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犬のブドウ中毒【中毒】【解説】
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【犬のブドウ中毒】
ブドウは中毒を起こす原因物質は同定されていませんが,時に犬に重篤な急性腎不全ARFを起こす植物です。※現在はより定義が明確になった急性腎障害AKIという言葉の方がよく用いられますが,ARFを用いた文献もまだ多く存在するため便宜的に急性腎不全ARFを使っています。
■原因物質
どの物質が毒性を発揮しているのかは不明です。
■臨床徴候(症状)
初期には嘔吐など消化器に関連した症状がでますが,続いて腎機能障害による症状を呈し始め重度の場合は死亡する場合もあります。近年では腎障害に加えて意識障害やふるえ,運動失調などの神経症状も報告されています。
犬は摂取後24時間以内に嘔吐を示すようになります。その後、食欲不振や下痢が見られてきます。腎機能が障害された時に見られるいくつかの数値が上昇してきます(リンやクレアチニン,BUNなど)。
腎臓機能が落ちると初期は尿の量は増えますが,重度に腎臓機能が低下すると尿を作る機能まで減ってきます。そのため尿量が減少した犬では生存率が14倍低くなってきます。急性腎不全を発症する前に治療開始することが生存率を高めるので,摂取した可能性がある時は速やかに動物病院を受診しましょう。
■中毒量
乾燥させた実,すなわちレーズンの方がより少ない摂取量で急性腎不全を犬に起こすことが報告されています。10年間にブドウ中毒を起こした犬43頭の転機について報告した回顧的な研究では,レーズンは最小で体重1kgあたり2.8gの摂取で急性腎不全を起こしました。ブドウは体重1kgあたり19.6gの摂取で起こしたと報告されています。中毒の程度と摂取量は相関しないと言われていることから,少量でも重篤になる可能性があります。
■なりやすい犬種
人の食べ物に関心をもつ個体は注意が必要です。普段から人の食べものは与えないようにして,わんちゃんが食べるものと人が食べるものは別という認識でいることが大切です。
■催吐
摂取後すぐの嘔吐は有効です。
■治療
血液検査などで腎臓の値をモニタリングしながら点滴を行いおしっこが出るように促します。腎不全も重度になるとおしっこを作る機能が落ちてしまうので,動物病院で注意深く観察しながら調整します。
■注意すべきこと
猫のブドウ・レーズン中毒の報告例は少なく猫に毒性があるかは不明瞭ですが,一部の成書には犬と同じように猫にも毒性があるかもしれないといった記載があります。犬より肉食性が強い猫ではよりアミノ酸を含む物質を好む傾向があり,ブドウやレーズン入りのパンは猫にとってあまり魅力的でないために誤食すること自体が少ないのではないでしょうか。
■参考
・EUBIG, Paul A., et al. Acute renal failure in dogs after the ingestion of grapes or raisins: a retrospective evaluation of 43 dogs (1992–2002). Journal of veterinary internal medicine, 2005, 19.5: 663-674.
・GUGLER, Kim; PISCITELLI, Christopher; DENNIS, Jeffrey. Hidden dangers in the kitchen: common foods toxic to dogs and cats. Compend Contin Educ Vet, 2013, 35.7: E2.
・SCHWEIGHAUSER, Ariane, et al. Toxicosis with grapes or raisins causing acute kidney injury and neurological signs in dogs. Journal of veterinary internal medicine, 2020, 34.5: 1957-1966.
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