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7月の読了
美しき愚かものたちのタブロー
東京・上野にある国立西洋美術館。この美術館が建てられるきっかけとなった松方幸次郎という人物、そして彼がフランスで収集した絵画 「松方コレクション」について激動の時代とともに描かれる話。
同じこと書いたことある気がするけども、原田マハさんの凄いところは圧倒的臨場感。史実をきっとこれでもかというほど調べ上げ、登場人物もまるで伝記のごと描かれる。
松方幸次郎は実在の人物だけど、物語のメインキャラクターである田代雄一は架空の人物だそう(矢代幸雄というモデルがいる)。
その人の名は、松方幸次郎。
芸術の泉の縁に佇んで、わしゃ絵なんぞわからん、と文句を言いながら、小石を投げ入れていた。澄み切った水面に広がる波紋をじっと眺めるうちに、今度は手をひたし、清らかな水をすくいあげて喉を潤した。ついにはざぶりと飛び込んだ。美しい泉は、最後には彼のものになった。
小説の中で、豪快で羽振りが良く終始人望の厚みを感じさせるように描かれる松方氏。フランク・ブラングィンが描いた松方幸次郎の肖像画は想像する人物像とピッタリすぎて笑ってしまう。
作中にブラングィンがこれを描くシーンもあって、個人的にとても好きなシーン。
「こりゃあ、すごい早業だな。松方さん、画家の筆によって絵の中に残されましたね。たった一時間で、永遠を手に入れたようなものだ」
国立西洋美術館の常設展の豪華さに驚く人は多いと思う。私も7年前に初めて訪れた時は衝撃だった。「えっこれ常設展なの?全部日本が持ってるってこと?西洋美術の企画展で世界から借りてるとかじゃなくて?」
この状況がどれだけありがたいことなのか。これを実現するために当時どれだけの人々が心を砕き、頭を下げ、船でパリに行く時代に国内外を動き回ったのか。
読んだ後はきっと、国立西洋美術館に足を運びたくなるはず。
個人的には2019年にモネの「睡蓮、柳の反映」修復のクラウドファンディングに参加したこともあって、とても感慨深かったな。
静かな人の戦略書
内向型だけど職場の某チームでリーダーをしている。
これがもうつらくてつらくて(笑)、いわゆるリーダーシップ系やチームワーク論の本を何冊も読んだけど、解決の糸口は出てこず。任期の2年間はとにかく迷惑をかけないようにだけやろう、そしてもう二度とリーダーの打診は受けるものかと思っていた最近。
私の欲しかった生き方のヒントがこの一冊に散りばめられていて、読みながら泣けてきて本を抱きしめたくなった。
著者自身も内向型。”社会は外向型向けに作られているから私たちには生きづらいことも多いけど、私たちにしかない強みはたくさんある”ということを自身の体験をたくさんシェアしながら語りかけてくれる。
本の中にある「内向型かどうかのテスト」で満点をとってしまった私。
例えば「友人の線引きを高く設定してしまう」という章は本当に首が取れるほど同意。なんでみんなそんな友達多いの?なぜそんな簡単に自分のこと人に話せるの?っていっつも思ってる(笑)
同僚と話をする際、無駄話のひとつもせず、要点しか話さないせいで、そっけない人と思われているかもしれない。けれども、それにはあなたなりの理由がある。無駄話や関係のないおしゃべりで時間を無駄にすると消耗してしまうから、要点だけ話したいのだ。仕事の話に入る前にくたびれてしまうのは避けたい。
私自身、昼休みの必需品はAirPods Pro。席についた途端に装着し周りの音を遮断して過ごす。何故かというと、我が職場には昼休みに「ちょっと良い?」と平気で仕事の話を10分15分話してくる人が何人もいるからだ。イヤホン挿して「周囲の音は聞こえていません、今は話しかけても聞こえません!」を頑張ってアピールしている。これが私なりの防衛術。
こういった内向型の抱える生きづらさ、それを強みに変える方法を同じ目線で寄り添った文章で書いてくれている。
この本の良いところは「私たち内向型だもんね、これ苦手だからしょうがないしゆるゆるやり過ごそ〜」じゃなくて、その性格を多角的に捉えて強みに変え、立ち向かい方に重きを置くところ。だからきっと「戦略書」。
内向型さんやHSPさんはもちろん、内向型っぽい同僚との接し方に悩んでる人なども、彼らの考えていることや得意不得意に気づくヒントが得られたりするかも。
内向型の人は、アイデアや野心を持っていないわけではなく、夢を追うのにいちいち騒がないだけだ。
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