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猫好きなら知っておきたい猫皮膚セミナー
webセミナーのアウトプットです。今回のセミナーは、Vet Derm Tokyoの神田先生による『猫好きなら知っておきたい猫皮膚セミナー』です。なかなか猫の皮膚についてのセミナーは少ないので貴重です。ありがとうございます。かなりためになるセミナーでした。長くなりますが、お付き合いください(笑)
◯「猫は小さな犬ではない」ことを理解しましょう。
犬と猫の皮膚、被毛の違いは、猫の皮膚の厚さは犬と比較して薄く、毛の密度は猫が圧倒的に密であり、太さも細いです。なので、猫の毛がモコモコの理由は、細かく柔らかい毛が密に生えるからなんだそうです。
◯猫の被毛のタイプは、大きく分けて4つです。
【短毛・長毛・ヘアレス・レックス】
ヘアレスの代表的な猫種はスフィンクスです。レックスの代表的な猫種はセルカークレックスやレボンレックスなどがいます。これらの特徴として、毛包の数は正常だが、毛包の形、構造が異常なため独特な毛並みになるということです。
◯猫がグルーミングすることによる皮膚に対する効果
猫は、全身の91%のをグルーミングすることができて毎日1時間ほどグルーミングしているそうです。
グルーミングする理由
・抜け毛や汚れ、ふけの除去
・体温調節
・被毛の撥水効果
頭から尾に向かってグルーミングをします。ある研究では、グルーミングをすることで真菌感染から身を守る要因となる可能性が示唆されています。もちろんすでに感染している場合には、グルーミングは避けた方が好ましいです。
◯猫のスキンケアどうする??
そもそも猫にシャンプーが必要なのか?スキンケアについてはよくわかっていないことが多いそうです。特に猫はシャンプーが嫌いです。そのため、シャンプーをするのであれば、若い時期からシャンプーに慣らしておく必要があります。
◯シャンプーの後に保湿剤は必要か??
皮膚が薄いので乾燥しやすい傾向にあるため、保湿剤の基材を気にしながら保湿するのが良いかもしれない。なるべくさらっとしたタイプが良いかもしれません。掛け流しタイプやスプレータイプが良いそうです。
グルーミングは、スキンケアの補助として有効です。どんなブラッシングがいいかは、毛のコンディションによって決めます。スリッカーなどの金属製品は皮膚を傷つける可能性があるので控えた方が良いです。マッサージ感覚で少しずつ範囲を広げるのが良く、足先や顔まわりなどグルーミングしにくい部分を助けてあげる感覚でグルーミングするのが良いそうです。
先生からシャンプーをお勧めしたい猫として、「ヘアレスとレックス」が挙がっていました。ヘアレスやレックスの猫は、皮膚病のない猫でも体表にいるマラセチア菌が多いことが知られているため、マラセチア菌を増やさないためにも定期的にシャンプーが必要になるかもしれません。スコティッシュは、加齢により関節のトラブルが増加しグルーミングができなくなる可能性があるので小さいうちからシャンプーに慣らしておく方が良いそうです。
◯猫で使用NGなスキンケア製剤
犬と違って、シャンプーの成分で皮膚炎や中毒になる成分があります。ティーツリー・アロマ系・硫黄・過酸化ベンゾイルなどは控えた方が良いそうです。しかし、猫で使用可能と言われていても特発性皮膚薬物有害反応が疑われた猫の約14%がクロルヘキシジン含有のシャンプーで接触性皮膚炎を起こした報告があります。つまり猫の皮膚はかなりデリケートになります。また、スポットオン製剤(フロントライン)などでも発症する可能性があります。
ここからいくつかの猫の皮膚病についてのお話です。
◯『皮膚糸状菌症=カビ』
人獣共通感染症感染症のためできるだけ早期に診断することが望ましいです。耳介や鼻、口などの体の末端にできやすい特徴を持っています。境界明瞭な脱毛で綺麗に毛が抜けていきます。猫の糸状菌症は、そこまで痒くないと言われています。以前より診断には、ウッド灯が用いられ現在ではPCR検査も実施されています。写真はウッド灯で照らした真菌症の症例です。
人獣共通感染症のため診断したら全力で治しましょう。完治までは時間がかかり、特に長毛種であればより時間がかかります。シャンプーをすることも効果的ですが、要相談です。シャンプーによって抜けた毛をしっかりと消毒しないと感染要因になってしまいます。また環境の清浄化も重要です。毛に感染したカビは、長いと環境中に1年間生存が可能と言われているそうです。自宅の掃除が大変です。ポイントは、毛が落ちているところを徹底的にコロコロで取ることです。布類は、2回洗濯すれば落ちるそうです。消毒は塩素でOKだそうで2ヶ月は再発を警戒するべきだそうです。
◯『蚊刺咬症』
蚊の唾液に反応する皮膚病です。鼻とか耳に出てくるのが特徴的です。症状がなかなか治らない時は、病院受診が望ましいです。
◯『形質細胞性肢端皮膚炎』
猫の足のパッドがふにゃふにゃになる猫特有の病気です。確定診断は、病理検査です。私も一度だけ経験があります。病理組織検査後、ステロイドと免疫抑制剤でコントロールができました。元のパッドに戻って退院しました。
◯『顎ニキビ』
よく見る猫の皮膚症状ですね。痤瘡と言われる病態です。顎ニキビの普段のケアは、拭き取り、オイルクレンジングやサリチル酸(角質溶解)で拭き取ることが勧められています。顎ニキビに関しては、スキンケアが特に有効とされています。軽症であれば拭き取りだけで良いのですが、その20%が重症化しやすい報告があります。重症化した場合、顎下の毛刈りが有効です。あまりゴシゴシ拭かず、優しくマッサージ感覚で拭いてください。サリチル酸配合シャンプーや耳洗浄液でも拭き取りOKです。クレンジングオイルも良いそうです。重症化すると肉芽腫を形成してしまうため、たかがニキビですがされどニキビなのでケアをしっかりしましょう!!
◯なめハゲの原因はストレスですか??
まず痒いのか?痛いのか?を考えることが大事です。
痛そう/痒そうに見える疾患の代表的なものとして
・膀胱炎
・内臓腫瘍
・便秘
・関節疾患
・アレルギーがあります。
これらを否定(除外診断)してからストレスではないか?と考えましょう。ある報告ではストレスはげと診断された猫の約76%は、実はアレルギーがあるとされています。アレルギー症状の約50%は、お腹や頭に出やすく、他の場所でも症状が観察されるため固執する必要はないそうです。アレルギーは治す病気ではなく治癒することで維持が可能な病気のため根気強く治療する必要があります。
猫は病院に行くと緊張するので、Cat Friendly Clinicを選択するのが良いでしょう。軽症なうちに病院を受診することで治療の選択肢が増えるので病院に行くことを怖がらないで欲しいです。
◯まとめ
猫の皮膚病を相談される場合、非常に悩ましいです。 犬とは違い、ストレスを受けやすく、本当に痒いのかがわかりにくいです。このようなセミナーを開催してくださって本当に感謝です。多くの猫の皮膚病解決の手がかりになって欲しいですね。難治性の場合は、一次診療施設から皮膚科専門病院への受診を検討することも良いと思います。