抄訳・源氏物語〜帚木 その三〜
こんなに掘り下げて色々と話したのだから、秘密の恋の話などをしてみようとなった。まずは、左馬頭から話し出した。
「私がまだ若く下級役人だった頃、ある女と付き合っていました。容姿が今一つであったため、彼女一人と決めることができず、ついつい浮気心でよそにも女がいたりしたのです。そのことが彼女に知れてしまい、やきもちを焼かれてひどく責められることが多かったのです。それで懲らしめるために『そんなに私を責め立てたら、どんな仲でも冷めてしまう。もう二度と会いたくない。本当は長く連れ添って、私が人並みに出世をしたら正妻に迎えたかったのに。』なんて調子よく、相手に嫉妬しすぎたと思わせようと、自分勝手な主張をしたのです。そうしたら女の方は『あなたが出世をするのを待ち遠しく思うのは我慢できます。でもあなたの浮気心がいつ直るのかを期待して待つのは堪えられません。だから別れるのにいい機会です』と言って彼女は私の指に噛み付いて来たのです。私は大げさに『痛い、痛い』と言って『こんな傷ができてしまっては、みんなに笑われて出世もできなくなってしまう。もう出家でもするしかない。もうこれでお別れだ』と言って家を出たのです。そのあとは彼女に手紙を出すわけでもなく、勝手気ままな生活をしていました。
賀茂の臨時の祭の後、なんとなく様子を見に行こうと雪の中、自分の家に帰ったのです。そうすると向こうも衣服を温めていて、私を待っていてくれていたようでした。でも本人はいなく女房に聞いたら、今日、親元に帰ったと言うのです。置き手紙もなしで。私は拍子抜けしてしまい向こうが私と別れたがっていたのでは、と思ってしまった。それで私はまた余計に意地を張ってしまい、彼女を追い詰めるようなことをしてしまった。そうしたら彼女が酷く心を病んでしまて呆気なく、逝ってしまったのです。私はなんて思いやりのないひどい奴だと自分を責めました。
今となっては彼女ほど理想的な妻になれる人はいません。風流ごとや、まじめな話などの相談相手として申し分なく、家の事もしっかりとしてくれて、染め物も織物の腕前も良かったのです。本当に何事にも行き届いた良い女でした。」
としみじみ思い出していました。
頭の中将が「織姫と彦星のように、末長く夫婦でいれたら良かったのに。素晴らしい女性が早死にしてしまったら、良妻が得難いものというのも納得するね」などと、言った。
「実はこの時、もう一人良いなと思っていた女性がいまして」と左馬頭が続けた。「こっちは、身分もまあまあで、才女らしく歌や音楽もできて、容姿も良かった。なのでやきもち焼きの女を気の置けない女として、こっちはたまに会いに行く遊び相手として楽しんでいました。ただ、女が亡くなった後は、こっちの女の艶やかさが軽い女に思えてしまって、少し距離を置くようになっていました。神無月のころ御所の帰りに、ある殿上人が私の車に同乗してきました。私は父の大納言の家に帰ろうとしていたところでしたが、その人が『今宵は私のことを待っている女の所に行く予定なんです』というので、聞けば同じ方向にあの女の家があったので、送るついでに私も会いに行こう思いました。その人が降りた後、私も彼女に家に向かって行ったら、そこにあの殿上人が居たのです。男は笛を吹き、女は琴を弾いて二人で楽しんでいました。遊び相手として思っていたけど、まさか女に浮気相手ができるとは思っていなかったので、これを口実にして別れることにしまいた。この二人の女性を比べて、若い時でさえ、艶やかな女性は心から信用できないと思っていたし、歳を重ねた今は特にそう思います。お二人はまだお若いから、華やかで艶かな女性が良いと思っていると思いますが、まあ七年もすればわかるでしょう。色っぽくなよなよした女性には気をつけなさい。」と忠告する。頭の中将はうなずき、源氏は少し微笑んで、「結局どちらの話も、体裁の悪いみっともない体験談だね」と源氏が言って、四人で笑っていました。
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カスですな。人が一人亡くなっているのに、笑って話をしめるって。
でもこれは物語なのでここは大目に見ましょう。
浮気をする彼氏を怒って指まで噛むなんんて、よっぽど怒っていたのでしょうね。でも貴族だったら一夫多妻制なのだから浮気はそれなりに大目に見てもらえると思っていたのですが、めっちゃ怒るんですね。
そして女の方が浮気したらすぐに別れちゃうって、今とあんまり変わらない感覚。
左馬頭が「7年もすればわかる」と言ってるのでこの人は24歳ぐらい?
てか、17歳の高校生ぐらいの男の子に働いてる男性ぐらいの人が、恋愛を語るとは…。甘酸っぱい恋と、ドロドロの恋愛では差がありすぎます。
この左馬頭の話、実はめっちゃ長いです。マジ長い。よくこんなの聞いてるよね〜3人とも。って思っちゃくらい。なのでショートカットしました。
この後は頭の中将と藤式部丞の話が続きます。朝までね(笑)
女子会並みに長い…。
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