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ジャン・チャクムル「芸術からの投影」インタビュー (2) 3枚目のアルバムは20世紀音楽

- 3枚目のアルバムのレコーディングですが、新しい日程は決まりましたか?シューベルトのどの作品が入るのでしょう?

パンデミックのせいでレコーディングが3度延期され、2度はスタジオの変更を余儀なくされましたが、ようやく5月に実現できそうな見通しです。今回はプログラムにシューベルトはありません。その計画は11月に中止になったので、延期することに決めました。なぜなら元々スタンバイしている別のプログラムがあったからです。

そのプログラムは次の通りです。エネスクのピアノ・ソナタ第3番、バルトークのピアノ・ソナタ、アフメット・アドナン・サイグンのピアノ・ソナタとディミトリ・ミトロプーロスのパッサカリア、間奏曲とフーガです。選んだ作曲家からもお分かりいただけるように、これは共通するテーマのあるプログラムです。第2次大戦以前の音楽に少しばかり関心を向けたかったのです。もちろんサイグンとミトロプーロスのキャリアは1945年以降も含むものですが、彼らが受けた教育とスタイルは、戦後の潮流からはそれほど影響を受けなかったのです。それどころか、この4人の作曲家はともに母国で音楽のエコール(学校)を創設しようとまでしていました。エネスク、バルトーク、サイグンは、民俗音楽を美化することなく自分たちの音楽の中心に据えたのに対し、ミトロプーロスはこの分野におけるポスト・ロマン的な実験(特に「ギリシャ・ソナタ」)後に、自分自身をセリー音楽(またはセリエル音楽)に近いものと見なしました。この意味で、当時のアテネの音楽的生活に激震を、また後年に影響をもたらしたこの作品が、実際には伝統的な要素を一切備えていないことは大変に興味深いです。他の3人の作曲家について言えば、手持ちの素材の用い方はかなり異なります。ここでは、当時の重要な作曲家たちであるストラヴィンスキーやドビュッシー、ラヴェルの影響を見出すことも可能です。その一方では、この3人ともに、極めて独創的でありながら自己閉鎖的な和声語法が目を引きます。このプログラムはBISレコードと長いあいだ計画していたものですが、これまで私が練習してきた最も難度の高い作品のいくつかが入っています。作品の技術面での難しさの中で溺れることなく、明瞭さを保ちながら演奏することができるかどうかが、ここでの最も重要な試金石になります。というのも、これらの曲は、伝統的な和声構造を柔軟に解釈したか拒絶したものであるため、もし曲自身の文脈が試聴時に自らを表明しなかったならば、全く理解不能なものになりえるからです。これもまた当然ながら、解釈する音楽家の務めになります。

- パンデミックのせいでキャンセルされたイベントの新しい日程は決まり始めましたか?全般的にいつになりそうですか?

多くのオーガナイザーが、コンサートをいつ実施できるか知ることができないでいます。したがって日程がまだ明らかになっていないコンサートがたくさんあります。一部のオーガナイザーはこの後すぐの春~夏シーズンに向けて計画を立てようとしていますが、大部分は待機状態です。一部だけでも実現するかどうかさえ不透明なのです・・・。

- もはや毎年、日本ツアーは欠かせぬものになりましたね!2021年の予定は組めましたか?

ええ、8月以降に再度、日本ツアーの計画があります*1 。とはいえ、オーガナイズ側はいまだ確信を持てないでいます。おそらく実現するだろうと言いますが、それももちろん国境が開くかどうか次第です。

聞き手:シェフィッキ・カフラマンカプタン(Şefik KAHRAMANKAPTAN)
2021年2月6日、アンカラ


*1- 投稿日の時点で、2021年8月28日および29日に京都市交響楽団とのコンサートが予定されている。

https://www.kyoto-symphony.jp/news/index.php?start=20

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