まるで「だるまさんが転んだ」のように
時計のチクタク音があまり好きではない。
時計といえばもちろんチクタクだし、叙情的に「百年休まずにチクタクチクタク」で「おじいさんといっしょにチクタクチクタク」なのも知っている。
けれど、あのチクタク音で時を計っている人はいないだろう。
ふだん音が気にならない時計でも、眠れない日にはまるで世の中にその音しかないくらいの勢いで聞こえてくるのはなぜだ。
いったん気になりだしたら、どんどん音が大きく聞こえてくるのはなぜ。
「無音秒針タイプ」などといって音がしないことをアピールする時計があるくらい、音が気になる人はいっぱいいるようだ。
逆に「時計っぽくするためにチクタク音がするデジタル時計作りました!」というのは聞いたことがなく、音がしないことを気にする人は少ない。
ネットでチクタク音が気になった場合の対処法に、秒針を引き抜きましょうと物騒なことが書いてあるが、たしかに秒針がなければ音はしないはず。
というより、そもそも秒針っている?
「何時?」「10時8分24秒です」「へ?」となるのは明らかだ。
ふだんの時間感覚では時・分まででよく、秒が必要なのは脈を測るときとインスタントラーメンをこだわりのアルデンテで仕上げるときくらい。
そんなときは逆に「10時8分」の部分は不要であり、タイマーで十分だ。
時計に秒針はなくていい。
さらにいえば、時針も分針も休んでいていいのでは。
見たときに正確に表示されていればその任は果たせているのだ。
誰も見ていないときに時を刻む必要性はどこにもなく、ウソの時刻を表示していてもいいし、サボって止まっていても誰も困らない。
昔の時計はゼンマイでもクォーツでも、秒の積み重ねで分と時を刻む必要があったが、現代はそんな積み重ねが不要な電波時計なるものがある。
そもそも針が回る仕組みもいらず、電波を受信して文字盤からニュゥッと針が浮き出るようにすれば一瞬で表示できるはず。
秒針がいらないうえ、時針も分針も止まっていていい。
誰かがチラリと見た瞬間に、ササッと正しい表示になればいいのだ。
まるで「だるまさんが転んだ」のように。
あ、関西では「ぼんさんが屁をこいた」か。
(2021/5/12記)