はじめまして。「本で旅する Via」です
こんにちは。
今年6月に東京は荻窪の路地裏に店を構える、「本で旅する Via」と申します。このnoteでは、店にまつわる、さまざまな情報を発信していきたいと思っています。
お見知り置きのほど、どうかよろしくお願い申し上げます。
「本で旅する Via」は、俗に言うと、カフェになりますが、店主の思いとしては、「読書するための居場所」です。
開店するにあたり、いろいろな方に出会って、店についてお話する機会に恵まれますが、いつのまにか、お相手のなかで「ブックカフェ」に変換されてしまうことがよくあります。
みなさまは、「ブックカフェ」と聞いて、どんな絵を思い浮かべられるでしょう?
「書店」要素が強いか、「カフェ」要素が強いか。
カフェか、書店か、どちらが先にありますか?
これは、みなさまそれぞれ、現実に、また情報を通して、出会ってきた「ブックカフェ」によって、思い描かれる姿はまちまちでしょう。その輪郭は、かなり曖昧です。
わたしはどちらかというと、いまは「カフェ」要素が強く、カフェが先でその中に本が並んでいるイメージが浮かびます。カフェの中に、ともかく本を並べさえすれば、「ブックカフェ」になりうるので、わたしのなかでは、もはや、言葉の肌触りが、あまりよろしくはありません。
もはや、と書いたのは、「ブックカフェ」という言葉が、わたしに新鮮に響いていた頃があったからです。
いま、自身の書棚を見に行くと、『東京ブックストア&ブックカフェ案内』(交通新聞社)、『ブックカフェものがたり』(幻戯書房)が並んでいました。奥付には2004年、2005年とあります。
振り返ると、この頃、書店を営みたく考え、つてを辿って書店さんにお話を伺ったり、東京商工会議所の創業塾に通ったりしていました。世はとっくに、ことあるごとに、思いつけば、読書離れを話題にし、街の小さな書店は減少傾向にありました。本一冊から書店が受け取る粗利は、わずか20数パーセント。新刊書店の経営はそう簡単ではありません。
そんなとき、書店内にカフェを併設し、書店の利益や集客を補填するアイデアとして、わたしの前に現れたのが、「ブックカフェ」という存在でした。しかし当時は結局、考えも足りなければ、商売の姿を思い描くこともできず、足を踏み出すことはありませんでした。
そんな経緯があるものですから、わたしにとっての「ブックカフェ」は当初、書店に併設されたカフェを指していましたが、それから続く平成の世で、カフェに本を並べた「ブックカフェ」の情報を得る機会が増え、自身のイメージも変化していったように思います。
同時にこの間、会社員を続けながら、創業の思いは、定期的に、小刻みにぶり返しては引き、を繰り返し、絶えることはありませんでした。
そのなかで2020年には、勤務先と、複数の古書店さんのありがたい厚意の下、会社員を続けながら、古書店の見習いを経験することができました。ところが春先には新型コロナウィルス感染症の拡大により、自身で棚売りを予定していた古書市が中止になるなど、思うようにはいきませんでした。
20年秋からは緊急事態も緩み、古書市も再開されましたが、見習いを経験し、古書店さんのお話を伺っていくと、どの仕事もそうですが、なかなかに厳しい世界。よほどいい品を入手することができるならともかく、商いを続けていくには、大量の書籍を日々、日々、お客様にお買い求めいただかなくてはなりません(ECサイトでは、新刊当時、ん千円もする立派な書籍が数百円になり、岩波文庫が、ん十円、100円になる。あまりに安すぎる……)。
そんななかで、どうやってご商売をされているのだろうというような、お年を召された経営者もいらっしゃるので、できなくはないのだろうけれど、投入せねばならない労力とその見返りの折り合いが、自身にはうまく思い描けず、身の丈に合わない仕事ではないかと思うようになりました。
手を差し伸べてくださった古書店さんには義理を欠く格好になり、未だ申し訳ない思いです。
そうして2020年の暮れ、行き先を見失っていたところで、『本の読める場所を求めて』(朝日出版社)という本に出会いました。著者は「fuzkue 本の読める店」を経営されている、阿久津隆さん。ずいぶん前に「fuzkue」さんは何かのネット記事で紹介されているのを目にして存じ上げておりました。「本を読んで過ごすことに特化した店」で、お席料制を導入されているユニークな〝カフェ〟です。素敵なお店だと、頭の片隅にずっと残っていました。ただ、図らずも、いま、ユニークと書いたように、その独自性は、fuzkueさんに所属すべきものと思っていました。
それが、『本の読める場所を求めて』を読み進めいくと、こんな一説に出会ったのです。
「やっていいの?」
思わず、わたしも「やりたい」と、心が躍りました。
自身で、やることを想定していなかったので、素敵止まりで終わっていましたが、あらためてビジネスとして、その店のスタイルを見直すと、読書の空間と時間をお客様に提供し報酬をいただく営みは、わたしには画期的に思えます。
とはいえ、一見、格好は、(かつて商売の姿を思い描けなかった、ブック)カフェです。開業できたはいいが、そこは死屍累々の世界が無辺に広がります。それが身の丈に合っているのかといえば、けっしてそうではないでしょう。
しかし、たとえそうとしても、やってみたい、のほうが上回るのです。長年やりたいと考えていたことが、このカタチのなかであればうまく収まり、実現できるのではないか。そう思っているのです。
年が明けて2021年の1月、fuzkueの阿久津さんにメールを差し上げたところ、お話を聞いてくださる機会をいただき、お忙しいなか、2度ほどお会いすることができました。もう一度お会いする予定でしたが、機会を逸してしまい、最終的に「本の読める店 フヅクエ ○○」を名乗る話までには至りませんでしたが、わたしなりにやってみようと思うようになりました。
二郎インスパイア系ではありませんが、「本で旅する Via」は、「fuzkue」さんインスパイアのお店です。
話を巻き戻します。冒頭、
「開店するにあたり、いろいろな方に出会って、店についてお話する機会に恵まれますが、いつのまにか、お相手のなかで『ブックカフェ』に変換されてしまうことがよくあります」
と書きました。「ブックカフェ」はけっして間違いではないので否定はしませんが、弊店は、fuzkueさんに倣うなら「本を読んで過ごすことに特化した店」であり、Via流に申し上げるなら、「読書するための居場所」、「本で旅する」場所なのです。
本格的な創業へむけて舵を切ってから1年と半年、長らくの停滞があり、昨秋からびゅびゅっと進行して6月の開店を迎えることになります。この間の出来事については、またあらためて綴ります。
自身のふりかえりなど書くつもりはありませんでしたが、筆の運びでそうなってしまいました。次回、当初ふれる予定だった、融資を受けようと日本政策金融公庫に伺った際、聞かれると思って用意していたのに問われなかった質問、「なぜ、(この時期に)創業するのか?」について書いてみようと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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