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葬儀でピアノ演奏。どんな曲を弾いている?

葬儀演奏歴20年のあずです。

お葬式でピアノ弾いてるって、どんな曲を弾いているの?
とよく質問されます。
結婚式やパーティーでの演奏はイメージしやすいと思います。
厳かな雰囲気のクラシック、華やかな洋楽やJ-pop、おしゃれなJazz、ボサノヴァ。会場に音楽で彩を加えています。
ですが、葬儀となると一体どんな曲を演奏しているのでしょうか。
私が葬儀社向けに葬儀音楽セミナーでお話している内容を簡単にまとめました。興味がありましたらご一読ください。


葬儀演奏のジャンル

童謡唱歌、演歌、歌謡曲、民謡、ポップス、アニメ、クラシック、ジャズ、洋楽、ヒーリング系などなど。幅広い音楽ジャンルです。

選曲の方法① 情報収集から。

葬儀の演奏家が曲を選ぶ際には、いくつかの情報が必要です。
故人の年齢、性別、好きな曲(リクエスト)はあるのかないのか。
最低この情報は葬儀社の方から事前に教えていただきます。
もちろん情報が多い方が曲を選びやすくなります。
例えば、

故人は90歳女性、好きな曲は「故郷」
昔、小学校で音楽の先生をしていた。
歌が上手で息を引き取る直前まで童謡唱歌を歌っていた。

こんな情報があれば曲は選びやすくなります。
お好きだった曲が「故郷」なので、これはもちろん演奏します。
90歳だった方が小学校の先生をしていたなら、「仰げば尊し」「蛍の光」を選びます。
童謡唱歌もいろいろな曲がありますね。「荒城の月」「朧月夜」「さくらさくら」「浜辺の歌」「夏は来ぬ」「赤とんぼ」「紅葉」「冬景色」などなど。
さらに、女性ということで「母さんの歌」もよさそうです。
季節も考えます。葬儀の日が夏なら冬の曲「冬景色」は弾かずに夏にちなんだ曲にする。春なら春の曲や桜の曲。秋なら秋の曲。ご遺族や会葬者に季節を感じていただくためです。
このようにして選曲してきます。

選曲の方法② 演奏曲は故人の年代で変わる。

最優先は故人の好きな曲です。
好きな曲(リクエスト)がある場合はその曲を優先的に弾く。好きな曲がない場合もありますし、20曲あるなんてこともあります。

亡くなる方はご高齢の方がほとんどです。そのためリクエストが多いジャンルは童謡唱歌、演歌、歌謡曲となっています。年代(60代〜70代)によっては、歌謡曲、洋楽、映画音楽、クラシック、ジャズ。
若い方の葬儀ではJ-pop、ボカロ曲、お子さんですとアニメの曲。年代によって選ぶ曲が変わります。故人ではなく、ご遺族の好みでリクエストされることもあります。

選曲の方法③ リクエストがないときにはどんな曲を弾く?

指定の曲も指定のジャンルもない場合は、故人の性別、年齢、ご遺族、会葬者の年代をみて選んでいきます。ただ、歌謡曲や演歌、ポップスは曲によって好き嫌いがあるので、情報が少ないときにはヒーリング系など、落ち着きがあり葬儀の雰囲気を壊さないような曲を演奏しています。

演奏家に選曲をすべて委ねられているときはこのように曲を選んでいますが、葬儀社や司会者の意向により演奏曲が指定されることがあります。
(例:ナレーションのときには私が話しやすいこの曲にして!by司会者)

リクエストが多い曲。「川の流れのように」がダントツ。

どんなリクエスト曲がくるのか具体的に曲を挙げていきますね。
故郷、赤とんぼ、川の流れのように、見上げてごらん夜の星を、人生いろいろ、我が人生に悔いなし、昴、千の風になって、涙そうそう、ハナミズキなど。やはりどんな年代でも知っているような名曲が多いですね。

こんなリクエスト曲もありました。

若くして亡くなる方もいます。故人が20代〜30代の葬儀では、マリーゴールド(あいみょん)、Into the Unknown(アナと雪の女王2)、Lemon(米津玄師)のリクエストをいただき演奏しました。
マリーゴールドは事故で亡くなった友人へ送る曲として。
Into the Unknownは「ママとアナと雪の女王2の映画を見に行ったんだよ!」とお母さんを亡くしたお子さんからのリクエストです。

「亡くなった母のためにみんなで母さんの歌を歌ってあげたいから伴奏をお願いします。」「おじいちゃんがいつも見ていた水戸黄門のテーマ曲、ああ人生に涙ありを弾いてほしい」「北島三郎のまつりが好きだったので演奏してほしい」
など、人それぞれ好きな曲があります。葬儀にふさわしくない曲だなぁと思われた方もいるかもしれません。
でも、故人の好きだった曲でしたら何でも演奏します。そこが葬儀演奏家にとっての腕の見せどころなんです。


選曲よりも大切なこと。

どんな曲を弾くのかよりもどう弾くのかが大切です。
演奏家の腕の見せどころとは、曲のアレンジ力ということなんです。

葬儀の一連の流れには様々な場面があります。告別式では、式が始まる前の会葬者を迎える場面、住職による読経、焼香、代表挨拶、弔電披露、故人との最後の対面(棺にお花を入れる)、出棺など。
場面によって曲のアレンジを変えて弾くのです。

極端な例として(実は実際にあることなんですが)、「川の流れのように」だけを演奏することになったとします。

楽譜通り式前から出棺まで同じように繰り返して演奏しました。

これでは葬儀の演奏家としてはまだまだです。理想としては、式前の演奏は会葬者が聴きやすいようにしっかりメロディを弾く。代表挨拶や弔電では、言葉を邪魔しないようにシンプルで控えめに。お花入れや出棺では、音に厚みを出して感動的にサビを盛り上げる。
このような方法でしたら、水戸黄門の曲もまつりも葬儀の雰囲気を壊すことなくメリハリのついた演奏になっていくのです。

音楽で心のサポート。

リクエストは故人とご遺族・お友達をつなぐ大切な曲です。しっかりと弾けるよう演奏家は曲についての勉強と練習を短時間で行わないといけません。場合によっては、当日その場で初見演奏なんてこともあります。

大変な仕事ですが、「ありがとう」「故人も喜んでいると思います」「いい葬儀になりました」「音楽で包み込んでもらいました」こんな言葉をかけていただくこともあるので、演奏する側も「大切な式で演奏させていただきありがとうございます。」と感謝の気持ちでいっぱいになります。

残された遺族に私ができること。音楽で心の浄化。
これがグリーフケア(悲嘆のケア)というものにつながっていくのです。

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あず
障害を持ったお子さんや介護施設で暮らす高齢者の方々への音楽提供活動費に使わせていただきます。たくさんの方の笑顔のために。お気持ちいただければ嬉しいです。