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日曜日の夕方の日記。

昨日は日帰りで福島へ行ってきた。母は話せてはいるけど完璧とは言えず、長く論理的に話すのはまだ無理そうだった。右手は、調子がいい時だったら字が書けるようだ。歩行も、かなりフラフラではあるけれど、歩行器に掴まれば短距離の移動はできるようになった。少し動けるようになったからか、先週よりソワソワしているように見える。頭をフル回転させて(右手を膝の上でパタパタさせて)、何かを計算しているようだった。何かを決断する時の母の顔。

私のいるあいだ、ベッド脇の引き出しを開けたり閉めたりして、どうやらお金のことで気を揉んでいるらしかった。1階のATMまで付き合ってほしいと頼まれて、一緒にお金を下ろしに行った。ふたつの口座で6万円。ベッドに戻ると、何月何日、これが何費でこれが何費・・とかなんとか、不自由な手でメモを書き始めた。おそらくそれが自由になるお金の全てなのだろう。母はいつもどおりの自分を装っていたけど、見ていてもう働くのは無理だろうなと思った。希望を失ってはいけないけれど、期待しすぎるのもよくない。父もわたしも弟も、母に寄りかかりすぎたのだ。

入院費はわたしが払うと伝えると少し安心したようだった。しかし母は、寄りかかってばかりはいられないと、自分の頭の中で一生懸命計算をしているのだった。いろんな話をするつもりだったけど、結局お金の話ばかりをして時間が過ぎた。「うちは男がダメだから・・」と母が笑っていた。「まともなのはお母さんだけ」。冗談ではなく、本当にそうなのだった。母の言葉をが重くのしかかり、帰りのバスの中ではぐったりしてしまった。こんなところで自分がぐったりするのはおかしい、と思いながらも。

今日は家事を済ませて新宿へ来た。ATMで記帳をして、自分の自由になるお金がいくらぐらいかを確かめた。来春に予定していた旅行をキャンセルすれば、リハビリ病院に転院した後の入院費もしばらく払える。通信制大学も、卒業して先に何があるわけでもないから休学、あるいは退学してもかまわない。絵とフランス語も、もはや道楽みたいなものだからやめてしまおうか、とか・・。稼げる人間ではないので、やはり使わないのが一番だよな、という結論に至った。

こうして日記を書くあいだにも、安カフェにはいろんな人が来る。自分の人生なんか全然イージーな方だと思うし、ふざけている、と思う。今日は日曜日だからか、マルチの勧誘の人がいない。窓の向こうはちょうどお店が入っているビルのゴミ置き場で、その向こうをホストクラブの宣伝カーが(3台も)横切っていく。



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