ダーリンはソムリエ vol.1

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私のダーリンは、ソムリエである。

ソムリエといっても別段、レストランやワインショップに勤務しているわけではない。
その職業はといえば、ワイン業界のエージェントである。

フランスなど現地のさまざまな生産者のもとを訪れて、「このワインは素晴らしい」と思うと、それを日本のインポーターにプレゼンする。
いうなれば、フランスのワイン生産者と日本の輸入業者を結ぶ、結婚相談所といったところだろうか。

そう、私のダーリンはソムリエだ。

けれど同時に、ノムリエでもある。ワインの質ももちろん大事にするけれど、飲む量も、まったくもって半端ない。

夜ともなれば、口にはひっきりなしにワイングラスが運ばれてゆく。
ハタ、と気づくとグラスはあっというまに空になっている。
わんこそば、ならぬわんこワイン状態である。人の2~3倍スピードといっても過言ではないだろう。

とてつもない実力者である。

いまからもう十数年も前、ダーリンとつきあい始めてから半年ほど経った頃、私の身体全体にじんましんのような赤い斑点が出現した。
手強き酒豪たちとともに私も過去、幾夜となく酒を酌み交わしてきた私の身体も、さすがに悲鳴をあげたのだ。

それでも私の身体はやがて順応し、だいぶそのペースについていけるようになった。
とはいえ、「それにしても、よく飲むね」と、いまだに感心すること多々。

しかしダーリンは、決然と語る。

「こうやって何度も何度もワインを飲む、つまり”飲み込む”ことによってしか、ワイン的味覚は獲得できないんだ」

それって、毎日浴びるほどワインを飲むことに対する、単なるいい訳じゃない?
そんなふうに思ったことも、以前は、あった。

けれど、幾ばくかの真実は含んでいる。なによりそれは、私自身が体得したことでもあった。
そう。ワインは飲めば飲むほど、浴びれば浴びるほど”わかる”お酒なのだった。
<つづく>
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