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『年中行事百科』を読んで

『年中行事百科』八條忠基著。2022年初版。淡交社。 をこの度読みました。

八條先生の本は以前にもnoteしています。


平安時代、朝廷は決まった日時に決まった儀式を行うことを大事だと考えていました。年中行事には節分や七夕など現代にも残っているものもあります。

年中行事の中には朝廷全体をあげてとりおこなうものもあれば、公家の私的な行事や、武家の行事、民間と共通の行事などがあります。これら豊富な去りし時代の行事の詳細について学べる本です。ただし、この本の〇月〇日は私たちの今使っている新暦ではなく、旧暦をさします。

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私がとても面白いと思った行事は、1月7日(旧暦)に京都で行われた行事のひとつ。
北陣検非違使弾始きたじんけびいしだんはじめです。

弾始だんはじめというのは、今年の死刑執行のはじめと言う意味。新年もあけて7日くらい経った頃に今年最初の死刑執行を執り行う。

執り行うのですが、これがニセモノの処刑。一般のお百姓さんが罪人役になる。罪人役をつとめると米一石が進呈されるらしい。面白過ぎる役目のうえに、お米まで。いいなぁ。

検非違使は死刑を宣告し、罪人役のお百姓さんの頭にかぶせている烏帽子を梅の枝ではたき落として、イベントは終了。首をおとしましたよ、というフリかと思われる。このあとから京都では警察業務が仕事始めとなる。

この年中行事は江戸時代から行われたそうです。
検非違使というのは、律令時代からある役職名。警察検察にして裁判官。近代司法の観点からいうとアウトすぎる役職。この役職は江戸時代にも残っていた。残ってはいたが、すでに権力はなく実務もない。

朝廷の力はうつろい、すでにサムライの世の中だったため。よって検非違使の役目はこのニセモノの処刑だけで、京都の治安維持は当然サムライの役目でした。ところがこれを毎年やらないといけないというのが、何ともその時代の京都らしいところだと思います。

江戸時代まで続いていたのに。こんなに面白い習慣を失ってしまったというのは、、、。なんだか惜しい気持ちにしてくれる点も、読書すること、歴史を知ることの、いいところの一つなのでしょう。

IMAGE BY Michelle Raponi FROM Pixabay




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