やらなかったことをうだうだ言ってる僕
娘が信州のリゾートバイトを終えて帰ってきた。
8月の丸ひと月、白馬にいたようだ。
一般にそう呼ぶから「リゾートバイト」と書いたが、山の木工教室でアシスタントを務める仕事をそう呼んでよいのかは分からない。
でも、観光地に住み込んで働けば全部リゾートバイトということで。
リゾートバイト。
僕が学生の頃はリゾバと呼んだものだが、今も生きている言葉だろうか。
全然リゾートでもない牧場でがっつり牛の世話をするというのも、住み込み繋がりかリゾバと呼んでいた。
農学部に友達がいたせいで牛の話題が身近だったこともあり、僕も北海道の牧場リゾバに憧れた時期はあった。
編集プロダクションのバイトが忙しくて、結局行けなかったけれど。
牧場で1か月を過ごした自分と、過ごしていない自分。
どう考えても前者のほうが一回りも二回りもおもしろい自分になっていたはずだ。
忙しさにかこつけなどせず、やっておけばよかった。
そんなものは他にもある。
京都に来る修学旅行生のアテンドバイトもそうだ。
おもに北海道の中高生が対象だが、旅行の数か月前に学校へ出向いてプランニングをアドバイス、旅行時はいっしょに回ってアテンドガイド。
とにかくやってみたくて、説明会にまで出席した。
ところが、理由は覚えていないが、実際にはやっていない。
なんとももったいない。
しかし、この後悔は「アテンド神戸」として十分いまに活かされている。
編集業としては京都の中近世が専門だったから、いまでは「アテンド京都」も十分に可能だ。
何ごとも、やるとやらないではやったほうがいいだろう。
ただ、実際にはやらなくても、修学旅行生のアテンドのように自分の中の思いが強ければ、むしろやって満足した人以上に後に役立つこともある。
牧場リゾバだって行かなかったからこそ、今もあちこちの関心事に首を突っ込み、何泊だろうがフットワーク軽く出かけていると考えられなくもない。
そう思えるなら、やらなかったことにも意味を見出せると思うのだ。
帰ってきた娘に晩ごはんは何を用意しようか考えた。
ワイン好きの娘にこってり系イタリアンもいいなと思いつつ、結局用意したのは魚介系和食だ。
秋鮭の包み焼き、タコの酢のもの、(見えないが)シジミの赤だし。
緊急支援でnoterさんから分けてもらった五分づき米。
海のない県でひと月を過ごした娘にはこれがいいと思って。
やらなかったことをうだうだ言ってる僕は、やって帰ってきた娘からいっぱい聞くことがありそうだ。
(2024/9/2記)