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ドイツの出産と子育て

もう21年前の話になりますが、私はドイツで出産をしました。
ドイツでは、妊娠中にはホームドクターに通い、出産はホームドクターを通して入院設備のある病院で行われます。

ドイツの保険は、公的保険とプライベート保険の2種類があり、通常、通院に関してはほとんど現金での支払いは発生しなかったと記憶しています。
(2007年当時は初診時に10ユーロ、定められた四半期毎に10ユーロかかりました。)

出産入院で一番に困ったことは言葉でした。
ドクターは英語が話せるのですが、看護師さんはインドネシア人で、母国語とドイツ語しか話せなかったのです。

出産当時、私はドイツ語が全くわかりませんでした。
そのため、陣痛で七転八倒している時も、ドイツ語の辞書だけはしっかりと握り締めていたものです。

出産では通常、4-5日で退院のようでした。
しかし私の場合、娘が黄疸と診断され10日ほどの入院となりました。

出産費用はほぼすべて公的疾病保険でカバーされますが、規定以上の入院となったことで、一日につき10ユーロ前後の費用が発生しました。

出産の次は育児です。
わからないドイツ語、文化の違い、初めての育児、睡眠不足等・・・

ストレスが飽和状態となった私は、帯状疱疹になってしまいました。
余談ですが、この年、雅子さまも帯状疱疹に・・・

帯状疱疹は、体のあちこちに水ぶくれが発生し激痛が伴いました。
私は痛みに耐えかね、義母のホームドクターを受診しました。

高齢の男性ドクターは、私の発疹を見るなり、看護師さんを呼び集めこう言いました。

「みんな見てごらん!これが大人の帯状疱疹だよ!」

大人の帯状疱疹はよほど珍しかったのでしょう。
天然記念物のように体中を眺められ、「特に薬はないけど、かゆみ止めを出しておきますね」とだけ言われたのでした。

ドイツでは、幼稚園前の子どもたちと保護者のための遊びのサークルがあります。

大抵は週一回、親子で近くの公民館などに集まり、お絵かきやお遊戯、食事、ゲームなどをして過ごします。

費用は場所代として一回につき2ユーロほどだったかと思います。
子どもはすぐに場に馴染み、楽しく遊んでいましたが、私は母親たちの雑談に入ることができず、言葉の壁の高さを痛いほど感じたものでした。

そんなことから、ドイツ語を学ぶために市民大学へ通うことになりました。

ドイツでも仕事を持つ母親は少なくありません。
しかし、子育てと仕事の両立は、日本もドイツも、家族の協力、社会の協力なしでは成立しません。

ドイツでは、産休(産休を取得した場合、産休前の手取り額の100%を保障!)、育休(最長三年まで。産休前手取り額の67%が保障!)はもちろんのこと、2007年1月1日以降に出産した場合、「Eltengeld(親手当)」が、産後1年間に渡り支給されるようになりました。(月1800ユーロの上限あり、失業者、無収入者においては一律月300ユーロ)

また、育休をとらずに「Tagesmutter(一日お母さん)」と呼ばれる人に子どもを預け、仕事を続ける母親も少なくありませんでした。

この「Tagesmutter(一日お母さん)」は、子ども好きな主婦などがアルバイト感覚で行っていましたが、昨今では、制度が確立され、研修を受け、資格を持った人でないと公にできないようになったので、これまでより安心して預けられるようになったのではないでしょうか。

ちなみに、年間一人4000ユーロを上限に、託児費用の税控除制度があるのも仕事を持つ親にはありがたいシステムです。

3歳になると、自治体から入園案内が届き、通える範囲の中から子どもにあった幼稚園を選び、申し込みをします。

費用は、公立においては、親の年収に合わせた月謝となるので、収入の少ない家庭でも無理なく3歳から預けることができます。
(定員により入園待ちになる場合もあります)

我が家は、自宅から徒歩5分の幼稚園を選びましたが、運良く3歳と同時に入園することができました。

幼稚園には朝食(パン)を持参します。
担任は一人ですが、研修中の学生がサポートしていました。
(鼻ピアスと舌ピアスをしていたのは驚きでしたが)

娘のクラスには、3歳から6歳まで、12~13 人の子どもがいたように記憶しています。

朝は8時くらいから始まり、おもちゃで遊んだり、外で遊んだりしながら10時ごろになると朝食をとり、12時には退園となります。

ドイツの幼稚園は縦割りです。
大きい子は小さい子の面倒を見て、小さい子は大きい子から様々なこと学びます。

その効果なのか、公園などでは、大きい子が見知らぬ小さい子を遊んであげたりする姿を見かけ、とても微笑ましく思ったものでした。

ちなみに、ドイツにはヴァルドルフという森の幼稚園があります。
こちらは、寒い日も暑い日も、一日中自然の中で過ごす幼稚園で、創造力が養えるということで人気があります。

幼稚園では誕生会をします。
日本と大きく異なるのは、誕生日の本人がゲストをもてなすことです。

そのため、当日は、クラス全員分の朝食かケーキを用意しなければなりません。

もちろん、自宅でも親戚や友人を招いて誕生会を開くので、裏方となる保護者は大変です。

それでも、子どもたちの笑顔を見ればその大変さも吹き飛んでしまいますが。

2005年、わが家は日本人が皆無の田舎町から、日本企業がひしめく都会へと引っ越しました。

そこには日本人幼稚園がありましたので、そちらに通わせることにしました。

そこで日本語に触れたのはよかったのですが、今度はドイツ語が怪しくなってしまいました。

ドイツは移民が多く住む国です。
ドイツ語ができないまま小学校へ入学をし、授業についていけない子どもが多くなり、社会問題となっていました。

そこで政府は、そうした子どもたちのため、就学前にドイツ語のレッスンをする機会を設けてくれたのです。
(これは強制で、費用はかかりません。)

我が家も就学前の4ヶ月間、毎朝2時間ほどのレッスンに通いました。
レッスン場までの送迎は大変でしたが、お陰様で娘は少しづつドイツ語を取り戻し、入学する頃には支障がないまでになりました。

ドイツの入学式は8月です。
新入生はお菓子やおもちゃの入った円錐形の箱を片手に、ランドセルを背負い、入学です。

娘の学校は、1-2年生合同のクラスで、成績がよければ飛び級があることには驚きました。

それから、1ヶ月に数回、「両親の夜」という学級懇談会がありました。

ちなみに授業料はなく、学級費が月10ユーロ程度。
高校までは授業料がかからず、大学においても1ゼメスター毎に数百ユーロしかかりません。

そのうえ、「Kindergeld(児童手当)」(当時月154ユーロ、現在は184ユーロ)は、学業終了まで支給されます。(最長25歳まで!)

7年間のドイツ生活を振り返ってみると、言葉をはじめ、文化の違いなど、とまどうことばかりで、気苦労が耐えませんでしたが、公園の多さや、設備、手厚い福利制度など、子育てに優しい社会であることを実感したものです。

日本もぜひ子育てに優しい仕組み、誰もが分け隔てなく学べる環境作りを構築してほしいと願うばかりです。


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