[未亡人の十年] _001 とある未亡人が匿名で手記を書くという話。
はじめまして、ある未亡人です。
これが最初の投稿記事になります。
よろしくお願いします。
じゃっかん緊張しており、かたくもなっていますので、今回は自己紹介も兼ね、ですます調で書いてみます。
ある未亡人。
東京在住。
名前の通り、配偶者を亡くし、再婚してない身の上です。(ボツイチ)
亡くなった夫は2歳上で、死因は冬場の心筋梗塞。突然死でした。
そのとき、わたしはアラフォーの後半でした。
そして、十年が経ちました。
<ある未亡人>という名前は、大好きな英国の女性作家にちなんでいます。
ジェイン・オースティン。
初出版のとき、彼女は<ある婦人>という名義を使っていました。
当時(18−19世紀)の英国ではペンネームにせよ、男性名か匿名かの二択だったようです。
noteでは「未亡人の十年」というマガジンをつくってみました。
こちらは大好きなジョン・アーヴィングの小説にちなんでいます。
のっけからちなんでばかりで恐縮ですが、これから<未亡人エッセイ>なるものを綴っていきたいと思います。
ところで。
<未亡人>という名詞には、抵抗のあるかたもいらっしゃるかと思います。
「未亡人って、まだ夫の後を追って死んでない人って意味なんだってね!」
わたし自身、夫を亡くしてからというもの、何度も何度も言われてきました。
いわゆる<未亡人あるある>です。
言ってくださるのはほぼ男性で、「中国の言葉からきてるんだってね」というウンチクを交えながら、やや愉快そうに教えてくださるのが特徴です。
で、言われるたびに思ってました。
「冗談めかしていってるけれど、このかたはご自分の連れ合いに後を追ってほしいくらいのお気持ちなのだろうな」と。
「わたしがかなしんでいるのを見つつ、もしかして、ご自分の死後のようすを仮想体験なさってるのではないかしら」と。
脳内未亡人プレイ……?!
じゃっかんおののきつつも、自分の葬儀を見てみたいって願望はなんとなく共感できますし。
そのつど初めてのテイでウンチクをうかがいながら、連れ合いのかたへの愛情や願望など、こっそり妄想してました。
とはいえ。
なにぶんそういった由来をもつ言葉ですので、いまはグリーフケア領域だけでなく、一般的にも、<未亡人>という単語を用いるのを避ける傾向があります。100年後には消えてしまっている言葉なのかもしれませんね。
であると知りつつ、わたしはnoteでの自分を<ある未亡人>と名づけました。
実感として、「まだ自分は生きているんだな」と思うような苦しい場面が多かったせいもあります。
<ある未亡人>とくくることで、自分の悲嘆をすこしばかり浮いたところから、あらためてながめてみたいという気持ちもあります。
まあ、本音をいえば、事実を詳細なデータへと向かう矢印でキリキリと見つめつづける自分に、そろそろ飽きてきたってのが大きいです。
没後十年も経過しましたし、ここらで言の葉のお力を借りながら、心もようの抽象化など、してみたいなと希望しています。