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方丈記と鴨長明の逃走

 方丈記には火災や人災や地震、飢饉などこの世の災いが描かれている。著者の鴨長明はかつては立身出世を望む青年であったが、俗世間を捨てて山に篭る。そこで芸術(琴や琵琶、文学)や仏道修行に精進していく。
 鴨長明は自足の思想家と言われる。自足とは自分自身が充実し、自足していればそれでよい、という思想である。儒教では「足るを知る」ということわざがある。自分自身が何があれば事たりるのか、あるいは満ちるのか。

 自足の思想とは、外部からの助けを必要とせず、自分自身で充足することを重視する考え方である。この概念は古代ギリシャの哲学、特にストア派やキュニコス派の思想に強く見られる。

主な特徴:

  1. 物質的な依存からの解放

  • 必要最小限の物で満足することを説く

  • 贅沢や過剰な欲望を否定する

  1. 精神的な自立

  • 外部環境に左右されない心の状態を理想とする

  • 内面の充実を重視する

  1. 倫理的な側面

  • 他者への依存を減らすことで真の自由を得ることを目指す

  • 自己規律と自己統制を重んじる

現代での意義:

  • 消費社会への批判的視点として

  • 持続可能な生活様式の指針として

  • 精神的な充足を求める生き方の一つとして

このような自足の思想は、現代の「ミニマリズム」や「シンプルライフ」の考え方にも影響を与えている。
 

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