木村文(リトアニア語翻訳者)

リトアニア語の翻訳をしています。 既刊訳書:「あさはやくに」(ふらんす堂、2020年…

木村文(リトアニア語翻訳者)

リトアニア語の翻訳をしています。 既刊訳書:「あさはやくに」(ふらんす堂、2020年)、「ちいさな ちいさな」(銀の鈴社、2021年)、「へびの王妃エグレ」(ふらんす堂、2022年)、「シベリアの俳句」(花伝社、2022年)

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リトアニアの詩人アウシュラ・カジリューナイテ(AUŠRA KAZILIŪNAITĖ)の詩を10篇翻訳しました。Lyrikline.orgという詩のオンラインプラットフォーム上で読めます。 https://www.lyrikline.org/en/authors/ausra-kaziliunait

    • 〔訳詩〕オキナヨモギに咲く Diemedžiu žydėsiu

      「オキナヨモギに咲く」サロメーヤ・ネリス もう一度、春よ、 君は勇敢に馬に乗って来る–– そして愛する春よ、 君は私をもう見つけられない–– –– 黒馬をつかまえるとそこで 地面を君は見るだろう: そして大地は花のまだらになりゆく…… 私はオキナヨモギに咲くだろう–– –– 1936年3月3日 出典 Salomėja Nėris, Diemedžiu žydėsiu, Sakalas, 1938 https://www.epaveldas.lt/preview?id=

      • リトアニア出版協会おすすめの児童書と児童文学作家6選(+おまけ)

        2022年10月26日(水)に東京の駐日リトアニア大使館で行わついてれた「Creative リトアニア: Milestones」にて、リトアニア出版協会のルタ・エリヨシャイテエテ・カイカレ氏が「リトアニアのイメージ力」という題でリトアニアの児童文学を紹介するプレゼンを行いました。この記事では、プレゼンにおいて紹介された本をそれぞれご紹介します。 (この記事は元々次の記事に掲載していましたが、分かりにくいので分けました。) „Akmenėlis(小石)“プレゼンテーションは

        • 『リトアニア文化ガイド(Lithuanian Culture Guide)』

          リトアニアに興味を持ち始めた方の中には、今のリトアニアの文化についてのざっとした動向を知りたくなった方がいらっしゃると思います。 そんな方には、リトアニア文化協会(Lithuanian Cultural Institute)による『リトアニア文化ガイド(Lithuanian Culture Guide)』が便利です。紙の冊子として出版されていたものですが、リトアニア語と英語の二か国語でオンラインで全文公開されています。 リトアニアの文化の各分野の沿革、関連団体、主要なイベン

        リトアニアの詩人アウシュラ・カジリューナイテ(AUŠRA KAZILIŪNAITĖ)の詩を10篇翻訳しました。Lyrikline.orgという詩のオンラインプラットフォーム上で読めます。 https://www.lyrikline.org/en/authors/ausra-kaziliunait

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        • 翻訳じゃない方の詩
          2本

        記事

          リトアニア最大の本の祭典・ヴィリニュスブックフェア

          リトアニア語翻訳者の木村です。 今回は、リトアニアの本に興味がある方に向けて、リトアニア最大の本の祭典・ヴィリニュスブックフェアについてご紹介します。 ヴィリニュスブックフェアとは毎年2月にリトアニアの首都ヴィリニュスでVilniaus knygų mugė(ヴィリニュスブックフェア)が開催されます。LITEXPOという巨大な屋内イベント会場(東京でいえばビックサイトのような場所)で開催され、出版社や文化団体のブースが立ち並び、大小様々なステージで朝から晩までトークショーが

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          Creative リトアニア: Milestones(大使館イベント)レポート

          2022年10月26日(水)に東京の駐日リトアニア大使館で行われた「Creative リトアニア: Milestones」に参加しました。リトアニアから来日した文化関係の代表団の方々による、リトアニアの文化についての発表を聞いてきました。 イベントウェブサイト 大使館ウェブサイト アジェンダ(表記は当日配布資料に基づく) 18:00 文化担当官ガビヤ・チェプリョニーテ(Gabija Čepulionytė)氏 挨拶 セルゲイ・グリゴリエフ(Sergej Grigorje

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          翻訳じゃない方の詩/投稿の6篇

          これまでに書いた詩の一部は詩誌に投稿して、そのうちのいくつかは掲載していただきました。掲載から1年以上経ったもの詩を6篇ご紹介します。 三〇一教室 螺旋階段を一段飛ばしで駆け上がり 七分遅れで三〇一教室に入った 大きな階段教室の後ろの二列だけ埋まっていて 先生はこちらも見ずに口ずさんでいた 住人のいない金魚鉢に水をなみなみ注いだら その中にコインを一つずつ入れなさい 水があふれてもそのまま続けて それこそが学ぶってことそのもの 隣の席の中山さんはあのグリッターグルーを持

          翻訳じゃない方の詩/投稿の6篇

          翻訳じゃない方の詩/受賞作

          サロメーヤ・ネリスの詩集『あさはやくに』(ふらんす堂、2020年)をリトアニア語から日本語に翻訳していた頃、私は日本語で自身の詩を書き始めました。そのうちのいくつかを文芸祭等に応募したところ、ありがたいことに賞をいただきました。 ここでは、これまでに受賞した5篇の詩(すべて全文)をご紹介します。 テーブルのカエル 喫茶店でコーヒーを飲んでいると 食器が下げられたばかりの隣の席では カエルがその表面をすべっていた 小さな体が通り過ぎていったあとは テーブルがきれいになってい

          翻訳じゃない方の詩/受賞作

          わたしのおくりもの~こどもたちのための16のおはなし〔翻訳・リトアニアの童話〕

          「わたしのおくりもの~こどもたちのための16のおはなし」原題:16 pasakėlių mažiausiems skaitytojams ir klausytojams)は、1913年に出版されました。その題のとおり、16話の掌編が収録されています。 プラーナス・マショータス(Pranas Mašiotas)は、リトアニアの児童文学・童話の作者の祖と言われています。1863年に生まれ、1940年に死亡しました。500冊以上の著作を残しており、教科書の著者でもありました。翻訳

          わたしのおくりもの~こどもたちのための16のおはなし〔翻訳・リトアニアの童話〕

          〔訳詩〕リネンの花 LINO ŽIEDAS

          「リネンの花」 ヴィンツァス・ミコライティス=プーティナス 愛しいリネンの花よ、お前がいないのなら、 この最果てに青い平原が無いのなら、 みじめな真昼にどこへ行けばいいのだ。 哀しく黒い心の中は一体どうなるのだ? 狭く茂ったライ麦畑の小径では毎日 香しい花を危なっかしい足取りで踏みつけるが 手を伸ばして平原に青く咲くことだけが 渇望し疲労した胸を癒すことなのだ 赤子の夢のようなこの母なる大地から 碧眼の芽が天空へと ほら伸びていく しかし全ての人生の愛も苦しみも 発火し

          〔訳詩〕リネンの花 LINO ŽIEDAS