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歴史 「コーナー」で横板を押し曲げる

 前回の「横板を傾ける」話しの続き。
「初期ヴァイオリン」は、アウトラインが外に膨らんだ部分は強く、
中腹方向に弱くして、表板から裏板を押し曲げたい。
 
つまり、押し曲げたい中腹部分の横板を傾ければよいわけだ。
そして、その仕組みは現在のヴァイオリンに既に在る。
ひょうたん型のアウトラインに外に出っ張っている部分、
「コーナー」である。


「コーナー」に力を加えることで、
ひょうたん型を外に押し曲げ、横板を傾ける。
そして、さらに「コーナー」に力を加えやすいように
表板アウトラインは横板から外に張り出した部分を作り、
より積極的にコーナーを押し出すことを可能にしている。
これは「オーバーハング」と呼ばれている。



これらが「ヴィオラ・ダ・ガンバ」から大きく進化した部分である。
ガンバにもコーナーに近いものがあるが、
外に押し出すという意味においては別物である。
 
 

ひょうたん型のアウトラインに、4つの突起があること。
この不自然さに気が付いて欲しい。
 
もし私がこれまでの会社の開発設計という仕事の中で、
なんの意味もなくコーナーという明らかに壊れやすそうな
ものを付ける提案をしたならば、
周囲の人から「ありえないでしょ」と非難の嵐をうけるはず。
それが容易に想像できるから、私は理由を探した。
そして、やはり理由はあった。
 
 
この記事を書くことについて、
影響が大きいかもと思いためらっていた。
私にとっては、ある一線を超えた内容である。
しかし、昔からあった仕組みでもある上、
今後、楽器を見直すきっかけになってくれればと思い
紹介することにした。
 
バロック音楽が実際に演奏されていた頃のヴァイオリンは、
おそらく今よりも研ぎ澄まされた機能美があったと考えている。
ボディだけでなく、駒や指板といった部品も同様である。
時を経て、作りやすさ、利便性が優先されて
何か置き忘れていないだろうか。
 
ヴァイオリンの祖先は、戦いに疲れた兵士の心に残るような
良い音色をもっていたからこそ、現代にまで受け継がれている。
現在のヴァイオリンの音は、あなたが本当に弱っている時に
聴きたいと思える音だろうか。
 
今、こんな時代だからこそ、見直して欲しい。



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