#176 原因に対する根本的な解決策を考えよう
「お金」ではなく「時間」が欲しい
公立学校教員に対して、
残業代の代わりに支給している
月額給与の4%相当の「教職調整額」について、
10%以上に引き上げる案で調整している
とのニュースがありました。
はっきりと申し上げて、
ほとんど意味をなさない取組です。
なぜなら、僕たち現場の教員が求めているのは、
「お金」ではなく、
「時間」だからです。
僕の身近にも、
仕事を辞めたり、
療養休暇に入ってしまった教員が複数名居ますが、
全員に共通しているのは、
「業務量が多すぎて、時間が足りない」
という原因です。
取り組むべきは、
教員の労働時間を少なくする制度改革であり、
労働時間に見合った給料を支給するという
制度改革ではないのです。
引き上げ額の根拠は何か?
もっと言えば、
「見合った額」になっていないことも問題です笑
教員の残業時間については、
2022年度に小学校で64.5%、
中学校で77.1%の教諭が、
上限の月45時間を超えている状況です。
そもそもこの措置の根拠となる給特法では、
教員の残業が月に8時間程度だった時代に、
給料の4%を特別手当として支給するように規定されています。
現状の残業時間は、
ざっくりと7割の教員が45時間を超えているわけですから、
単純計算でも5倍の20%以上の増額でないと、
計算が合わないわけです。
いったい10%という給料引き上げのパーセンテージは、
どんな問題意識を原因として定められたものなのか、
まったくもって理解不能です。
教員志望者減少の理由も「時間」である
小学校の教員採用試験は、
年々最低倍率を更新しており、
2020年度実施(2021年採用)の採用倍率は、
全国平均で2.6倍。
2011年の4.5倍と比べて、
半分近くに落ち込んでいます。
「日本若者協議会」が2022年に行った、
学生(高校生・大学生・大学院生)向けの調査によると、
教員志望の学生が減っている理由として、
複数回答でもっとも多かったのは、
1位が「長時間労働など過酷な労働環境」で94%、
2位が「部活顧問など本業以外の業務が多い」で77%、
3位が「待遇(給料)が良くない」で67%と続いています。
ここでもはっきりとデータで出ているように、
志望者減少の理由も、
「お金」ではなく「時間」なのです。
現場側の教員も「時間」を欲していて、
志願者も「時間」を欲しているにもかかわらず、
どうして「お金」を中途半端に増やすのでしょうか?
原因に対する根本的な解決を!
理由は簡単で、
教員の時間を確保する=業務量を削減する制度改革より、
単純に給料を増やす取組の方が、
実施しやすいからでしょう。
言い方を悪くすれば、
多少でも給与面を改善しておけば、
教員の残業時間が多いことに対して、
国民のに一定レベルでの言い訳ができるわけですから。
中途半端に対症療法的で、
まったく根本的な解決になっていません。
教員の本務は、
生徒への学習指導と生活指導です。
にもかかわらず、
学校に求められる
雑多な仕事が増えすぎているのです。
学校が担っている業務を、
社会全体に適切に振り分けなければ、
日本の教育制度は崩壊します。
部活動は、地域等の外部人材を活用する。
電話番を含めた事務作業は、事務員を増員する。
生徒や保護者からの相談対応は、
カウンセラーを窓口とする。
これらは、教育環境の根本的な見直しとなり、
構造改革には大きな労力を伴うものですが、
業務量の削減=時間の確保
という根本的な原因に対しての解決策を考えなければ、
日本の未来は明るくならないのです。