見出し画像

えぇやん、娘と2人の歌会

先月、家の近所にカラオケ店がオープンした。
カラオケ好きとして気にならないわけがない。

父が真剣に歌手デビューを考えていたというほど歌がうまく、またその90%を譲り受けた兄もずば抜けてうまく、残りの10%しかもらえなかった僕はただ一人残念な歌だけれど、でも歌うのはすこぶる好きだ。
父の影響で演歌や懐メロも少しはいけるし、自分世代の曲はもちろんいけるし、学生と連日歌った若いのもいける。
歌う曲の90%が女性歌手の歌だ。

新卒で入った出版社は毎日、仕事帰りに決まったメンバーでカラオケ通い。
カラオケ部とでもいおうか、上は40代から最年少はピチピチの僕まで。
ガチの歌会で、アルコールなど飲んだらまともに歌えんようになるとかいって誰も飲まないし、かといってフードを頼んだかというとその記憶もない。
ただひたすら歌い倒すその会で、僕はかなり鍛えられた。

続く愛媛時代、招待された村長宅には立派なカラオケセットがあって、僕がそこで選んだのは「無錫旅情」だったり「天城越え」だったり。
奥田民夫の「愛のために」を皮肉を込めて敢えて歌い、「となりの席ではフケた男がさんざんからんで人生語る/どっかで聞いた事ある話だ」で村長からお前当てつけかと言われたり。

インターンの学生と出張先で連夜カラオケに通って歌ったのは当時最新だった「Everyday、カチューシャ」や「にんじゃりばんばん」だ。
21時まで百貨店で販売、遅い晩ごはんのあと朝までオールで歌い、ホテルにはシャワーだけ浴びに帰って、また朝8時から百貨店へという日々。
いったいいつ寝ていたんだろう…

自宅近くにカラオケ店ができて興奮しないわけがない。
これまでは電車で20分は移動しないと歌えなかったのだ。

おとといの晩、「行きたいなぁ」とつぶやいてみた。

するとすぐ反応したのが娘。
明日なら時間あるよ、という。
僕は出張に出る日だったが、出発までの3時間なら歌えそうだ。
本当は別の仕事をするつもりだったが、思いきって仕事は夜に回した。

娘とカラオケ3時間。
何も食べず、ソフトドリンクのドリンクバーだけつけて歌い倒す。
まるで出版社時代のカラオケ部だ。

えぇやん、娘と2人の歌会。
楽しい楽しい。

そろそろ最後の曲になるかなのタイミングで、娘がいっしょに歌おう?と入れてくれたのはYUIの「CHE.R.RY」。
いいねぇ、懐かしい!と2人で熱唱したところで、あと10分ですのコール。
ほなこれがホンマの最後やなと、アンジェラ・アキの「手紙~拝啓 十五の君へ〜」を入れ、大合唱して終了。

来年就職して再び家を出ていく娘。
2人での歌会は、これが最初で最後になるかもしれない。

(2024/9/12記)

サポートなどいただけるとは思っていませんが、万一したくてたまらなくなった場合は遠慮なさらずぜひどうぞ!