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〔翻訳〕おとぎ話 作・M. K.チュルリョーニス

大都市の中心をさまようのに疲れた私は、配達人専用の長椅子に腰を下ろした。

ひどい炎天下だった。 灰黄色の家々は歯軋りしていて、色とりどりの看板が燦然と輝き、金色の太陽の塔がどこからともなくそびえ立ち、炎暑にうなされる人々は、まるで眠っているかのようにのろのろと歩いていた。

杖をつきながらも懸命に引きずる老人が、私の目の前で首を振りながら立ち止まり、じっと私に見入った。その目は悲しげで、うつろで、考えがまるでないように見えた。彼の胸には、大小さまざまな十字架が紐で結ばれていた。少し錆びた大きな鉄の十字架、小さな十字架、平らな銅の十字架、小さな銀の十字架、要するに一揃いである。

「物乞いだ」と私は心の中で判断し、懐から小銭を取り出そうとしたとき、老人は奇妙な目を細め、謎めいたささやき声で尋ねた、

「友よ、緑色とはどのような色か説明してくれないか?」

「緑色?うーん...緑色は色だよ、草みたいな...木みたいなね、木も緑色だ、葉っぱとか」私はそう答えて辺りを見回したが、どこにも木はなく、草の葉もなかった。

老人は笑って、私のボタンをつかんだ。

「友よ、よかったら一緒に行こう。私はあの地に向かって急いでいるんだ。道すがら、とても面白いことを教えてあげよう」

「かつて、遠い昔、我が息子よ、私がおまえのように若かった頃、とても暑かった。大都会の中心を歩き回るのに疲れた私は、配達人専用の長椅子に腰を下ろした。

ひどい炎天下だった。灰黄色の家々は歯軋りしていて、色とりどりの看板が燦然と輝き、金色の太陽の塔がどこからともなくそびえ立ち、炎暑にうなされる人々は、まるで眠っているかのようにのろのろと歩いていた。

私は彼らを長いこと眺めていたが、草原や木々、緑が恋しくなった。あの5月の草原の緑をさ。突然、私は立ち上がり、その街でそれを無駄に探しながら、生涯歩き続けた。

延々と歩き続け、出会った人々に尋ねたが、答えてくれるどころか、十字架を渡された。高い塔にも登ったが、残念ながら、どの地平線にも街、街、街で、緑はどこにもなかった。私はそこにあるような予感がしているけれど、もう歳だし、行くことはないだろう。ああ、どこか近くにあれば、せめて休めるのに......匂い、ハエの鳴き声、そして私の周りの緑、草、木々」

私は老人を見た。彼は子供のように微笑み、そして泣いていた。

私たちはしばらく無言で歩いていたが、ついに老人が言った。

「いや、もう十分だ。もうだめだ、ここに残る。お前は行け、休まず行け。あらかじめ言っておくが、この暑さは終わらない、この道に夜はない、永遠の昼があるだけだ。

道すがら、草原や木々について人々に語るがいい。だが彼らの話を聞いたり、十字架の紐を取ってはいけない。それじゃあ、行ってらっしゃい、私はここに残るから」

しかし、私が10歩も歩かないうちに、老人は怒鳴り始めた:

「待ってくれ、息子よ、言い忘れたが、高い塔から道を見なさい。遥か彼方で、老いがお前を追い越しても、そこにはまた配達人のためのベンチがあり、そこに若者が絶えることはない。さあ、行きなさい」

老人はそう言った。私は歩き続け、そして高い塔から下を見下ろした。

(1908年、M. K.チュルリョーニス作)

Miestas. Iš ciklo „Miestas“,  Mikalojus Konstantinas Čiurlionis, 1922

出典:
Žodžio kūryba, Mikalojus Konstantinas Čiurlionis, Vytautas Landsbergis, Lietuvos rašytojų sąjungos leidykla, 1997


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