邦画敗北へ秒読み!「インターステラー」
※画像と見所、あらすじはシネマトゥデイから引用させていただく。主張はその点では無いので。
見どころ
『ダークナイト』シリーズや『インセプション』などのクリストファー・ノーラン監督が放つSFドラマ。食糧不足や環境の変化によって人類滅亡が迫る中、それを回避するミッションに挑む男の姿を見つめていく。主演を務める『ダラス・バイヤーズクラブ』などのマシュー・マコノヒーを筆頭に、『レ・ミゼラブル』などのアン・ハサウェイ、『ゼロ・ダーク・サーティ』などのジェシカ・チャステインら演技派スターが結集する。深遠なテーマをはらんだ物語に加え、最先端VFXで壮大かつリアルに創造された宇宙空間の描写にも圧倒される。
あらすじ
近未来、地球規模の食糧難と環境変化によって人類の滅亡のカウントダウンが進んでいた。そんな状況で、あるミッションの遂行者に元エンジニアの男が大抜てきされる。そのミッションとは、宇宙で新たに発見された未開地へ旅立つというものだった。地球に残さねばならない家族と人類滅亡の回避、二つの間で葛藤する男。悩み抜いた果てに、彼は家族に帰還を約束し、前人未到の新天地を目指すことを決意して宇宙船へと乗り込む。
邦画はSFで勝負できない
予告をご覧になっても分かると思うが、邦画でここまでクォリティーの高いSF映画を製作するのは、不可能だ。予算も無い。技術も無い。優秀な頭脳は映画界のみならず、海外への「悪しき輸出」が始まっている。真田広之氏がなぜ日本にいないのか、考えた経験はあるだろうか?
「燃えよ剣」には期待しているが、問題がある。
司馬遼太郎の同名小説が原作であるこの作品、「あとがき」で原田監督はこう白状している。
「当初は新選組三部作として制作する予定だったが、東宝が許さなかった」
ロード・オブ・ザ・リングのヒットは記憶に新しいが、トリロジー(三部作)であったからこその成功、である。
本作は当初、ビートルズ(ジョン・レノン)が「遊び」で1作を制作予定だったが、それは実現しなかった。一節によると、ジョン・レノンが挫折したとか。邪推だが、当時のハリウッド住人達が原作を重んじ、ロード・オブ・ザ・リングの失敗はあってはならないと、確固たる信念を持っていた可能性が高い。今現在なら、金目当てで制作した可能性は否定できない。だが邦画界は、安穏としていられない。
北野武監督がかつて「邦画と韓国映画を比べ物にしないでほしい。韓国は国をあげて、映画を製作している。例えば駅を使いたい放題だが、日本ではどうか?」と苦言を呈している。そう、壮大な映画を製作したいなら、国をあげて取り組む必要がある。それでも、失敗する可能性は高い。昨今の東京五輪の不祥事続きを見れば明らかだが、この国は他国に足をすくわれる。隙だらけなのだ。
SFについては映画だけではなく、小説でも同じことがいえる。日本のSFは鳴かず飛ばすだが、由緒正しきコピー文化大国・中国が出版した「三体」は世界中でヒットし、アメリカ大統領まで拍手喝采を送ったほどだ。
小説であれ映画であれ、SF作品で世界において競争するのならば、頭のネジが全部吹っ飛ぶほどの、イカレっぷりが必要だ。SNSのデマ一つで分断の危機に立たされるような軟弱な国に、かような懐の広さがあるだろうか?
日本は「チャンバラ」がお家芸だが、「燃えよ剣」ですら制作スタッフの創造性を制限される。そんな汲々とした国で、舞台が宇宙の壮大な作品など、生まれる余地が無い。
こうした私の主張に異を唱えるのなら、自問してほしい。
「日本人で、クリストファー・ノーラン監督を越えるクリエーターはいるのか? 日本でテネットを越える作品を制作することは可能か?」と。
中国人なら全員が「超えてみせる!」と言い切るだろう。だが日本人は、俯くしかない。私も同じ日本人なので、悔しい。だが、現実だ。
ハリウッドが「家族は一緒にいないといけない」病から解放された!
それでもインターステラー以前のハリウッド作品なら、まだつけ込む余地はあった。ディズニー作品がその代表だが、ハリウッドの鉄の掟「家族は一緒にいなかればならない!」という陳腐な価値観が、良くも悪くも、ハリウッド作品の質を落としてくれた。
ところが、だ。
インターステラーの終盤、主人公の娘は主人公にこう言う。「親が子を看取ることなど、あってはならない。彼女の元へ向かって」と。
この「彼女」だが、主人公の恋人ではない。戦友だ。邦画の暗黒史である「若い男女がくっついて離れて」とかいう、どうでもいい駄作レベルのストーリーではない。
つまりハリウッドは「インターステラー」によって、「家族は一緒にいないといけない」病から卒業宣言を行い、かつ、安易な恋愛路線に走ることもなくなった。邦画がつけ込める隙が、どこにあるのだろう?
邦画界は絶望するしかないのか?
ここまでご覧いただいた読者の方の中には、こう思われた方が多いだろう。
「日本のアニメは世界一だ!」
その通りである。日本のアニメは、それこそディズニーにも負けていない。エヴァンゲリオンは興行収入100億円を突破し、『竜とそばかすの姫』は、カンヌ国際映画祭 オフィシャル・セレクション「カンヌ・プルミエール」部門に選出されている。
かつて日本のアニメは、ジブリの1強だった。そのジブリが失態続きでも、「君の名は。」に「サマーウォーズ」、そして庵野監督はシン・ゴジラでも成功をおさめている。「鬼滅の刃」の空前のヒットは今さら、列挙する必要は無いだろう。
つまり日本の映画界は、実写は滅びゆく運命だが、アニメは世界のトップをこれからも走り続ける。
日本は島国であり、資源は限られている。その限られた資源をアニメに全力投入する瀬戸際まで、私達は追い込まれているのかもしれない。