【大正の少女雑誌から】#6 続・乙女の恋歌
大正期の少女雑誌の投稿欄から、美しい恋歌の数々をピックアップした前回の続きです。
「エス」という言葉で広く知られるように、当時の女学生たちには、友達以上の想いを互いに向け合うことが多くありました。とはいえ、それは本当に淡く初々しい、ごくプラトニックなものだと思っていたのですが──
手ざわりという、肉体的な感覚を通して相手を思い出す。こんな、ドキッとするような官能的な歌が、実はいくつもあったのです。
こちらは3首とも、かの人のセンシュアルな部分に想いをはせている歌です。唇、香り、そして素肌に沿う衣(きぬ)──紅友禅というのは、長襦袢に使われる生地だそう。
前回並べた歌と比べると、まるで大人の女性のような成熟ぶりに驚いてしまいますが、確かに彼女たちは少女であっても子どもではなかったのだと、改めて気づかされます。
はじめはただ、そばにいられればそれでよかった。けれど、もっと知りたくなって、夢中で求め合ううちに傷つけ合っていた。そんな愛の終着点までたどり着いてしまった子も、なかにはいたのかもしれません。
そうでなくとも少女たちの関係は、おそらく少女時代の終わりとともに、自然と消えていったのでしょう。
一度なりと恋を経験した人ならば、「いっそ誰も好きにならず、恋を知らずにいられれば、そのほうがよほど幸せだった」と思ったことがあるのではないでしょうか。そう、妬んだり憎んだりする心も、きっと持たずにいられた。けれど、逃れることなどできなかった──
愛すること、傷つくこと。心が動くことは、すべて生きている証。
あの日々は美しかった、人生を豊かに輝かせてくれたと、心からそう思える日がいつか訪れることでしょう。
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