『マイ・シスター、シリアルキラー』
⑴ おすすめ度 ★☆☆☆☆
⑵ ざっくりすぎる内容
・ 付き合う男を次々殺してしまう美貌の妹(アヨオラ)と、そんな妹を疎ましく思いながらも尻拭いを続ける姉(コレデ)のお話。
・姉妹が共依存関係。
・タイトルそのまんまのお話。
⑶ 文体
・ ポップで軽快。本当にするする読める。
⑷ ざっくばらんな感想
・ 若者が書いた携帯小説、Web小説という印象。
(作者は1988年生まれのナイジェリアの女性。)
・ 映画化したら若者にウケそう。
・ 共依存はもう一つのジャンルと言っていいほど小説でも映画でもよく取り扱われていると思うが、この作品の場合、"姉妹が前向きな共依存関係"にあることが面白い。
・ 良い事も悪い事もなんでもインスタやスナチャに投稿しまくるアヨオラが日本や外国関係なく、今時の女の子って同じなんだなぁと思った。
・ “スナップチャット”とか“ハッシュタグのトレンド”とかが何の説明もなく出てくるが、SNSを使っていれば知っていて当然で若者からしたら説明を入れた方が不自然なのかもしれないけれど、年配の人が読んだら「?」と思ってしまうかも。(実際、私の親はスナチャがわからない。)
この作品に限らず、作品には書き手の年齢が多分に反映されると思う。それはイコールその年代で流行したものからの影響も受けていると思うのだ。
自分のオリジナル設定にせず、既存の流行している技術やモノの名称をそのまま説明なく使用すると、その流行をまだ知らない人が読んだら物語にすんなり入っていけないのではないだろうか。
また、流行りが終わった時に作品そのものも古くなった印象を与えてしまうと思った。
しかし、この手の作品は長く読み継がれようとかあらゆる年代に読まれることを意識せず、その時のありのままを作品にしている=生まれては消費される前提のような類の作品なのかもしれない。
・コレデが自分のバッグの中身を確認する場面で財布やハンドクリーム、ウエットティッシュなんかが入っていて、「女性の必需品といったところだ」との描写がある。その中に"レイプ防止用ホイッスル"も含まれており、"必需品"となっているところに驚いた。
⑸ 生意気言わせてもらうと、ここがもう少し…
・アヨオラはいつもナイフで交際相手を殺してしまう。
コレデがナイフを妹から奪ってしまえば殺人を犯さなくなるかもしれないと考えナイフを渡すように言う場面があるが、アヨオラはこれを頑なに拒否し、いかにもナイフを渡せない何か重大な理由があるのかと思わせる。しかし最後まで理由は不明。しかもそのナイフは作中で何度もエピソードとして語れる厳しかった父(すでに死亡)が所有していたナイフなのだが、その点の設定も無くてもよかったのでは?と思ってしまった。
・アヨオラが交際相手を次々殺してしまう理由がいまいちわからない。
・姉妹やそれを取り巻く人間の葛藤、厳格な父の描写がありきたり。
・何人か物語の軸となる人物がいるのだが、登場シーンこそワクワクさせるが、みんな最後にどうなったのか説明不足。
特にアヨオラに殺されたフェミという男性の姉なんて、あの物語の終わり方では登場した意味がとても弱い気がする。
⑹ 心に刺さった箇所
う~ん、とくに無し。
かなり色々な文学賞を受賞した作品のようだが、印象的な場面は皆無。自分にこの手の作品の読解力がないのかもしれない。(全く楽しめなかったわけではないのだけど…)
⑺ 書籍情報
『マイ・シスター、シリアルキラー』
オインカン・ブレイスウェイト
早川書房 2021年1月発行
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