【映画レビュー】お姫様より魔女になりたかった『カラフルな魔女 角野栄子の物語が生まれる暮らし』
※本編の内容に触れています。未視聴の方はご注意ください
私は小さな頃、魔法使いや魔女の本ばかり読んでいて、ずっと魔女に憧れていました。角野栄子さんの『魔女の宅急便』も、その頃に読んだなかの一冊です。
本気で魔女志望だった幼少期をとうに過ぎて、生き方に悩み苦しんでいる今、何かメッセージが見つかりそうな気がするというインスピレーションで観に行ってきました。
朝から夕方まで「いちご色(角野さんのテーマカラー)」の素敵な家で執筆に集中し、一息ついたら鎌倉の美しい街や海を散歩するという暮らしは、あまりにも理想……! 今すぐこうなりたい……。
ファッションもいちご色がメイン(マスクまでピンクやマリメッコの花柄)で、真っ白なお肌とハイトーンの髪に映えてとてもお似合い。
書くことはもちろん、生活すること、人と交わること、すべてを明るく楽しんでいらっしゃる姿が本当に素敵でした。
印象的だったのは、メガネを買いに行くシーンです。
普段からピンクや青などカラフルなフレームのメガネを愛用している角野さんは、本を1冊書き上げる度に新しいメガネを買っているのだそう。
娘さんと表参道のおしゃれなお店へ赴いてメガネを試着するなか、一番派手だったのが千鳥格子のような模様のキャットアイグラスでした(フライヤーにも写っているもの)。
外側がピンク、中央がブルーのグラデーションになっていて、かけたら「ふざけているの?」と思われてしまいそうなくらい大胆なデザイン。
鏡の前で「やりすぎかしら」と聞く角野さんに、そうですね、さすがにそれは……と頷いていたら、娘さんが「(それ)いいよ。みんな笑顔になってくれるよ」と仰ったのです。
自由で柔軟な視点!
引き換え、自分はなんと小さく縮こまっているのだろうと思ってしまいました。「大人は大人らしくしないと」「仕事ができるように見えないと」などといった概念が先行して、いつも自分の気持ちを後回しにしていることに、意外と気づいていないものなのですね。
角野さんは、物語を書くときも「自分が心地よくあること」を大切にしているといいます。
Macに向かって文章を綴るだけでなく、リズムを確かめるように音読し、慎重に言葉を足し引きされているのが印象的でした。
そして「魔法とは?」という質問に対する角野さんの答えは「喜び」。
自分にとっての喜びを見つけたら、それを徹底的に追求することで、いつしか自分の魔法になる──
「書くこと」を自分の魔法にした角野さんの周りは、いつも素敵なものや人であふれていて、外へ行けば満開のお花に出会ったり、小さな動物が現れたりと、本当に物語のなかの魔女のよう。
自分が「喜び」と認識しているものは本当に喜びなのか、確信が持てなくなることもあるけれど、まだ魔法の練習を続けていていいだろうか……いや続けよう、と思わせてもらえた映画でした。