『左川ちか全集』発売のお知らせ

拙編著『左川ちか全集』書肆侃侃房が発売されました。

戦前の北海道出身の詩人・左川ちか(1911~36年)の全集です。全集とはいっても1巻本。
詩篇、翻訳詩、散文・日記・書簡、翻訳文、年譜、解題、解説、ブックガイドの全416頁が本体2800円。
発売前、発売後とは反響の大きさに驚いております。

紀伊國屋書店新宿本店、紀伊國屋書店国分寺店、紀伊國屋書店浦和パルコ店、梅田蔦屋書店などでフェアをやっていただいていて、そちらでは私が書き下ろした短いエッセイ付きの特典ペーパーが付属します。

現在、Amazonの現代詩集売れ筋ランキングでも1位となりました。
さらにおかげさまで発売前にして重版が決定いたしました。そちらは5月11日出来です。

左川ちかについては昨年『北海道新聞』『東京新聞』『中日新聞』などで特集が掲載、先日(4月19日)の『北海道新聞』にも掲載されました。

日本の現代詩の先駆者として世界的に再評価が進みつつあるモダニズム詩人で、10代~20代前半にジェイムズ・ジョイスやヴァージニア・ウルフなどの翻訳家としても活躍しています。

今回は若い方々でもお求めしやすいよう、出版社の方にお願いし相当値を押さえてもらいました。しかしその分売れなければなりません。

書けば終わり、作れば終わりではなく皆様に本をお届けするまでが私たちの仕事だと思っています。

単純に素晴らしくカッコいい詩やかわらしい散文、書簡などが詰まってる本だと思うので、もし宜しければお手にとって頂ければ幸いです。

お近くの図書館での購入リクエストも大歓迎です!!

◆出版社HP
http://www.kankanbou.com/books/poetry/0517
版元ドットコム(こちらからAmazon、楽天など各オンラインショップに飛べます)
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784863855175
Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/4863855176

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
詩「昆虫」

昆虫が電流のやうな速度で繁殖した。
地殻の腫物をなめつくした。
美麗な衣裳を裏返して、都会の夜は女のやうに眠つた。
私はいま殻を乾す。
鱗のやうな皮膚は金属のやうに冷たいのである。
顔半面を塗りつぶしたこの秘密をたれもしつてはゐないのだ。
夜は、盗まれた表情を自由に廻転さす痣([あざ])のある女を有頂天にする。

詩「錆びたナイフ」

青白い夕ぐれが窓をよぢのぼる。
ランプが女の首のやうに空から釣り下がる。
どす黒い空気が部屋を充たす――一枚の毛布を拡げてゐる。
書物とインキと錆びたナイフは私から少しづつ生命を奪ひ去るように思はれる。
すべてのものが嘲笑してゐる時、
夜はすでに私の手の中にゐた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?