中毒17:犬のカフェイン中毒【中毒】
カフェインは犬に中毒を起こします。チョコレートに含まれるテオブロミンよりも早く吸収され,中枢神経を興奮させ落ち着きがなくなったり,高体温,頻脈などがみられるようになります。軽度の症状は1kgあたり20mgから出始めます。コーヒー100mlにはカフェインが60mg含まれますので注意しましょう。
■原因物質
カフェイン。中枢神経を興奮させる作用があります。カフェインは植物由来のメチルキサンチンというアルカロイドの仲間です。カフェインはコーヒー( Coffea arabica)やお茶の葉(Thea sinensis),ガラナ( Paullinia cupana)に含まれ,その他にも多くの人間用の飲料に添加されています。
■症状
犬においてカフェインは摂取後すぐに吸収されます。テオブロミンはカフェインの10倍遅く吸収されます。最初の症状は摂取後2〜4時間ほどで出てきます。落ち着きがなくなる, 多飲, 失禁, 嘔吐, 下痢を起こします。 興奮状態に陥り,高体温と頻脈が出てきます。進行すると高血圧 , 筋肉の硬直, 発作, そして昏睡 が見られるようになります。
死亡は呼吸不全など により起きることがあります。
■中毒量
犬の軽度の症状:20mg/kg
犬の重篤な症状:40-50mg/kg
犬のけいれん:60mg/kg
■なりやすい犬種
CYP1A2酵素が十分働かない遺伝子異常を持つ犬ではカフェインやチョコに含まれるテオブロミンの代謝が低下し,中毒症状が強く出る可能性があります。この遺伝子変異を持つ犬は一部のビーグル犬で確認されていますが,これは研究でよく扱われるのが多いためと考えられています。その他の犬種でのこの遺伝子変異の有無は現時点ではあまり検証されておらず,今後の研究の発展が待たれます。
■催吐
催吐(emesis)と胃洗浄(gastric lavage)は有効です。活性炭の複数回投与も有効です。
■治療
上記のほか中毒症状に対する支持療法を行います。有効な除染が摂取から2〜4時間以内に行うと予後は通常良好です。
■注意すべきこと
コーヒー100mlにはカフェインが60mg,紅茶100mlには30mg/100ml,煎茶には20mg/100mlほど含まれています。また,コーヒーを使用したチョコレート菓子などはチョコレートに含まれる他のメチルキサンチンのテオブロミンなども含まれているので,ダブルで中毒のリスクがあります。コーヒー豆や茶葉,おかしが置いてある台所にはベビーゲートを用いるなどしてペットが立ち入らないようにすることをおすすめします。
■参考
・Mise M, Hashizume T, Matsumoto S, Terauchi Y, Fujii T. Identification of non-functional allelic variant of CYP1A2 in dogs. Pharmacogenetics. 2004 Nov;14(11):769-73. doi: 10.1097/00008571-200411000-00008. PMID: 15564884.
・Gagliardi R, Llambí S, Arruga MV. SNP genetic polymorphisms of MDR-1, CYP1A2 and CYPB11 genes in four canine breeds upon toxicological evaluation. J Vet Sci. 2015;16(3):273-80. doi: 10.4142/jvs.2015.16.3.273. Epub 2015 Mar 20. PMID: 25797294; PMCID: PMC4588012.
・CORTINOVIS, Cristina; CALONI, Francesca. Household food items toxic to dogs and cats. Frontiers in veterinary science, 2016, 26.
・農林水産省カフェイン https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html 2023/03/01参照
・・食品安全委員会カフェイン ファクトシート https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/caffeine.pdf 2023/03/01参照