駅であることを示す距離標がある。
神戸駅は東海道本線の終点であり、山陽本線の起点でもあるのだ。
第1部 玉子焼に舌鼓!+街歩き
ここからご参加の方もおられるが、驚くほどすんなり輪に入られる。
たぶん、心はすでに貴賓室から参加されていたのだろう。
明石で玉子焼をハシゴ。
明石の玉子焼とはいわゆる明石焼きのことで、明治頃からの歴史があり、昭和になって始まった大阪のたこ焼きのルーツにもなった郷土の伝統食だ。
明石生まれの僕は、運動会でがんばったあとの祖母からのご褒美だった。
玉子焼には浮き粉(じん粉)と呼ばれる小麦デンプンが入っているため、たこ焼きのように硬くはならない。
しかしその割合、焼きあげる際の油の量、焦がし具合などは店次第。
その違いを食べ比べできるのがハシゴの醍醐味だ。
なにしろ明石市内には玉子焼専門店が70ほどもあるのだから。
玉子焼〈いづも〉
玉子焼〈こだま〉
玉子焼〈きむらや〉
2日で僕はいったいいくつの玉子焼を飲み込んだのだろう。
ざっと計算してみたら、50個弱くらい?
年の数にはギリギリ届かなかったが、節分豆ではないので大丈夫。
魚の棚(うおんたな)
400年の歴史を重ねた明石の台所〈魚の棚〉。
明確にひらがなで「の」が入っているのに、読み方は「ん」だ。
僕が小学生の頃、ここに毎年社会科見学にやって来たが、当時は道を自由にタコがウネウネと行き交っていた。
最近はそんな気概のあるタコがいないらしい。
氷に並べられた明石のタコを眺めながら、みんなでそぞろ歩き。
魚の棚のすぐ前の旧西国街道の路傍に立てられた道標には、「ひだり 大坂道」「みぎ ひめち(姫路)道」。
明石が大坂と姫路の中間にあることを示す。
「道」はその場では読めなかったが、Google先生に教わった。
明石城
城に近づいた頃、ご参加の一人に城は興味ありますかと訊いてみた。
ない、との返答にシュン。
播磨国の盟主は姫路のようにいわれる。
まぁ正しいし、あの立派な姫路城を見れば異論を挟む余地もない。
だがその常識に反旗を翻すかのような解説をしてから、みんなで登城した。
実際、縄張り(城の区域)は姫路城より明石城のほうがデカい。
結構な石段を登るうち、一人、また一人と遅れを取る方が出始め、まるで先頭集団と第2集団に分かれたマラソンの中継映像のようなことに。
でもそこはみんなで気遣いながら、なんとか本丸まで上がる。
ついに天守閣が建てられることはなかったが、用意された天守台には熊本城と同規模の5層天守が計画されていたという。
そこに上がって周囲を見ると、ちょっとした殿様気分。
また石段を下がりながら庶民の下界まで向かっていると、ここに大きな天守閣があったらなぁとか、ショボい城だとバカにしていたけど来てみたらすごかったとか、興味ないから一人では絶対来ないけど連れてこられたら案外楽しかったし興味出たとか、参加メンバーの感想が聞こえてくる。
心でガッツポーズを決めたのはもちろんナイショだ。
日本標準時・子午線
日本標準時の東経135度子午線が通る明石の町は「ときの町」と呼ばれる。
山陽電車で明石から1駅の人丸前駅に降り立ち、ホームを横断する子午線の撮影タイム。
日本の時刻を司っている線がこれだ。
駅のホーム上に、本来目に見えないはずの子午線がこんなふうに白線で示されていると、なんだかちょっと踏んではいけない気にもなる。
ここより20分早いはずの東京も、20分遅いはずの佐賀も、全部明石の時刻で生活していると思えばちょっぴり誇らしい気持ちにもなる。
明石海峡大橋
また山陽電車に乗車、東へ3駅の舞子公園駅で降りて橋の袂まで。
明石海峡に架かる橋だからこの名があるが、明石市ではなく神戸市にある。
初めて目にする参加者からは、うへぇの感嘆をいただいた。
東京のレインボーブリッジ(798m)は、この明石海峡大橋(3,911m)でいえば目の前にそびえる主塔の手前までの長さだ。
1日目はこの橋のあたりからカンカン照りとなり、首筋が痛んだ。
2日目はこの橋のあたりから暴風吹き荒れ小雨も舞い、半袖の方はガタガタと震えることに。
滝の茶屋
また山陽電車に乗り、東へ4駅の滝の茶屋駅ホームでまた海の撮影タイム。
眼下に段々畑のように並ぶJR急行線、JR緩行線、国道を見下ろす崖の駅。
ドラマで告白の場面に使われてもおかしくないほどの絶景だ。
万葉集・巻八「岩ばしる垂水の上のさわらびのもえいづる春になりにけるかも」はこの駅の名の元になった滝を詠ったものとされる。
なにせここは「垂水区・滝の茶屋」なのだから。
現地ではこの歌がまったく出てこず、全員に「さわらびの、ほら、ほにゃららの、水が垂れて、ほら」と説明したが、誰一人何を言っているか分からなかったはずだ。
塩屋
再び山陽電車で東へ1駅、塩屋に到着。
ここは僕が小4から大学入るまでを送った思い出の地だ。
心臓破りの坂で知られ、ものはためしとみなさんを案内してみた。
1日目チームは灼熱の太陽が照りつける中、どうせならと果敢にチャレンジ、てっぺんまで登りつめた。
2日目チームは小雨降る中、見るだけでいいです、と仰ぎ見て引き返す。
僕が暮らした当時はひなびた漁村以外の何ものでもなかった塩屋だが、今は駅前だけでなくあちこちに若い人が小さな店を開き、オシャレな町に。
そのうちの一つ、台湾カフェの〈Ryu Cafe〉へ行ってみた。
古民家を改装したカフェは、いたるところで時間が止まっていた。
浴室だったという白タイルの小さな空間が目に眩しい。
台湾出身のきれいなお姉さんが手ほどきしてくれる台湾茶は、歩き疲れたこの身体にこれ以上ない癒しだ。
豆花(トウファ)は、ジャスミンを感じるシロップに身を横たえた豆腐(という呼び名でよいのか?)、小豆、ハトムギ、パイナップルなど。
初の豆花、めっちゃうま…
すぐ近所の豆腐屋から豆乳を仕入れているらしいのだが、その豆腐屋こそ僕が小中学校の登下校で前を通ったとき、行ってらっしゃい!お帰り!と必ず声をかけてくれた豆腐屋なのだ。
そのおっちゃんがまだ元気に店を切り盛りしている姿を今回も見ることができて嬉しかった。
2日目は一転して、ジャスミンジンジャーエールを。
喉に心地よい刺激が来る本物のジンジャーエールだった。
2日目のスイーツは「麼麼咋咋(モーモーチャーチャー)」をチョイス。
ココナッツミルクのお汁粉ですとの説明通り、ココナッツミルクのお汁粉だった。
実はココナッツミルクが不得手なのに頼んでしまったが、好きになるくらいおいしかった。
僕のnoteには神戸名産である「いかなご釘煮」がたびたび登場するが、その発祥地である魚屋の跡に立つ碑がこれだ。
僕が明石から塩屋に引っ越して来たときに衝撃を受けた、町中に漂ういかなごを炊く香りはここが原点だったのかと感慨深かった。
このあとフォトジェニックな踏切と、フォトジェニックな塩屋の異人館街にも足を伸ばしたが、そこそこ降っていた雨と疲れでカメラをリュックから取り出す気力もなく、行った証拠は何も残っていない。
第2部 乾杯!
1日目の日本酒居酒屋は、帰宅してびっくり、これまた1枚も写真がない。
覚えているのはただただ次々と日本酒を注文したことばかり。
でも全国の地酒が集まっているとあって、いやぁ、美味美味。
連夜の参加の方もおられたので、2日目はワインに決め、noteでも発信している人気の店〈blank〉をチョイスした。
すると、ここのパンをずっと食べてみたかったという、ご参加の余さん。
なんという偶然。
やった!
土砂降りの中、膝下までずぶ濡れで向かった店は看板もなく迷いまくったが、なんとか見つけて入店。
なんでこんな女子受けする店知ってるんですか!と驚かれたが、僕も店内がこんなにかわいいとは知らなかった。
ワインにも詳しい余さんの説明を聞き、オレンジワインに挑戦。
オレンジのリキュールではない。
白ワイン用のブドウの皮と種を取り除かずに絞ったものだ。
(余さんの受け売り)
ワインは絶品、パンももうやっぱり絶品。
自家製のソーセージもオムレツも最高に美味。
(オムレツは一瞬明石焼きに見えかけたけど)
この店にしてよかった、ホントによかった。
僕は口にしなかったが、こんな芸術的なフレンチトーストまで。
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第0部から第2部まで10時間。
それだけいっしょにいれば、もう誰もが友達。
少しぎこちない初対面の挨拶から始まったって本当?
というか朝の挨拶がもう何日か前のことのように思える濃密なツアーだ。
初めて会ったとは思えない…をみんなが口々に言い出す夕方以降、僕は一人嬉しさを込み上がらせているのだが、まだそれは誰にも見つかっていないはずだ。
ある方はご当地の煎餅をお土産に持参いただき、またある方はご当地の煎餅をお土産に持参いただき、また僕は当地の煎餅をお土産に持参した。
第1回 煎餅大交換会となったのはやはり気のあう仲間だからだろうか。
そして僕は自分の個人事業のロゴバッジをみなさんにプレゼントした。
喜ばれるものかどうかは定かではないので、押しつけたというのが正解か。
長年使っている僕の商売ロゴだ。
KOBE is BEST であり、KOBE, KOBER, KOBEST なのですぞ!
みなさん受け取ったからにはカバンにつけて布教活動頼みます。
また予定が合えばぜひ参加したい、次はあそこに行きたいなぁなどの嬉しい言葉をいっぱいリュックに詰め込んで、僕はちょっとニヤつきながら家路についた。
またごいっしょできる日を心より楽しみにしている。
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ご参加いただいた方の記事
続々と参加レポートが上がってきているのでご紹介!(先着順)
(2024/6/23記)