映画『ロボコップ(2014)』

前置き

今更ながら、ロボコップのリバイバル版を視聴。どうも、ネットでの評判を見る限り、あまり芳しくなかったようで、10年近くたってリバイバルの続編がないことから(旧作は3部作まで出ていた)興行的にはふるわなかったようだ。
ロボコップの話はシンプルだ。「正義感をもつ警官が不正をみつけて捜査途中で致命的な負傷を負う」「オムニコープ社によってロボ警官として蘇生させられる」「自分を殺した犯人を捜索し、その過程で黒幕を見つける」である。あとは、まあ、メインストーリーからすると添え物みたいなものである(暴論)。
自分としてはすごく面白かったので、読み返す意味でもあらすじを書き留めておく。

あらすじ

米国ではロボットによる治安維持の推進派/反対派で真っ二つに分かれていた。反対派の意見はシンプル。「ロボットに人の心がわかるのか。自分達の治安維持をまかせられるのか」である。当然、ロボットなので心はない。議会で劣勢となったオムニコープの社長は、人体と機械の融合(サイバネティクス)を研究している博士に「なんとかしてくれ」」と頼み込む。社長と博士、側近達は、サイバネティクスに最適な人材を探す。事故で自由な身体を失った軍人を候補として探すが、被験者には精神的な安定が求められる。被験者捜しは続けられた。
警察である主人公マーフィーは相棒と共にマフィアに武器を横流ししている犯人を捜していた。あと一歩までせまるマーフィー。しかし、マフィアの部下に車に爆弾を仕掛けられ、自宅前で致命傷を負ってしまう。オムニコープ社はで、マーフィーの延命のために、妻に手術を提案する。妻は強制的に手術に同意せざるえなかった…。
手術は無事成功してロボとして蘇生したマーフィー。目覚めるも混乱してラボから脱走する。現実を受け入れられないマーフィー。強制停止されてラボに送還される。博士は、マーフィーのアーマーを取り外し、人体は脳と肺くらいしか残っていないことを見せつける。混乱するマーフィー、最早、自分は死んだものとしてくれと懇願するも、家族は生還を望んでいるとして、説得される。
オムニコープは戦闘機械のトレーニングとしてテロリスト鎮圧のシミュレーションを試す。しかし、人体がベースであるマーフィーは、純粋なロボットよりほんのわずかに反応が遅れる。事件現場で判断が遅れるのは致命的だ。またも社長に泣きつかれた博士は、禁断の技として戦闘時にはマーフィーの判断を迂回する処置を施す。脳にチップを追加して、戦闘で「自分が戦っている」と思っても、実際はアーマー内臓の戦闘AIが判断を下している状態を作り出す。結果、完璧な戦闘マシーンになったロボコップはNYCに戻る。
ロボの身体で妻と子供に会う。なんとか生きて戻ってくれたと喜ぶ家族であった。
配備にあたってロボコップには過去の犯罪記録を学習させられる(かなり非人道的な手動である)。学習データに含まれる車が爆破されるシーンを視てPTSDを発症するマーフィー。あわてて学習を中断する博士。御披露目は目の前だ!問題が起きないよう、マーフィーの感情レベルを制御をしかける博士。ロボコップの市民へのお披露目は進められていた…。
メディアや市民が集まったイベントでロボコップは突如、群衆の真ん中に飛び込んでテーザー銃を発砲する。有無を言わさず倒される市民。しかし、倒れたのは重犯罪をおかして逃亡していた犯人であることが判明。人間には探せなかった脅威を見つけたとして、ロボコップは盛大な歓迎をもって市民に迎え入れられることになった。
犯罪の撲滅に邁進するマーフィー。任務に集中するあまり、妻と子供が待つ家庭にも帰らず、せっせと犯罪者をさがしまわる。犯人が見つからなくても、周囲の人物の関係から辿って本丸にたどりつくので、探索は簡単だ。次々と犯人は検挙(もしくは殺害)される。
しかし、マーフィーは任務に集中するあまり家には帰らない。耐えきれなくなった妻は、メディアのカメラを通して夫に「帰ってきて!」と懇願する。非情なロボコップとなったマーフィーだったが、妻の訴えに心を動かされ(主に、息子が悲しむ姿に衝撃を受けたようだ)、久方ぶりに自宅に帰り、自分が殺害された当日の記録をカメラで見返す。改めて、自分が殺害された瞬間の妻・息子の動揺に触れる。
事件当時、マフィアのボスにつながったマフィアの下っ端からボスの居所をつかみ、現地に乗り込んでいくマーフィー。「あいつが来るぞ!」と備えるマフィアだが、ロボコップの突撃に為す術もなくやられていく。倒されたマフィアたちが使っていた武器から、武器の横流しをしていたのは警察内部にいることを突き止める。警察署に戻って、マフィアとつながっていた警官2人を問い詰め、さらに上の黒幕として本部長がいたことがわかる。問い詰めて、いよいよ打ち倒す手前でオムニコープによって強制停止させられてしまった。
時同じくして、米国のロボットによる治安維持法案が可決されつつあった。ここでロボコップに問題があったとなっては話が進まなくなる。オムニコープの社長は「(本当の英雄は)死んで英雄になるんだ」と判断から、ロボコップを廃棄する決断をする。
博士の手引きでラボから脱走したロボコップ。バイクでオムニコープ社に向かう。途中、巨大なロボットに襲われ、ボロボロのアーマーになりながら、社長を追い詰める。悪役お決まりの「マーカーがある人間は攻撃できない」制約により発砲できない。しかし、妻と子供に銃を向けられ、機械の制約を打ち破ってマーフィーは社長を撃つのだった。
博士は一連の状況を議会で説明し、米国でのロボットによる治安維持の法案は否決される。さて、未来はどうなるのか、というところで、幕は下りる。

ここが面白い

徐々に剥奪される人間性

ロボコップが”産まれる”過程は、機械 vs 人間性になる。「あー、そこまでやっちゃうのか」という場面がいくつもあって、徐々に後戻りできなくなる。「それ以上、やっちゃダメー!」というのが、見所でもある。

  • サイバネティクスの手術で、マーフィーは大きく人間性を剥奪される。もはや脳と肺、手の一部しか残っていない身体において、どこまでが人間で、どこまでが機械だろう?というのがファーストインパクト。

  • 戦闘時の反応速度向上のため、脳にチップを埋め込まれる。さらに人間性が剥奪される。本人は、実はチップの”能力”だと知っていてのだろうか?

  • 警察としての能力向上のため、過去の犯罪記録を学習させられる。これ、明確に描かれている場面がないが、認知能力や記憶も機械で拡張されているのだろう。PTSDでダメージを受けるマーフィーは感情を抑制され、さらに人間性が剥奪される。

  • 後述するが、要所で人間の都合に翻弄されるので「人間性って何?」ってなる。

本家ロボコップでは、最後に「お前はクビだ!」の判断によって黒幕に発砲できるようになる有名なシーンがある。ロボコップ(2014)では、家族への愛によって乗り越えたのか、自衛のために発砲したのか、ちょっと明確に判断がつかない(正当防衛のようにも見える)。
反対に、マーフィーをこの世につなぎ止めているのは家族愛である。

  • サイバネティクス手術で「死んだことにしてくれ」とするマーフィー、博士の説得でもって(家族は、どうあっても生きていてほしいことを願った、的なことを力説)生きる判断をする主人公。家族いなかったらここで話終わってる。

  • ロボコップとして配備された後、任務最優先になったロボコップをつなぎとめたのも妻の訴え。要所で出てくる妻。奥さん、何してる人?そこはあまり掘り下げられない。

  • 家族には大事にされるものの、オムニコープには本当に都合良く利用される。これが「社会から見たらロボ、家族からみたら夫であり父である」の矛盾。普通、家族の脳みそにチップいれんでしょ…

その他

  • 一般の市民性はまあり描かれていなかった。オムニコープ、マフィア、警察でほぼ映画は成り立っている。サミュエルLジャクソンの番組MCによって世間の反応は描かれていることになっている(これが、かなり機械側に肩入れした内容になっているのも興味深い)。

  • オムニコープの巨大ロボットと戦うシーンは、このシリーズの十八番である。いかなロボコップといえど、巨大なロボットには勝てないが、人間の知能でなんとかする(ロボットを同士討ちさせたり、人間が戦闘に入りこむと安全のためにロボットが発砲できなくなる、とか)。あのロボットが、いかにもプラモデルのような重量感のない動きをするのが本家だが、さすがに2014年なのでそれなりの動きをしているが、やはり、ちょっと重量感がない気がした。

  • 本家のロボコップはシルバーのボディだが、本作では、警官として配備される時に黒デザインにされる。これ、すごくいい。バイザーの赤色とあいまって、悪役感があってよい。最後にまたシルバーに戻って、あの見慣れた色になるのがとてもよいな、と思った。

  • もうこの時代なので、SFにおいてテクノロジーの描き方は適当にできない。たとえば、脳が重要なので、脳の活動に必要なカロリー、栄養素を入れている描写があって、これはいいな、と思った。




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