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ガルニエ座の《ラ・チェネレントラ》

パリオペラ座の今シーズンは、9月3日、バスティーユで上演のプッチーニの《トスカ》で幕を開けました。
私は10日、ガルニエ座のロッシーニ《ラ・チェネレントラ》のプルミエに行ってきました。

演出は、コメディーフランセーズの人気俳優で、映画やテレビでも活躍しているギヨーム・ガリエンヌで、2017年に、彼が初めてオペラを演出したもの再演です。舞台装置は、同じくコメディフランセーズの座長、エリック・リュフ。

私はキャストを見て素晴らしいと思って行ったのですが、実は演出についてはあまり気にしておらず、これがガリエンヌの演出だということも幕が開くまで知らずにいました。

正直言って、この演出にはロッシーニの快活さや面白さが全く生かされておらず、残念ながら大失敗作🫤。

舞台設定は、ナポリの近くの火山灰で寂れた郊外の街。それと対照的に、王子の宮殿がどんなに素晴らしいかと思いきや、火山の溶岩が固まったオークルっぽい灰色の不規則な地面に、そのまま人々が集まっているだけ。女性は王子と結婚したい欲望を示しているのか、みんな真っ白なドレスで、シンデレラの義父は舞踏会なのにくたびれた普段着のまま。興醒めとはこのことか。

歌手はほとんど客席の方を向いて歌うばかりで動きがなく、ロッシーニ特有の緩急のある音楽の面白さが演出に表現されていませんでした。特に場が固まって音楽が一旦止まり、そのあと4、5、6重唱で大きなクレッシェンドになってそのシーンが終了というところでは、演出にもともと動きがないので、場が固まることもなく、場面が締まりのないまま続くという具合で、無茶苦茶退屈でした。

この演出は実は再演ではなくて、少なくとも再々演なのですね。確かコロナ前に最初の再演がなされているのですが、当時から非常に評判は悪く、なぜそんなものをシーズンの開幕に持ってくるのか全くもって謎です。コロナ明けのシーズンの最初だし、もっと「ああ〜〜、いいオペラを見たっ!」って思いたかったんですけど。

慰めは、素晴らしい歌手が揃っていたこと。
ここまで歌の質と舞台の質が対照的だと、作る側も、この演出がつまらないのでいい歌手を揃えてカバーしようと思ったのかな?と疑ってしまいます。(フランスのあるウェブマガジンに、フランス語でレビューを書いていますので、歌手の歌いっぷりがどうだったか知りたい人で、仏語が分かる方は、そっちのほうも参照してみてください。)

パリのオペラ座って、時々変な演出が出てくることで有名なんですが (それってパリのオペラ座だけに限らないかもしれませんが) 、「いくらなんでもそれはないだろう、税金返せ」(パリオペラ座は国立ですので、アメリカその他の超お金持ちの人がメセナとなって出す補助金以外は、税金でまかなわれています) と思わせるようなものも結構あって、「観客をなめんなよ」と言いたくなることもあります。
残念ながら今回のもそんな感じでした。


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